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監獄のクラブチーム  作者: 八尺瓊
1年目
6/77

第五話 入れ替え戦 ハーフタイム

あまり本当の試合では見慣れないフォーメーションを採用しています。

5-2-3でも面白いかと思ったんですがあまりに中央が空きすぎるので、

4-3-3にしました。

かなり厳しいですが機能するはずなので、面白いと採用しました。

 関係者?実況者がこの施設に入っているのは、”監獄のクラブチーム”プロジェクトが立ち上がって後援者に、試合を見せる為だった。

 後援者たちはある程度めどが立った場合、このプロジェクトを公開するつもりであった。

 はっきり言って、Jリーグがあるのに、10代の若者をイタリアリーグで鍛え上げ、ワールドカップの選手にしようとしているのである、世間の評判は今公表すれば悪いに決まっている。

 日本サッカー協会の上役だけがその事実を知っており、まだ外部に漏らす時期ではないと判断してだが、公表する時期さえ間違えなければ”売れる”と踏んでいた。

 もし、うまくいなずにお蔵入りをしたとしても、ここで得たデータは次にいかせるはず。

 メディア化を狙って関係者を集め”GOサイン”が出るまで、暖めておく事になっていた。

 その為、カメラを入れて入れ替え戦はすべて、撮影されている。

 実況者も、あまり売れていないジャーナリストを起用するのではなく、中堅どころのジャーナリストを入れ、情報漏えいに細心の注意を払っていた。

 ジャーナリスト達は”GOサイン”が出るまでここから出られない事になっている。

 給料もよく、食べる物にも困らないので”解説だけ”をやる仕事ということで、特に初めはなんとも思っていなかったが、ここまで塀に囲まれた環境が、ストレスが溜まるものだとは思っていなかった。

 しかし、それでもプロのジャーナリストとして、彼らは振舞っていた。

 試合後のインタビューに向けて、段取りを組んでいく。

 

 「アルゼンチンのアルバート レギュラーチーム戦でもいい動きしてたけど今日もキレてるよね。」

 「花形もアルバートには及ばないけど、彼の動きを邪魔しないマークのはずし方をしていたし、2軍のチームとしての熟練度もあがってきてるよね。」

 

 インタビュー会場の設置を担当している作業員達が今の前半戦を語りだす。

 3軍の選手の動きなどは誰も口にしない。

 確かに目立っているのは2軍選手ばかりで、得点も挙げている。

 そんな彼らが控え室で得意げな顔をしていたかと言われればそんな事はなかった。 


 「お前ら、手を抜きすぎじゃないのか?決定的な瞬間が4度もあったんだぞ。」

 

 2軍監督から、手厳しい言葉を言われる。

 まだ後半戦が残っているにも関わらず、2軍の監督はイラついていた。

 3軍相手に、本来なら4点は取れている計算なのだが、まだ2点しか入っていない。

 選手達も、手を抜いているわけではないし、この一戦で得たポイントでレギュラー入りがかかっている。

 

 「監督、お言葉ですが、彼らもレベルアップはしております。”計算違い”がそこにあっても仕方ないかと。」

 

 アルバートはイラついている監督を特に気にした様子もなく声をかける。

 その言葉に監督はアルバートをにらみつけるが、得点をあげている彼に気分をぶつけるのはお門違いと、彼の話に肯定する。

 

 「そうだな。あいつらも、レベルアップしている。俺の采配ミスもある。後半やってくれるんだろうな?アルバート?」

 「ええ、もちろん。と言いたいところですが、DMFの彼我がかなりの曲者です。」

 「ほう。足が速いだけだと思っていたが?」

 「確かに足は速いほうですが佐藤のほうが、速い。それでは曲者にはならない。」

 「どう曲者なんだ?」

 「彼がディフェンスラインを統括している。CBの選手ではなく、彼が多分ディフェンスリーダーをやっている。」

 「ほう。彼我を基点にディフェンスが動いているのか?でもどうやって。CBからの指示のほうが、ラインの切り替えはうまくいくのではないのか?」

 「CB3人とDMF2人を一つのグループと考えて動いている。そのため何か手で指示を出していた。」

 「なるほど。3軍の監督の指示ではなさそうだな。」

 「彼が考えたんだと思う。3-5-2というイメージではなく5-3-2という感じを受けた。」

 

 アルバートの説明に、2軍の選手から否定的な意見は出ない。

 肯定が含まれるうなずきが何人かの選手から起こる。

 

 「なるほど守備の強化か。それでも失点しているのではその彼我の、能力も対したことはないのでは?」

 「いや、そうじゃない。失点して硬さが取れた事で、彼我が目覚めた。彼がいなければ監督のオーダーどおり4点以上は取れていたはずだ。」

 「しかし、得点はしている。2軍はこのままで前に出る。」

 「了解。」


 2軍チームが控え室からグランドに戻ってくる。

 少し時間を戻して3軍の控え室では、このままでは勝てないと意見が飛び交っていた。

 2軍の組織的な動きにかき回されて、実は3軍チームのスタミナがかなり減っていた。

 このハーフタイムの休憩にどこまで回復できるのか?

