表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
監獄のクラブチーム  作者: 八尺瓊
1年目
47/77

第46話 練習試合 13対11 その1

 Aチームとの試合当日。

 2チーム制になり、クラブの選手評価基準が変わったおかげで、1ルームだった部屋から少し小さめだが2LDKの部屋へ引越しした俺は、ベットから起き上がり寝室を出て顔を洗いにトイレ+洗面台+風呂がある洗面所に向かう。出来ればトイレと風呂はセパレートにしてほしかったと思うが、ベニートの部屋はセパレートになっていたので、評価を満たせば部屋を変えてもらえるはずだと気分を変える。

 現在5時半。昨日寝たのが確か夜の1時ごろだったかな。昨日は朝から21時までチームメンバーと一緒に練習し、夕飯を食べた後にベニート達とまた練習。自室に戻った時にはベットに入るなり、目を閉じた瞬間からの記憶がない。

 重力に逆らいきれず落ちそうになるまずたをどうにか開き、疲れた体を引きずりながら洗面所の扉を開ける。

 そこには鍛え抜かれた後背筋、くぼみを作り引き締まったヒップラインを見せ、鼻歌混じりで機嫌よく濡れた髪をハンドタオルで拭くさわやか系男性誌モデルでやっていけそうなイケメンが立っていた。

 

 「オゥ?!」

 

 扉を急に開けられて驚いたのかイケメンはこちらに振り向きながら、下半身についているおぞましいモノを俺に向け、その顔に似合わない声色の声を上げる。たぶん、世の中の妙齢の奥様方が見れば喜んでしまうシチュエーションなんだろうと思うが、正直そんな事はどうでもいい。右手で顔を抑えながら悲痛な顔を隠し、とりあえず全裸のイケメンに質問する。

 

 「なぜここにいるんだ?・・いや違うな、今何時だと思っているベニート」

 「見て判らないのか?風呂に入っていた所だ。今何時という問いかけには確か私が風呂に入ったのが4時・・・」

 「・・・もういい」

 

 朝から頭が痛くなる状況に、自分の言った言葉は誤りだったんじゃないかと悩む。最近何かと”親友”というフレーズを持ち出し、うれしそうに俺にかまってくる。

 正直にしんどいと思うが、うれしそうにするベニートをむげにもできず、俺も人付き合いは上手いほうではないので、こいつの存在はまぁ認めたくないが大きい部分はある。

 あまりにかまってくるベニートに、いちいち扉をガンガンノックするな、いつでも入って来ていいからと言った事がすべての発端なわけだが、まさか朝から来るとは誰も思わないだろう。

 洗面所からベニートを追い出し、シャワーを浴びた後には衝撃的な出会いのおかげで完全に目が覚めていた。

 髪を乾かした後、食堂に行くにはまだ早いと、体を少し動かす為に元3軍用のグランドに行く。2チーム制になった事で特に許可なく3軍のグランドは使用できるようになり、チーム関係なく暇さえあれば誰かが練習しているグランドになっていた。

 さすがにこんな朝早くから(現在6時前)から誰もいないだろうと思っていたが、一人、ボールかごを用意しシュート練習する選手がいた。結構前から練習していたのだろうか?ゴールには大量のボールが転がっていた。

 しかし、こんな朝早くから練習って、あの細身からすると中町か?

 シュートを一本撃ち終わったのを見計らって声をかける。

 

 「おはよう」

 「ああ、彼我じゃないか。おは・・よ・・・う」

 

 横にいるベニートを見た中町の顔が、俺を見つけた時にはにかんでいたのだが、だんだん無表情に変わっていく。

 ベニートも、ふん!と鼻息をはき余裕の顔でオーラ(あいさつ)と声をかける。

 中町も無表情ながら、ベニートにおはようと返し、瞬間移動でもしたかのような動きでさっ!と俺の腕を掴んでくる。

 

 「ど、どういうこと?!」

 

 少し怒った感じに小声で迫られ、器用だなと思いながら部屋で会ったんだと返す。


 「部屋であったって?」

 

 まぁ、”部屋に来た”ではなく、”部屋で会った”とは確かに日本語がヘンだが、これ以上説明のしようがない。

 迷いながらどう伝えようかと思ったが、正直にベニートが勝手に入ってくる事を許可した事を伝えると、なにそれ!?と大きな声がグランドに響く。

 

 「ちょっと待って。それって無用心だよ!ううう~~~、わ、判った!!し・ん・ゆ・うの彼我の為に僕も部屋にいつでもいける許可もらっていいよね?!」

 

 えらく”親友”という言葉を強調してくるなと思いながら、ベニートだけでも困っている状況なのに中町までかまってくるようになれば、負担が大きくなるなと思うが、血走っている中町の目を見て断れそうにない。

 どう断ろうと思った瞬間、中町の肩をずんと掴みベニートが首を振る。

 

 「親友特権は1人だけでいい。悔しければ俺に勝ってから意見を言ってみろ」

 

 ベニートの言葉に目を丸くするが一瞬で立ち直り、肩に置かれた手を払いのけながら、温厚な中町の顔がさらに無表情になる。

 

