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監獄のクラブチーム  作者: 八尺瓊
1年目
62/77

第61話 サバゲー大会 エキシビションマッチ その2

 今大会サバゲールール

 1:弾が体(頭部も含む)もしくは銃に当たれば゛ヒット゛と大声を出しながら両手を上にあげフィールドから直ちにアウト(出ていく)すること。

 2:ヒットしている状態で、攻撃することは禁止(ゾンビ行為)

 3:他人の銃を掴んだり、故意に銃同士をぶつけて、攻撃する事は禁止(迷惑行為)

 4:外壁をよじ登り、攻撃する事は禁止(危険行為)

 5:他人の銃を奪ったり、借りるなどして攻撃は禁止。弾が無くなれば゛ヒット゛と同じと見なす。

 6:ルール5の補足として、自身が持つマガジン(弾薬)が空になり、つきれば゛ヒット゛と見なす。マガジンは持てるだけ持っていける。(制限なし)

 7:銃はサプレッサーなどを取り付けたときの状態で6mm弾の弾速パワーが0.97ジュールを越えてはならない。

 8:銃自体での直接攻撃は禁止。弾丸のみ゛ヒット゛を有効と認める。

 9:必ずフィールドに入る際、顔全体を覆う防護マスクを着用する事。目の部分は、メッシュタイプではなく、レンズタイプで目の保護ができるものとする

 10:長物の銃はセミオートにして、フルオートは使用しない。

 11:ゲーム制限時間は10分とし、相手チーム全滅もしくはミッション達成がなされていない場合、チーム内残存メンバーの人数で勝敗を決める。

 12:後は自由


 大まかな基本ルールは上記の内容になっている。

 選手逹のほとんどはクラブから貸出の顔全体を覆う緑色のレンタルマスクでルール9はあまり関係無いのだが、プライベートマスクを持っていていた選手逹は職員から確認がされている。

 使用する弾は、前回三軍のサバゲーで使用したペイント弾で通常のバイオBB弾より軽い。

 そのため銃に弾込めして弾速測定器で測られ細かなチェックをパスして全選手逹は各々の銃を手にしてフィールドインしている。

 銃はすべて施設側の貸出品ではあるが、知識のある人間なら簡単なカスタマイズで弾速パワーを変更することができる。スナイパーライフルなどインナーバレル(弾の通り道)の長いものはポップ(インナーバレル内で弾を縦回転させながら加速させる事)がかかり弾速が規定を越える事がある。

 選手に銃を貸出しても、そこで終わりではなくしっかりと安全管理は怠らない。

 遊びとはいえ、悪ふざけをすると、怪我につながるアウトドアゲームである為、注意を払って過ぎる事はない。

 危ないなら初めからやらない方がいいんじゃないかという声が出そうだが、その先にある賞金は多少の怪我なら問題ないと言える物なので誰一人文句は出ていない。

 さらに大会は個人的に選手がやっているものではなく、クラブチームのイベントとして開催されているということもあり、不正や、怪我などに対応できる管理班もいる。準備万端だった。


 まず16対17でサッカーの練習を行う時と同じチーム構成で識別できるようにAチームには赤のメッシュベスト、Bチームには黄色のメッシュベストが配布されている。

 エキジビションマッチは3試合行われる。1試合ごとに10分休憩および銃の変更が可能になっている。

 選手たちは長銃を両手で持ち銃口を地面に向けて緊張から会話らしい会話もなく、もそもそと移動していた。そこへ天井に設置されたスピーカーから選手のプロフィールが施設内にコールされる。

 選手逹はなんだこの羞恥プレイはと恥ずかしい思いをしながらスタート地点まで移動いていく。



 ”俺達野郎Aチーム” 赤メッシュベスト

 FW ベニート・ミロ 身長181cm 体重68kg

 FW 花形はながた 智明ともあき 身長173cm 体重62kg

 FW 倉見市くらみし 俊治しゅんじ 身長172cm 体重60kg

 MF シジネイ・ルシオ 身長175cm 体重58kg

 MF 川上かわかみ 雅士まさし 身長172cm 体重58kg

 MF カミロ・アビラ 身長168cm 体重48kg

 MF 水八みずはち 陽一よういち 身長174cm 体重59kg

 MF セルディア・バジョ 身長176cm 体重62kg

 MF マルニャ・アバスカル 身長176cm 体重63kg

 MF はやし 茉耶まつや身長173cm 体重63kg

 MF 倉石くらいし のぼる 身長173cm 体重60kg

 DF 下塚しもつか 騰児とうじ 身長170cm 体重58kg

 DF 片磐かたいわ 重道しげみち 身長170cm 体重53kg

 DF 下市しもいち 庄司しょうじ身長171cm 体重56kg

 GK 重林しげばやし 大成たいせい身長177cm 体重68kg

 GK 御津島みつじま 修三しゅうぞう身長180cm 体重65kg

 

