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監獄のクラブチーム  作者: 八尺瓊
1年目
36/77

第35話 ユースとの試合 レギュラーチーム その2

 試合開始の前にグランド中央に審判をはさみ両チーム左右に分れて整列をしている。

 各々、飛んだり跳ねたりして、体を動かしつつ、審判が両キャプテンを呼び、コイントスを行う。

 U-17のキャプテンは天津皮、レギュラーチームのキャプテンは本来荒川だがGKの変更により、合田が変わりを勤めていた。

 

 -------実況解説1 -------

 ジュン:「さあ、U-17との最終試合、U-17対レギュラーチームの試合をお送りいたします。実況はジュン・カビラエルと元日本代表 喜多島きたしま ごうさんをお迎えしてお送りしております。よろしくお願いします」

 喜多島:「よろしくお願いします。」

 ジュン:「まずは驚きましたね。今回レギュラーチームのGKが変更され、その選手がなんと3軍で中盤の彼我選手と言うことで、小田監督になにか意図があるのでしょうか?」

 喜多島:「う~ん。非常に難しい質問ですね。小田監督とは代表時代のチームメイトでしたが、少し考えが僕達の先をいっていたので、いつも驚きの連続だった覚えしかないので、今回もそういった何かサプライズ的な抜擢ではないかと思いますね」

 ジュン:「そうですか。しかし、どうなんですかね?ゴールキーパーでありキャプテンである荒川選手を変更しての試合。チームに影響がありそうな気がするんですが?」

 喜多島:「確かに本来なら影響はあってもおかしくはないのですが、先ほどまで行っていたアップの様子からチーム全体の動きは悪くはなかったと思いますね。ただ守護神が変わった事に対する影響は表面ではなく、裏側で徐々に広がっていくものですからね。試合に注目です」

 ジュン:「そうですか。ではスターティングメンバーをご紹介していきましょう」 

 -------実況解説1 終了-------

 

 レギュラーチームメンバー フォーメーション:3-5-2

 

 CF(左)ベニート・ミロ 身長181cm 体重68kg

 CF(右)ベレンゲル・ニッセン 身長179cm 体重65kg

 

 OMF シジネイ・ルシオ 身長175cm 体重58kg

 2軍→レギュラーチームへ

 

 CMF 川上かわかみ 雅士まさし 身長172cm 体重58kg

 

 SMF(左)佐藤さとう まさ身長170cm 体重55kg

 2軍→レギュラーチームへ

 

 SMF (右)カミロ・アビラ 身長168cm 体重48kg

 DMF アーロン・オルネラス 身長176cm 体重60kg

 CB (左)下塚しもつか 騰児とうじ 身長170cm 体重58kg

 CB (中)合田ごうだ 憲次けんじ 身長175cm 体重59kg

 CB (右)ディオニシオ・モタ 身長185cm 体重75kg

 GK 彼我ひが 大輔だいすけ 身長173cm 体重59kg

 

 ベンチメンバー

 MF 箕河みがわ 春樹はるき 身長175cm 体重62kg

 MF はやし 茉耶まつや身長173cm 体重63kg

 DF 皆口みなぐち 雄介ゆうすけ 身長173cm 体重63kg

 DF 檀乃だんの 琴伴こととも 身長170cm 体重53kg

 GK 荒川あわかわ 修司しゅうじ身長185cm 体重73kg

 

 U-17チームメンバー フォーメーション:4-3-1-2

 

 CF 前島まえじま 春友はるとも身長169cm 体重62kg 

 鹿島アルマロス ユース所属 

 

 ST 相良さがら 智明ともあき身長168cm 体重63kg 

 浦和ラグエル ユース所属

 

 CMF 石田いしだ 信孝のぶたか身長173cm 体重65kg 

 浦和ラグエル ユース所属

 

 DMF(右) 広田ひろだ 忠道ただみち身長167cm 体重59kg

 ガブリエル大阪 ユース所属

 

 DMF(中) 坂田さかた 一丸いちまる身長175cm 体重70kg

 鹿島アルマロス ユース所属

 

 DMF(左) 大林おおばやし 勝彦かつひこ身長169cm 体重60kg

 聖トモバラエ高校 所属

 

 SB(左) 但馬たじま 正也まさや身長172cm 体重61kg

 サハリエル広島 ユース所属

 

 CB(左) 天津皮あまつかわ 郁都いくと身長170cm 体重58kg

 名古屋ゲダエル ユース所属

 

 CB(右)押田おしだ 昭二しょうじ身長170cm 体重58kg

 聖トモバラエ高校 ユース所属

 

 SB(右)長橋ながはし とき身長175cm 体重63kg

 エゼケエル東京 ユース所属

 

 GK 子守もこり 翔太しょうた身長176cm 体重65kg

 横浜ヘロヤセフ ユース所属

 

 U-17ベンチメンバー

 CF 沖河おきかわ 順治じゅんじ身長174cm 体重66kg

 ガブリエル大阪 ユース所属

 

