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監獄のクラブチーム  作者: 八尺瓊
1年目
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第三話 ミーティング

久々のアップです。

ウイイレとケーブルテレビでサッカーを勉強中です。

しかし、プレミアムリーグとセリエAはやばいっすね。

選手がうほっいい男っていいたくなります。(イケメン爆○しねーかな。

 今日も練習が終わり、3軍の監督が、選手を集める。


 「明日8時よりミーティングを行う。各自遅れずミーティングルームに集合するように。」


 集められた選手はみんな首をかしげた。

 反省会というミーティングは練習後に散々やってきたが、時間指定でのミーティングは初めてである。

 3軍のキャプテンである、GKの重林が復唱を行い、その日の練習は反省会はなく解散となった。

 彼我も、練習でべたついた汗を落とす為に、自室のシャワーを浴びていた。


 「今日もきつかった。」


 正直限界ぎりぎりの体力を使い、スタミナ向上と、体力低下による思考遅延の改善を目的として3軍は今まで練習に取り組んできた。

 それ以外の練習も勿論行ってきたが、まず”サッカー”を練習する以前にボールを持ちながら走れる体作りがテーマだった。

 体力が低下し、、今自分が何をすべきなのか?どこまで走れるのかなども課題に組み込まれている。

 そうすることで、だんだん無駄な動きが減っていき、体が勝手に動きを最適化してくれる。

 ここにきてから4ヶ月。

 半年間チーム練習を行う予定だったが、ある程度”差”が見えてきたことでスケジュールを繰り上げて3ヶ月で3つのレギュラーチーム、2軍、3軍のチーム練習が開始された。

 3軍はさっき言ったテーマで練習を繰り返していた。

 その間にも練習試合も週1で行われ、4試合行われ、すべての試合で中町は点を上げている。

 2軍昇格が間違いないと言われて、3軍から初めて上のチームに選手を送り出す事になりそうだった。

 彼我は上達が早いが、評価はそれほどでもなく、まだしばらく3軍にいる予定だ。

 仲間の昇格に喜ぶ一方、寂しさ、悔しさなどもあり、シャワーの粒がいやに心に沁みる。

 3軍の選手はほとんどがサッカーの経験が浅い選手ばかりだった。

 その分、急速に”サッカー”を吸収し、目に見えて上達している。

 むしろ吸収しないような選手はスカウトされていない。

 スカウトマンの目は確かだったようで、普通こんな隔離された場所に連れてこられて不満もあり、やる気もなくしていく人間もいるだろうが、彼我が見る限り、ネガティブな奴はいないし、むしろ前向きに練習を行う選手ばかりで、お互いに高めあっている。

 では独房に入る理由は?

 ”差”である。

 実力不足により衝突を行う。

 〔お前は本気を出しているのか?全力なのか?〕

 〔ああ?全力でやってるよ。お前こそやっているのか?〕

 などを言い争い気づけば、喧嘩が始まる。

 10代の精神的に未成熟な感情が爆発しあうのは仕方の無い事だし、まして塀に囲まれた環境で、ストレスを感じないわけがない。

 しかし、それも初めのうちだけで、チーム編成があった後は、そういった衝突は少なくなり、特にレギュラーチームと、2軍チームの選手には見られなくなっていった。

 むしろ上記2チームに、衝突するような傾向が見られそうだが、どちらかというと3軍の選手にその傾向が見られる。

 そういった部分も含めて、彼我は最近”上”の選手が変わってきていると感じていた。

 中町が昇格した時、どうなっているのか聞いてみるかと思っている。

 今日は誰からの練習の誘いもなく、明日の朝が早いこともあり22時には就寝についた。

 最近寝るのか13時を超え疲れたが溜まっていたのか、寝つきは良かった。

 朝6時に起床。

 ベットの上で上半身を起こしぼ~としていた彼我が気がつけば20分もたっていた。

 身支度を済ませる頃には、7時半になっており、ミーティングルームに向かう。

 すでに何人か着ており、いまどきの10代じゃねーなと彼我は思うが、自身もそれに含まれているとは思っていない。

 適当な机に座り、メモの用意をして待つ。

 7時50分には全員集まっており、ほっとする。

 実は遅れた選手が一人でもいれば、連帯責任で全員が厳重注意。

 さらにそれが続くと全員で独房入りである。

 ある程度個人責任な部分があるが、こういうところだけ何で”チーム”を意識させるんだと前から思っていた。

 こういうところは日本的だなと思うが、日本で育ってきたので、仕方ないで済ます。

 8時に監督とスタッフ3人が入ってきて、ミーティングを始める。

 監督が前に立ち、3人のスタッフは邪魔にならないように壁際の椅子に腰をかける。

 