 

 ”カレーが大好きBチーム” 黄メッシュベスト

 FW 中町なかまち 葉柄ようへい 身長171cm 体重55kg

 FW アルバート・ロペス 身長180cm 体重65kg

 FW ベレンゲル・ニッセン 身長179cm 体重65kg

 MF 大河たいが 智治ともはる 身長175cm 体重59kg

 MF 彼我ひが 大輔だいすけ 身長173cm 体重59kg

 MF 箕河みがわ 春樹はるき 身長175cm 体重62kg

 MF セサル・ノゲイラ 身長174cm 体重63kg

 MF アーロン・オルネラス 身長176cm 体重60kg

 MF 青木あおき 撤兵てっぺい 身長173cm 体重63kg

 MF 佐藤さとう まさ身長170cm 体重55kg

 DF アルビアル・ベルグラーノ 身長174cm 体重60kg

 DF 皆口みなぐち 雄介ゆうすけ 身長173cm 体重63kg

 DF ディオニシオ・モタ 身長185cm 体重75kg

 DF 池華いけばな 益雄ますお 身長176cm 体重63kg

 DF 檀乃だんの 琴伴こととも 身長170cm 体重53kg

 DF 合田ごうだ 憲次けんじ 身長175cm 体重59kg

 GK 荒川あわかわ 修司しゅうじ身長185cm 体重73kg



 各チームのメンバーがスタート位置である8畳ほどの個室に着く。サバゲーを盛り上げる為の演出なのだろう部屋は明かりが薄暗く、10代の男子達が15人以上入るには少し狭めだった。密着とまではいかないが、互いの息がかかるぐらいには近い。しかし、全員防護マスクで顔が覆われているため、息がかかる様な心配はない。

 Bチームのスタート地点では、特に個別にチーム分けをしているわけではないので適当にバラけてスタートを待っていた。

 そんな中、彼我の隣にいたデザートカラーの迷彩を着たアルビアルが暗がりの照明でも解るほどプルプルと体が震えている。


 「アル、大丈夫か?」


 彼我が訪ねる。いつの間にか彼我とアルビアルは親しくあだ名で呼び合うような仲になっていたがベニートとアビラを混ぜて一緒に練習するのは緊張するらしく、今はベニート逹と練習するのは保留で、時間を見つけて彼我はアルビアルとの練習もしている。

 前回三軍時代に一緒にサバゲーをやっていたのでアルビアルが震えている理由は何となく分かっていた。

 彼我の解釈ではサバゲーをやる上で独特の雰囲気が緊張感を高めてしまうみたいだと思っていた。

 あのときの様にアルビアルがストレスを解放するために奇声を発して、その事で負けたりしたらチーム内がギクシャクしてしまうのではと心配だった。この部屋のマップは配布されAチームのスタート地点はどうがんばっても遭遇するまでに少しは時間がかかる。スタート時点では問題ないだろうが、全員バラけて移動したとしてアルビアルが奇声を発し続けれは彼の近くにいるメンバーが敵にやられてしまう可能性が高くなる。


 「はぁ~。お前は俺と一緒にいろ。みんなすまないがアルは俺が預かるわ」

 「そうだな。なんか任せたほうが良さげだな。頼むわ。彼我」


 ため息を吐いてはいるが、そこまで面倒だと感じでいる様子がない彼我の提案にキャプテンの荒川がOKを出した事で、チーム全体が納得した雰囲気になる。

 その中で焦った声で後ろの方から”ちょっと待って~”と会話に入ってくる中町にみんな耳を傾ける。


 「ちょ、ちょっと待って。僕も彼我逹と一緒じゃだめかな?」

 「ダメじゃないけど、たぶん危険度はあがるがいいのか中町?」


 中町はアルビアルが震えている理由は知らない。スタートまでもうあんまり時間はない。その為、説明を省略し彼我が忠告をする。否定ではなく確認してきたと言うことは中町の中で彼我の返事はOKだと解釈したので問いにうなずく。

 しかしそれとは別に気になる案件が中町の中で上がってくる。


 (なんでアルビアルは、親しく名前で呼び合うのに僕は゛中町゛なんだよ)