 MF 末浪まつなみ 博正ひろまさ身長176cm 体重67kg

 エゼケエル東京 ユース所属

 

 MF はら 勇次ゆうじ身長168cm 体重59kg

 東京アザゼル ユース所属

 

 DF 紅林くればやし 秋矢あきや身長169cm 体重59kg

 横浜ヘロヤセフ ユース所属

 

 GK 清水しみず 清隆きよたか身長177cm 体重68kg

 名古屋ゲダエル ユース所属

 

 -------実況解説2 -------

 ジュン:「ご紹介いたしましたスターティングメンバーですが、U-17のメンバーは3軍と試合を行った選手で構成して、フォーメーションがトリプルボランチと少し変則的ですよね。カウンター狙いなのでしょうか?」

 喜多島:「カウンターも勿論狙っているだと思いますが、それよりもベニート選手を警戒してという事になるんじゃないかと思いますね」

 ジュン:「確かに彼の突破力には定評がありますからね」

 喜多島:「ベニート選手はドリブラーとしてもそうですし、彼の変幻自在の攻めにU-17は人数を当てる事で、対応すると言うことなんだと思いますが、かなり大胆に中央を空けた形なので、そこがどう影響するのかというところですね」

 ジュン:「それに対して、レギュラーチームは新規加入メンバーと先ほどお伝えしましたGKの彼我選手がスタメンとして起用されていますね」

 喜多島:「新規加入メンバーに関しては、2軍からあがってきた選手達なので、そこまで心配するような動きにはならないと思いますが、本当にGKの彼我選手の動きは注目ですよね」

 ジュン:「そうですね。では見守っていきましょう。左のエンドから攻めるのはレギュラーチーム。右のエンドから攻めるのはU-17です。レギュラーチームからのキックオフで試合が開始します」

 -------実況解説2 終了-------

 

 センターサークルにはベニートとベレンゲルが立ち、審判の笛と共に、ベニートからベレンゲルにパスをしてキックオフ。

 ベレンゲルは一旦後ろにパスCMFの川上にボールが渡ると、両サイドのSMFが駆け上がっていく。

 左SMFの佐藤にボールを上げるが、U-17のSB(右)長橋が対応して、ボールを奪う。

 駆け上がろうとする長橋だったが、前からつめてくる佐藤の動きを見て一旦CB(右)押田にボールを回し、そこから数回短いパスで繋いでいく。

 U-17のCMF 石田が中央を少し上がった位置で、ST相良にパスをするが、ここではボールを奪われてしまう。

 ボールをインターセプトしたDMFアーロンがSMF(右)アビラにボールを回し、そこからアビラのドリブルで切り込んでくるが、U-17のDMF(右)広田にスライディングでボールを外に出されてしまい、流れが止まる。

 アビラのスローインでCMF川上にボールが渡り、開いてるスペースを探すが、U-17のディフェンスにかけている人数のせいで、なかなかスペースが見当たらない。

 アビラにもう一度ボールを戻すが、2人に囲まれ、アビラが身動きとれずボールを奪われてしまう。

 長橋がボールを奪うとそのままサイドを駆け上がっていき、それに合わせてチーム全体が連動するようにラインを上げていく。

 コーナー付近から長橋にクロスを入れられ、ゴール前にボールが上がってくる。

 

 (き、来た)

 

 心臓が口から飛び出そうになる彼我だが、落ち着いて周りを見て味方の位置を把握し、そこから予想される選手達の動きを予想する。

 

 (ここはディオニシオが受けてくれるはず)

 

 彼我の思い通り、長身のディオニシオがうまくヘッドでクリアするが、クリアーボールにつめていたDMF(右)広田に拾われて、チャンスエリア付近からミドルシュートを撃たれてしまう。

 枠を捉えた早めのシュートだったが、彼我はすばやく反応し飛び込み、ボールをキャッチすると、そのまま抱き込むようにボールを抱え込み、ボールをキープする。

 

 (ふ~あぶねー。あと少し反応が遅れていたら決まってたな)

 

 疲れた汗なのか、冷や汗なのかわからない汗が目に入り沁みるが、片目だけあけて、右手でボールを持ちながら、左手で上がれと指示を出し、ボールを蹴るフリをして近くにいるCB(左)下塚にボールを転がす。

 汗をぬぐいながら、視界が回復すると、U-17CFの前島のシュートが飛んでくる。

 

 (うそ!?マジか!!)

 

 さっきとは逆方向へ横とびしながら、ボールをキャッチし、受身がとれず地面に体をぶつけてながらボールは離さない。

 すばやくボールを抱き込むと、一息つく。

 

 (いてーーー。しかし、何が起こったんだ?俺がボールを渡すのをミスったのか?片目で見たことで相手の位置が間違っていたのか?それとも、今日あいつらの動きが良くてつめられたのか?)

