第二話 ボディバランス
見切りハッシャで始まった話が、気がつくとどういった展開で次書こうかなと考える時間が増えて、ちょっと別の作品に取る時間が少なくなっているなと反省しております。
俺は中町に呼ばれて、半そで、短パンに着替えると、室内にある3軍の練習グランドに向かう。
ここの掟でシューズ着用はしない。
そのおかげで最近足が痛くて仕方ないのだが。
それはさておき、24時間365日、グランドは開放しており、各チームに専用グランドが割り振られている。
そことは別に室外グランドが1つと、砂利でできたグランドがあり、これは来年から使用する予定になっているらしい。
全部でグランドの数が5つもある。
面積はすべて統一されており、なんで5つもグランドが必要なのかわからない。
元刑務所だったこの施設は無駄に広く、話を着た限り東京ドームが10個ぐらい入るらしい。
よく日本のテレビ番組で東京ドーム何個入るんですよ!!的な説明があるがぶっちゃけよくわからん。
ま、それぐらい大きいといいたいのだろうけど、じゃあ逆に敷地面積を数字で表現されてもよくわからんが。
結果何がいいたいかっていうと、よくわからんってのが答えでいいのではと思う。
そんな事をぼ~と考えながら歩くこと約20分。
ようやく3軍のグランドについた。
見ると5人ぐらいいてる。
まじか?
もう22時でそれまで、ほぼずっとで練習をしていたんだけどな。
ふ、若さか・・・。
俺はグランドに入り挨拶をする。
「ちーす。お前らよくやるな。」
「彼我か。お前も中町に呼ばれたんだろ?」
「お、おう。」
何?!俺以外にも中町の奴、他に声をかけてたのかよ。
なぜかちょっとジェラシーしてしまったじゃないか。
中町は他の奴と話をしていて、俺の心が少し痛む。
そんな俺を見て声をかけてきた皆口がうんうんとうなずきながら、肩に手をかけてくる。
「わかるぜ。」
「な、何がだよ?」
「ジェラシーーー。」
「うるせーー!」
皆口を蹴り上げて、ケツを押さえながらニヤニヤして逃げていく。
マジでやめてくれ。
俺は普通だから!!
人数もいてることなので、2対3で守備の練習をすることになった。
GKの重林がいてるので、俺とCBの皆口が守備に回り、中町と、水八だったかな?最近左のSMFをやっている奴が攻めで、練習を開始する。
中町は京都出身で、土地柄なのか独特のリズムを持っているといわれている。
俺にはよくわからんのだが、それがサッカー経験者のリズムをかき乱して、突破するスタイルらしい。
軽快な水八からのワンツーを受け取り攻めようとする中町だったが俺がつめている事にギョっとした顔をして1対1で俺がつめる。
何かを踊るようなステップでフェイントを使ってくる中町だが、ボールだけしかみていない俺にとってどんなフェイントでも意味はない。
ようはボールにタッチする瞬間の反応速度と瞬発力が俺は必要だと考えている。
俺が考えているボールに触るタイミングより”半歩ずらされた”感覚になって抜かれそうになるが、体で当たり、突破させないし、そこからさらにボールを俺が取りにいく。
取られまいと、背中で俺を押し出そうとするが、そこはボディバランスの駆け引きで、俺の得意な部分でもある。
負けるわけにはいかない。
そのやり取りを見ていた水八がパスを要求するが、中町は俺とタイマンに逃げたくないらしく、まだパスを出さない。
皆口も水八にぴったりくっついてマークをはずさない。
練習だしこの1戦だけじゃないと踏ん切りをつけたのか中町がパスを出そうとした瞬間、体を入れ替えてボールを奪う。
安全圏まで走ってこの勝負は俺の勝ちだ。
「おっしゃーー!」
「彼我、ボディバランスがいいよね。」
「あれを取りにいけるのか?」
中町と水八が悔しそうに俺の評価を口にする。
これもぶっちゃけアルゼンチンの奴らのおかげなんだけどな。
中町も水八も、体の押しが弱いわけではないのだけど、アルゼンチンの奴らと比べるとかなり差がある。
中町たちが木なら、アルゼンチンの奴らは岩だな。
どんなに押しても、ビクともしないしそれに加えて腕のプレッシャーが半端ない。
中町からは腕のプレッシャーも弱くて、タイミングさえ合えば、ボールが取れそうな気がしていた。
その辺を伝えると、中町もなんとなく理解してくれたようで、うなずいていた。
今度はちょっと違うコンビでって俺と中町コンビで攻めを行い、皆口、水八が守備で練習を行うことになった。
正直俺の苦手はコンビプレイ。
足には自信あるのだが、どうしてもボールコントロールに難がある。
前にチーム練習の時に一緒だったアルゼンチンのCFですげーうまい奴に日本語でどうすればボールコントロールがうまくなるのか聞いてみた。
ラテン語で返されてもちろんよくわからなかったが、後で通訳の人が来て、毎日ボールを触れ、部屋でも触れといわれていたらしいかった。
通訳の人いわく、奴が今まで誰かにアドバイスを送ることはなかった。
もちろんアルゼンチンのチームメイトにすら、ないと言われ、かなり驚いていた。
まじかと思い、何かよくわからないけど、そんな奴からのアドバイスだしとそれから言われるままに、とにかく事あるごとにボールを触り、ご飯を食べている間でも机の下でゴロゴロと足で触る。
そんな状況を誰も止めはしない。
日本でやってたらまず、行儀が悪いって怒られるな。
サッカーしかやる事がないせいで、どうやったらうまくなれるのかを考えるようになっていた。
洗脳って言われればそうなんだろうな。
どこを見てもサッカーの資料とか、現在のイタリアリーグの状況とか、俺たちが出場することになるリーグ”カンピオナート・プリマヴェーラ”のユース選手の情報とかとにかくここはサッカー情報オンリーだ。
気がつくと中町からワンツーの合図が送られてくる。
結構ゴール間際からのワンツーでうまくパスが決まれば、中町はフリーになりゴールチャンスがうまれるタイミングだった。
疲れていたし余計な事は考えず中町から着たパスを、結構早めでパスを返すと中町が完全にフリーになり、ダイレクトでシュートをする。
左側のゴールネットにきれいに突き刺さり、おおーーと声が上がる。
「彼我、すごい、いいパスだったよ!」
「マジやられたわ。」
興奮気味の中町と皆口がほめてくれてちょっとうれしくなる。
ま、さすが俺とか思っていると、水八から倒す!と宣言される。
いつでも相手になるぜ。とかっこつけつつ、それから1時間練習をして水八から何度か抜かれたりしたけど、課題も少しずつクリアしていけている感触によかったと思った。