 そんな気分からかちょっとからかうつもりで可愛くおねだりしてみる。


 「大丈夫だよ。僕もちゃんとやれるし、彼我は僕の事守ってくれるでしょ?」


 中町のおねだりに彼我は目を閉じ鼻から息を大きく吸い込む。息を吸い込む数秒もない間に高速で脳が動き多くの事を考える。

 中町の服装は、近代兵士の着るような迷彩服ではなく、特殊急襲部隊゛SATサット゛が着る黒のBDUバトルドレスユニフォームで背中に゛SAT”と書かれている。それは良いのだが防護マスクも゛SAT゛に合わせて、機動隊が使用する顔全体が強化プラスチックで覆われているタイプで、表情が分かってしまうのだ。身長が少し中町の方が小さいせいか、わざとやっているのか、下から覗きこむような感じで見てくる。

 はっきり言って中町でなければその仕草は似合わず気持ち悪いだろう。こんなくりくりとした眼差しで見つめてくる男で不快感がないは珍しいだろう。

 男が男に゛守ってくれる?゛と尋ねられて普通は、自分で何とかしろと言いたくなるが、中町にはなぜだか保護欲を掻き立てられる。

 久々にお釈迦さまが手にした”性別の壁”と書かれた横に長い壁の幻覚を見てしまい、その壁を乗り越えてしまいそうな衝動にかられるが、お経のように心の中で唱える言葉は煩悩を振り払うものではなく、むしろ男の欲望の塊である゛巨乳大好き!゛と続ける。

 そこまでの考えを一秒も立たない間に彼我は思考し、中町の問いに素っ気なく゛仕方ねーな゛と答える。

 小さく中町が゛やった゛と両手を小さく握り独り言を言っていたが、知らないふりでやり過ごす。顔を背けながら彼我は心で呟く。


 (これ以上可愛い仕草をするんじゃありません!俺の煩悩が君の可愛さに負けたらどうするんですか!?)


 話が決まった所で、その直後に監督の武田からスタート一秒前とコールがされ、すぐにゴーと合図がされる。

 Bチームは、3方向に分かれて移動を開始する。彼我逹はその場に留まり、アルビアルが落ち着くのを待つ。

 はぁはぁ、と呼吸が激しくなっていくアルビアルが今にも奇声を発してしまいそうになる。


 (ヤバイな。アルの奴かなり、精神的に゛キテる゛な)


 毎回奇声を発して、ゲームが出来ないのはかわいそうだと落ち着く為に一旦スタート地点で待機してみたが、アルビアルが落ち着く様子がない。

 仕方ないと彼我は昔テレビで見た相手の気持ちを強引に切り替える方法を試してみる。


 「アル!俺を見ろ!」

 「ダイスケ?」


 彼我はアルビアルの顔を両手で掴み、自分の方にアルビアルの顔を向ける。゛何をするんだ゛とアルビアルがいう前に彼我が少し大きな声で語りかける。


 「俺を見るんだ!俺はアルから離れない。お前を助ける!お前から逃げない。すべて受け止める。アル!お前の恐怖は俺が今すべて受け止めている!だからお前は俺を守れ!俺達に敵はいない事を見せつけるんだ!」

 「・・・わかった。俺、ダイスケを守る!俺達の前に敵いない!!」


 完全に彼我の暗示にかかり、さっきまで震えていたアルビアルの体は嘘のように止まりやる気がレンズ越しの瞳からでも見てとれる。

 彼我が使った暗示は、゛相手を肯定゛する事にある。一緒に練習して気が付いた事だが、アルビアルはどこか自分に自信がなく気にするような事ではない小さな事でも自分を追い込みネガティブな状態になる事があった。

 サッカーの練習、試合などでは、そのネガティブさは自分の自信のなさをカバーするためにミスを潰そうと必死で努力し繊細なボールタッチなどを心掛けているので、むしろプラスに働いている。

 アルビアルの弱点は積み重ねたバックボーンがないと不安が加速していく事にある。

 そこで否定的、突き放すような゛がんばれお前は出来る゛などの一見励ましているように聞こえるが見方を変えれば実は声をかけた相手は、頑張っている相手にさらに追い討ちをかけるように無理をさせようとしている言葉を使うのではなく゛俺が守るから俺を守れ、俺達は認めあった対等の立場゛という位置をアルビアルの心に確定したのだ。

 その事でお前は一人ではないという安心が暗示としてかかり、さらに自分だけが守られるという負い目を感じさせるのではなく、お前の力も必要なんだと伝える事で、自分は必要なんだという安心感に相乗効果が生まれる。