 「その勝負買うよ。勝敗の条件は?」

 「今日の試合、互いのゴール数で決めようじゃないか」

 「なるほど、判りやすいね。じゃあ勝てば彼我の”親友”は一人ということだよね?」

 「そういうことだ」

 「わかったよ」

 

 中町は、そのままゴールに向かいボールを集めていく。

 え?何俺が賭けの対象なの?と思いつつも熱い男2人の話に入っていく事ができず、状況に取り残される。

 それにしても中町は今日の試合後半戦からの出場だと言われている。

 まだゾーンから体が回復しきっておらず、前半は様子見で、後半時間を見ながらの起用だと喜多島監督から昨日のミーティングで言われている。

 どうするつもりなんだ?賭けの対象になっていることよりもそっちが気になるが、ベニートも気合が入ったようで、体から闘気オーラが見えるような気がする。

 俺を引き連れてグランドを軽く走り、数周走り終えると二人で整理運動をしていると横目で中町がこちらを確認し冷気を体から発しながら、激しいシュートを繰り返す。

 今日は熱いオーラと冷たいオーラの戦いかとひとごとのように思いながら、グランドを後にし、朝食を終えるとチームミーティングが開始するまで温泉施設でマッサージしてもらう。

 さすがに疲労が溜まっていたのか、ベットに横になるとすぐに撃沈し、ちょうどいい時間に起こしてもらう。

 みっともないが、よだれの後が顔にべったりとついていたので、温泉に浸かってから自室に戻り、準備をしてBチームのミーティングルームに向かう。

 ミーティングルームに着くなり皆口に捕まる。

 

 「ちょっと彼我!!」

 

 皆口が入ってきた俺を腕ごと引っ張って、焦った感じの小声で話しかけてくる。同じような状況を朝にもあったよねと思いながら、どうしたと皆口と同じトーンで聞き返す。

 

 「アレ、アレ」

 

 そこには、喜多島監督に静かに頭を上げる中町がいた。一瞬で状況を把握し、う~んと唸る。唸った俺に皆口の目がキラーン!と光る。

 

 「お前何か知ってるな?」

 「い、いや・・」

 

 ちょっとどもった事でさらに、怪しさを感じとったのかさらに詰め寄ってくる。

 

 「誰にも言わないからいってみ」

 

 言葉とは裏腹に、口元が笑っている皆口の信用なんてあろうはずもなく、どうやって切り返すか考える。

 そこにわかった!と優しい声が聞こえてくる。

 

 「そこまでいうなら前半で行って見ようか。そっちのほうが後半で使うよりパフォーマンスよさそうだし、けど出すからにはがんばってもらうけど?」

 「判っています。監督ありがとうございます」

 

 中町はもう一度頭を下げ、近くの席に着く。

 集中しているのか、誰も近寄れない雰囲気を出し、周りからは気合入ってるなと声が所々で上がる。

 気合の原因を知っている俺は目が泳ぐが、その話をすると絶対ネタにされると黙っているしかない。

 11時半ミーティングが開始され、スタメンが発表される。

 前半戦、俺達は11人でいつもどおり闘うことになっており、相手は13人のイレギュラー戦。

 

 Bチームスターティングメンバー

 

 CF 中町なかまち 葉柄ようへい 身長171cm 体重55kg

 ST アルバート・ロペス 身長180cm 体重65kg

 OMF 大河たいが 智治ともはる 身長175cm 体重59kg

 CMF 彼我ひが 大輔だいすけ 身長173cm 体重59kg

 SMF(左) 箕河みがわ 春樹はるき 身長175cm 体重62kg

 SMF(右) セサル・ノゲイラ 身長174cm 体重63kg

 DMF アーロン・オルネラス 身長176cm 体重60kg

 CB(左) アルビアル・ベルグラーノ 身長174cm 体重60kg

 CB(中) 皆口みなぐち 雄介ゆうすけ 身長173cm 体重63kg

 CB(右) ディオニシオ・モタ 身長185cm 体重75kg

 GK 荒川あわかわ 修司しゅうじ身長185cm 体重73kg

 

 ベンチ

 

 FW ベレンゲル・ニッセン 身長179cm 体重65kg

 MF 青木あおき 撤兵てっぺい 身長173cm 体重63kg

 MF 佐藤さとう まさ身長170cm 体重55kg

 DF 池華いけばな 益雄ますお 身長176cm 体重63kg

 DF 檀乃だんの 琴伴こととも 身長170cm 体重53kg

 DF 合田ごうだ 憲次けんじ 身長175cm 体重59kg

 

 スタメンにアルゼンチンメンバーを多く取り入れているのは、意図があると言われるが、詳細は喜多島監督からは語られない。口から不満は漏れないが、日本人選手達から雰囲気から不満だと訴えてくる。そんな選手達を軽く受け流し、監督は満面の笑みで、試合の戦術を語りだす。

 13時から試合開始で、一旦解散となり、水分と適度な腹ごなしを行ってから控え室に再度集合し、準備を終えた選手達から円陣を組んでいく。

 何度試合をやっても、ヒリついた空気、高揚した気分の中にある緊張感からのどが渇き、誰もが生唾を飲み込む。2人の監督も円陣に加わり、キャプテンマークをつけた荒川が、勝つぞ!と気合の掛け声を出し、おおーー!!と意気揚々と控え室を選手達は出て行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