 「全員いるな。ではミーティングを始める。」


 各自が監督の話にメモを取り始める。

 ミーティングの内容はほぼ想像していた通りである。

 選手入れ替え戦。

 これまでの試合と、練習内容を見て監督とスタッフ数名により点数がつけられていた。

 その点数の高い上位2名の選手が今回行われる入れ替え戦で、その評価が妥当だと判断された場合に入れ替えを行う。

 レギュラーチームの下位2名と、2軍上位2名の入れ替え。

 2軍下位2名と3軍の上位2名の入れ替えを行う。

 3軍から一気にレギュラーチームの入れ替えは行わない。

 まずはレギュラーチームと2軍の入れ替え戦を行う。

 2軍と3軍の入れ替え戦は、1週間後となった。

 ここで、試合以外の発表が行われる。

 給料が大幅に変更”されていた”話があった。

 具体的な金額の話は質問で上がったが、それには監督は答えなかった。

 しかし、かなりのベースアップをしているとの事で、3軍の選手はざわめきだした。

 後、レギュラーチームのネットショップ特権も追加されたと発表があった。

 それも具体的に公表はされない。

 それでか・・・。

 彼我が考えていた”上”の選手達の態度の変化に納得をつける。

 平等などありえない。

 監督が口にした言葉だった。

 ここでは弱肉強食が基本であり、それに対する対価も支払われる。

 結果がすべて。

 理不尽な大人の都合を押し付けられて頭にくる選手はここにはいない。

 契約書にサインする際、スカウトマンの前でしっかり目を通させられ、印鑑も自分で押した。

 親も同席しており、責任は自分にあると痛烈に感じている。

 ではチャンスがないのか?いやそんな事はない。

 3軍だからとチャンスがないわけではない。

 入れ替え戦が月に一度必ずある話が監督から言い渡され、今からでも採点の逆転も可能だと話が出る。特に試合は大きな加点対象になっていると。

 全員が殺気だった気がした。

 上に上がればどんな待遇が待っているのか。

 人生をかけるゲームが始まったと選手達はいまさらながら感じていた。

 レギュラーチームと2軍からは3軍は”どんぞこ”と呼ばれており、3軍選手は全員がそこに叩き落してやると意気込んで、これまでになかった”気迫”を見せ始める。

 全員がライバル。

 ポジションなんてあってないようなもの。

 上に上がれればどこだってやる。

 今までは俺のポジションとどこか思っていた部分があったが、それもなくなった。

 GKでも関係ない。

 人気が出たのは一番分りやすいフォワード。

 得点できれば、大きな加点になると考えている。

 しかし、彼我は違っていた。

 その思考のせいで手薄になったディフェンスに重きを置き、DMFとしてかなりうまくなっていた。

 DMFとして攻撃陣に加われないこともないし、それより今は、3軍の弱点であるディフェンスの強化が先だろうと考えていた。

 ボールコントロールも、格段にアップしサッカーを始めた頃に比べると別人になっていた。

 この”監獄のクラブチーム”プロジェクトの最大のテーマは”走って点を入れる”サッカーである。

 なのでイタリアリーグなのである。

 スピーディな試合運び、当たりの強い試合。

 上半身がラガーマンのような体つきなのにふとももの太く、しかも柔軟性がないと当たりが強いせいで怪我をする可能性がある。

 フィジカルトレーニングはそういったイタリアサッカーに適した体作りを基本に進めている。

 16歳でまだ骨格の基本が定まっていない体にムリをさせることなく、柔軟性を重視し、激しい当たりをバネで受け流すように体作りが行われている。

 日本のクラブユース選手をスカウトしなかったのは、日本のサッカーを叩き込まれているからである。

 鋭いパスから前線に一気に送られるカウンター。

 技を重視したサッカー。

 しかし、老人達は派手さにかけると、思っていた。

 海外の選手のような多彩なテクニシャンでありながら走り、点を入れる”派手さ”を求めたのである。

 天才が煌き輝くまさに”スター選手育成”しかも複数人を一気に輩出しようとしたのである。

 彼我は自分の体を鏡で見ていた。

 綺麗に整ったボディライン。

 腹筋もボコボコに割れており、マッチョポーズをとって自分を賛辞する。

 ただ硬い筋肉ではなく、酸素を多く含みチアノーゼに耐えれるように体作りを行っている。

 この施設は高地にあり酸素濃度も薄い。

 どうしても、多く酸素を取ろうと勝手に体が変化を始める。

 まだまだ変化途中だが、彼我は自分を信じていた。

 鏡に映る自分の姿は日本じゃありえなかった。

 この変化こそが自分を変えていく。

 

 とここで手を止め、自分の書いた日記を読み直し、どこか悦に浸る。

 

 「いや~。俺って文才ありまくりじゃね~。ここまで自分を美化できる才能って最高!」


 日記は毎日かかさず書いている。ストレス解消方の一つでもある。

 自画自賛された日記は気持ちがいい。

 読み返した日記にうなずきながら、今週末入れ替え戦だが、今まで負けている2軍になぜか負ける気が今回しなかった。

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