 そして、彼我が何度も゛俺を見ろ!゛と言ったのには意識を出来るだけ何か1点に集中させるためで、別のモノでも良かったのだが、今思いつくのは自分に集中させると言うことはだった。

 この三重の効果により、ガチガチに緊張して心の隙間がぽっかり空いていたアルビアルに対し、暗示が浸透していきやる気に満ちたアルビアルが出来上がった。

 満足そうに親指を立てて、彼我はアルビアルに行くぜ!と声をかけている。


 (あ~また彼我の奴、無意識に人助けしちゃったよ。天然の人たらしは怖いわ。ほら、中町が膨れてるじゃないか)


 個別チームのメンバーである中町を助ける為に彼我逹と一緒に残っていた中町と同じ”SAT”のBDUを着た皆口が頭を押さえて顔を軽くふる。

 皆口が思うように、彼我の隣で頬を膨らませて可愛く怒ってるアピールを中町がしているのは知っていたが、彼我はあえて無視し行動を促す。


 「さて、アルが落ち着いた所で、俺達も狩りに行くか」


 今、周りには彼我を合わせて5人いる。彼我、アルビアル、中町、皆口、大河の5人である。皆口と大河は何か知っている様にどこか心配そうに中町についていくと宣言して残っていた。

 彼我と中町を先頭に、後の三人は後方を警戒しつつ移動を開始する。

 すでに何度か周囲から銃がブローバック(自動装填)される音が聞えている。つまり撃ち合っているのだ。緊張感がブローバックの音が近くなるにつれて高まっていく。

 彼我逹がスタート地点にいた時間にして2分程度。敵とどれだけ味方が遭遇しているか分からないし、やられている可能性もある。

 かなり近い距離で結構激しく銃撃の音が聞こえる。彼我がワントップで壁から顔を少しだし周囲を確認する。覗き込み赤のメッシュベストを確認した瞬間、顔めがけて弾丸が飛んでくる。

 ババババ!!という音と共に彼我が隠れていた壁がオレンジに染まる。

 間一髪で銃撃から逃れた彼我は心臓がバクバクと音を立て、近くにいる中町にも聞こえるんじゃないかというほどだった。


 「すぐそばに敵がいる。すまん一瞬しか見えてないので数は不明。三人は後ろから攻められないように警戒をよろしく」


 三人は親指を立て了解の意思を示す。その時だった。


 「なかま・・・ち?」


 彼我が後ろの三人に指示を出した瞬間、中町が隠れていた壁から身を出し、彼我からは壁で見えない敵と銃撃を始める。


 「うそーん!ちょ、まじか?!ちょっと中町ーーー?!」


 中町が持っている長銃はスナイパーライフルL96で、エアーコッキングタイプ(自装填)の為、ブローバック(自動装填)はしない。一発づつ弾を自分で装填しないといけない為、弾をこめる時間がかかる。

 さらに、L96のマガジン(弾倉)は40発しか入らないのに対して、相手はライフル系だと思われることから300発は入っている。

 近距離で撃ち合うには弾数、長すぎるスナイパーライフルを振り回さないといけない為、不利だとすぐにわかる。

 彼我は、そんな危険なワンマンプレイに走った中町を援護するために、危険を顧みず壁から飛び出していく。


 (しれっと言ったけど”守る”って言ったんだ。自己中心プレイだったとしても、俺はお前の背中を守るぜ!)


 腹をくくり考えなしに飛び出した彼我だったが、そこで見たものは信じられない光景だった。

 中町は相手の弾を゛避けながら゛スナイパーライフルで反撃し、どんどんキル(相手をヒットする事)していく。彼我は目を疑った。

 このフィールドは照明が暗いのでまず普通は゛弾は見えない゛のだ。しかし、銃撃間隔が短い間に何度も撃たれているのに、中町の服装はオレンジで汚れていない。

 さらに驚くのは、自装填が非常に早いのである。撃ち合って30秒しないうちに、目に見える敵は蛍光オレンジに染まり、両手を上げてヒットコールしながら去っていく。彼我は目の前の惨状から立ち直ると中町に声をかける。


 「中町・・・。だ、大丈夫か?」


 服装が汚れていない中町にかける言葉出はないが、そこに含まれている意味合いは複雑だった。中町がキルした人数は5人。相手は16人なので、ここで約3分の1を中町一人で片付けた事になる。

 中町はゆっくりとこちらを振り向き、大丈夫だよと普通に応えているように見えるが、背中には悪魔の羽の幻覚が見え隠れする。


 (ま、まじか~?!なんか中町雰囲気が違いすぎないか?)