 何人かは顔に冷たい濡れタオルをかけて熱を冷ましていく。


 「攻めに出なければ、勝てない。2軍はシジネイと、アルバートの調子が抜群にいい。」

 「けど、守備も堅めないと、突き放されるぜ。」

 

 中町と、皆口が話しをしているのを、選手達は聞いているだけだった。

 3軍のチームメンバーは基礎体力向上をまず目標としている為、スタミナがないわけではない。

 無駄な動き。

 1対1で簡単に抜かれてしまう為、2対1という状況を作り、開いたスペースにボールを放り込まれる。

 もちろんカバーに入るが、回数が増えれば増えるほど、スタミナを削られる。

 特にディフェンス陣の体力が削られている。

 もちろん2軍が意図してそう持っていっているのだが、わかっていてもどうにもできない。

 その中で一番動き回っているはずの彼我はまだ、ぴんぴんしていた。

 しかも攻守に渡って関わっている。

 2軍チームの話にあったが確かに彼我はディフェンスリーダーのようなものをやっているが、そうではない。

 フォワードにも指示を出し、プレスをかけるように合図を出していたのだ。

 相手がボールに関わる時間を計算しつつ、動きを測る。

 前半45分の試合組み立てを行い、修正、また修正を繰り返していく。

 失点してから動きが変わったわけではない。

 失点したことで修正した内容がうまくはまり始めたのだ。

 ”ゲームコントローラー”

 3-5-2のフォーメーションをうまく機能させることを考えながら、組み立てていくが、このフォーメーションでは彼の中で、この試合を勝つ見込みは”0”に近かった。

 監督にこの事を話すべきなのかと迷っていたが、監督から切り出す。


 「お前ら勝ちたいか?」

 「当然っす。」


 全員の雰囲気が、変わる。

 疲れた体から闘志のようなものが、感じられる。

 

 「俺の見立てではこのままでは負ける。そこで今まで練習していないが、フォーメーションを4-3-3に変える。」

 「4-3-3?」


 誰もが結構大胆に変えるのだと思った。

 ディフェンスが彼我のおかげでもっている。

 SBサイドバックを使うと言うことはもちろんサイド攻撃を意識した戦術だ。 空いた穴のディフェンスで動けるのか?

 さらに提示されたポジションを見て、目をむく。

 

 CF(左) 倉見市くらみし 俊治しゅんじ 身長171cm 体重60kg

 CF(右) 中町なかまち 葉柄ようへい 身長170cm 体重55kg

 ST 大河たいが 智治ともはる 身長171cm 体重59kg

 CMF 水八みずはち 陽一よういち 身長173cm 体重59kg

 DMF(左)青木あおき 撤兵てっぺい 身長173cm 体重63kg

 DMF(右)池華いけばな 益雄ますお 身長175cm 体重63kg

 SB(左)倉石くらいし のぼる 身長172cm 体重60kg

 SB(右)彼我ひが 大輔だいすけ 身長169cm 体重54kg

 CB(左)皆口みなぐち 雄介ゆうすけ 身長172cm 体重63kg

 CB(右)片磐かたいわ 重道しげみち 身長168cm 体重53kg

 GK 重林しげばやし 大成たいせい身長176cm 体重68kg


 3トップはややゴール中央に2人置き、その下にST。

 中央はCMFセンターミッドフィルダーの水八のみ。

 後はDMFをかなり下げてディフェンス陣に組み込み、SBの上がりを補助する形で、固める。

 中央を大胆に空ける布陣だった。

 中央カバーより、DMFを基点としたディフェンスラインを作り上げ一気に止める。

 止めたボールをSBが持ち上げ、クロスでセンタリングからの得点を狙う。

 マジか?!と誰もが思ったが誰も否定しなかった。

 むしろ面白そうな布陣に興奮を覚える。

 練習していないフォーメーションに戸惑いはあるがなぜかうまくいく気がしていた。

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