 

 彼我の考えた通り、彼我がボールを出した瞬間、うまく反応した前島が、下塚に詰め寄りボールを奪い獲ると、そのまま20m位置からシュートを放ったのだ。

 彼我が一瞬気を抜いた事を前島は見てシュートと判断したのだが、彼我の反応速度に驚き目を見開いていた。

 

 (GKの経験は浅いだろうと話を聞いていたが、これは考えを変える必要があるな)

 

 彼我は今度は注意して、ボールをCB(中)合田に転がす。

 そこからショートパスを繋いでいき、センターサークルより少し出た所で待っていたOMFのシジネイにパスが渡るが、3人に囲まれてしまい、身動きとれずボールを奪われてしまう。

 それからの試合展開はレギュラーチームは中盤でボールの取り合いを行い、中盤からU-17の守りに対応できず、まだシュートを撃てていない。

 逆にU-17はカウンター攻撃を行いサイドバックを中心にボールを運んでいくとクロスボールを上げて、何本かゴールエリア内でシュートチャンスを作り、FWの前島、相良にボールが渡ると強引のシュートを放つが、枠を捉えることができず、気がつけば前半ロスタイム。

 ようやくレギュラーチームがU-17のゴールエリア付近でOMFのシジネイがミドルシュートを撃つが、前に待っていたSB(左)但馬にボールが当たってしまい、ラインを割って前半終了の笛が吹かれる。

 前半0対0。

 U-17の動きの良さとディフェンスにかける人数のせいで、なかなかチャンスが作れなかったレギュラーチームとしては予想していなかった結果に、少しだるそうに控え室に帰っていく。

 逆にU-17のメンバー達は活気に溢れ、後半戦初ゴールに期待した顔で控え室に帰っていく。

 両チームの印象が今までと逆であり、U-17監督多田川は大きく息を吐く。

 

 (何度かチャンスを作れて最後シュートまで持っていけている。よし、よし!!)

 気がつけば、右手に握りこぶしを作り歓喜に震えていた。

 

 (やはりこのチームはベニートを頼ったチームだ。このまま彼を抑えれば我々の勝利は目前だ。)

 

 勝利を目前に興奮を抑えられない多田川は、意気揚々と控え室に帰っていく。

 控え室に帰ったレギュラーチームは水分補給と汗をぬぐいながら小田の話を聞いていた。

 

 「相手は予想外にいい動きになっている。あのディフェンスをこじ開けるのは苦労するだろうが、このままいく。何か指示が必要か?」

 「いえ、監督のおっしゃるとおり、今のまま攻めます。必ずゴールネットにボールを突き刺し勝利を」

 

 ベニートが無表情で答える。

 そんなベニートを見ながら周りの選手からは少し不安な空気が控え室に流れる。

 彼はU-17に完全に封じ込められて、前半何もできなかったのだ。

 

 (相当怒ってるな。アレは)

 

 彼我は、少なくなった水分を飲み干す為に、水筒を傾けながら最後の一滴まで飲みつくし、横目でベニートを見る。

 さすがに、アレだけ動きを封じ込められてしまっては、さすがのベニートでも厳しいとは思う。

 U-17のマークはベニートだけに必要以上に行い、2人、もしくは3人が付く。

 ボールを持たない状態でのマーク、ベニートの動きを先読みし合わせて張り付いてくる。

 そのため、走りこもうとした瞬間、前をふさがれたりなど、邪魔が入り彼の持ち味であるスピード、ターンが生かせない。

 ベニートが前半触ったボールのキープ時間なんて1分あるかないかだ。

 それでもどうにか必死で自分からボールをもらいにいこうと無駄な動きに見える行動を繰り返したせいで、ベニートから汗が大量に流れ出ている。

 ベニートに付いたマークの分、ディフェンスに空きスペースが生まれるはずなのだが、オフェンス陣まで一度下がって、ディフェンスに混じってくるので、なかなか前を向くことができない。

 水で濡らしたタオルを頭にかけ、ベンチに座るベニートの背中からどす黒いオーラが漏れているのを見た彼我は後半戦やばいなと思うが、声をかけるか迷う。

 それでも彼の機嫌が悪くても自分が声をかける事で少しでも気分良く、後半戦が臨めるならと声をかけようと口を開く。

 しかしなんといって声をかければいいのか迷った彼我だったが、ベニートの前に立ち今の気持ちを素直に口にする。

 

 「ベニート。期待してるから」

 

 タオルをして表情が判らないベニートの肩がフルフルと振動する。

 その様子に、自分から必死でボールをもらいにいこうとしていたベニートにかける言葉だったのかと後悔し、過度な期待感をベニートに与えて怒らせてしまったかと不安になる。

 

 (やべ、怒らせてしまったか?)

 

 少し顔を上げながらベニートが答える。

 

 「誰に言っているんだ。お前からのパスが来たなら、すぐにでもゴールをこじ開けてやろう」

 

 鼻で笑うベニートの言葉に安堵するが、調子に乗るなと心の中で言いながら期待してるぜと付け加える。

 


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