 

 彼我が中町の変化に驚いていると、後ろから肩をつかまれる。急につかまれてドキっと心臓が跳ね上がるが、そんな風に見せず”余裕の作り笑顔”で振り返ると皆口だった。

 

 「ま、そういう事だ」

 「はぁ??どういうことだよ?」

 「う~んなんていうか、中町って暴走プレイヤーなんだよ。まぁ味方に誤射しないからいいんだけどさ。お前らも戦った事あると思うが”ざ・ショクイン”とやり合えるんだよ」

 「なん?!まじか?!」

 

 以前三軍時代のサバゲーで最後に出てきたラスボス的チーム”ざ・ショクイン”。11対6で完封されてしまい、手も足も出なかった事を彼我は思い出した。


 「けど、なんであのおっさん達と中町がサバゲーを?」

 「あぁ。何か”ゾーン”の練習だとかいって、うれしそうな顔で武田監督が嫌がる中町を引っ張ってサバゲーをやった事があるんだよ」

 「まじか。初耳だな」

 「戦場に立った中町は、さっきみたいに鬼神のごとく”ざ・ショクイン”と戦い、最後は負けたけど6人中、5人はキル取っていた」

 「残った一人って?」

 「武田監督だ」

 「あ、そう」

 

 彼我は頭を抱えたくなった。この気持ちをどう表現していいのかわからない。今は味方だから問題ないが、エキシビションマッチが終われば中町と敵として戦う事になる。いくらベニートの身体能力が高いとはいえ、鬼神となった中町に勝てる可能性は微妙な気がする。

 

 (俺の引っ越しと賞金100万がかかってるのに、まさか中町が最大の難関になりそうとかやめてほしいわ)

 

 それから中町は敵を見つけるたびにキルを一人で取っていく。彼我たちはそれを見ている事しかできず、むしろ手を出したら中町にフレンドリーヒットしてしまいそうで、どうしようもなかった。

 それでも10分経ち、ゲーム終了コールがフィールドに響く。

 

 休憩室に戻ってきた彼我たちはどこかぐったりとした感じで、中央に設置された大型モニターに個人キル数が表示されていたので確認した。

 

 エキシビションマッチ1回戦 キル数表

 

  ”俺達野郎Aチーム” 赤メッシュベスト

 ベニート・ミロ キル数7

 花形 智明 キル数1

 倉見市 俊治 キル数0

 シジネイ・ルシオ キル数0

 川上 雅士 キル数0

 カミロ・アビラ キル数2

 水八 陽一 キル数0

 セルディア・バジョ キル数0

 マルニャ・アバスカル キル数0

 林 茉耶 キル数0

 倉石 登 キル数0

 下塚 騰児 キル数0

 片磐 重道 キル数0

 下市 庄司 キル数0

 重林 大成 キル数0

 御津島 修三 キル数0

 

 

 ”カレーが大好きBチーム” 黄メッシュベスト

 中町 葉柄 キル数9

 アルバート・ロペス キル数0

 ベレンゲル・ニッセン キル数1

 大河 智治 キル数0

 彼我 大輔 キル数0

 箕河 春樹 キル数0

 セサル・ノゲイラ キル数0

 アーロン・オルネラス キル数0

 青木 撤兵 キル数0

 佐藤 雅 キル数0

 アルビアル・ベルグラーノ キル数0

 皆口 雄介 キル数0

 ディオニシオ・モタ キル数0

 池華 益雄 キル数0

 檀乃 琴伴 キル数0

 合田 憲次 キル数0

 荒川 修司 キル数1

 

 

 中町がトップでベニートがそれに続いている。1回戦は生き残りが多いBチームが勝利した。

 キル数で負けて、チームも負けているベニートからドス黒いオーラが噴き出ている。

 ベニートとしてはこのクラブチームに来ての初めての敗北である。

 あぁっと誰もが2回戦荒れると感じていた。

※弾速パワージュールについて

計算式は

[{初速(m/s)×初速(m/s)}×BB弾の重量(g)]÷2000=ジュール(J)

はっきり言って私には意味がわからないです^^;

簡単にいうと、60km/hでボウリングの球と軟式野球の球が障害物にぶつかった時のパワーって違いますよね?

その衝撃の強さの違いの事を言うみたいです。

サバゲーは施設適用ルールを守り、安全に楽しく遊びましょう。

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