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監獄のクラブチーム  作者: 八尺瓊
1年目
26/77

第25話  ユースとの試合 2軍編 その2

 ----------実況解説-------

 ジュン:「ゴーーーーーール!!前半開始早々U-17が失点してしまいました。まだ開始3分を過ぎた所です。喜多島さんどうみますか?」

 喜多島:「油断していたというより、中町選手の強引な中央突破に焦りが出ていたようにみえますね。今までの試合で彼が単独でドリブル突破をした所は見たことがないですからね。しかしゴールキーパーまでかわす鮮やかなシュートでした」

 ジュン:「そうですよね!今日の中町選手の意気込みを感じるシュートでした」

 ----------実況解説 終了----

 

 前半開始は2軍チームからのキックオフで始まる。

 立ち上がりは、普段なら一旦後ろに下げて、少し様子を見てから攻めるのだが、アルバートからボールを受けた中町が急に飛び出し、鬼神のごとく中央突破を図る。

 このオーダーは上杉監督が出したものではなく、中町自身の独断専行である。

 チームメイトすら、呆然となり誰も彼のフォローに回れない。

 しかしU-17は向かってくる中町を止める為に、当たりにいくが軽やかなステップを踏み、クイックターンでかわしていく。

 まるで日舞を舞っているかのように。

 誰もがその華麗さに見とれてしまいそうになるが、ゴールに向かってくる中町を止めないわけにはいかない。

 DMFのダブルボランチの選手が止めにかかる。

 ボランチ二人を交した後にもすぐにCBの選手が追撃をかけてくるが、これも”CBが追撃をかけてくる事をわかっていてあえてそこに移動する事で次にそなえる為のポジショニング”を行い、さらにターンで交す。

 この間、中町は相手選手との接触はない。

 激しく足元で暴れるボールを柔らかく簡単にいなし、前へ前へ攻めていく。

 その形相はまさに鬼神の如し。

 ”必死になる必要がない”はずなのに、必死になっている。

 チームプレイを重視すれば、8割勝てる試合だろうと予測されていた。

 後の2割はサッカーはアクシデントがつき物。

 どんなに実力差があろうと、流れで試合は大きく変わる。

 敵陣内で『当たれ当たれ!!』と叫び声が聞こえるが、それすら耳に入らない。

 中町の見ている景色は、すでにゴールポストと自分しかいない真っ白な世界。

 

 (誰もいないじゃないか。ゴールがあそこにあって蹴りこめはゴールか)

 

 すでに中町はゴール正面のチャンスエリア内でキーパーと1対1。

 突っ込んでくるキーパーを闘牛士のごとく交わし、無人となったゴールにシュートを決める。

 その瞬間、急に周りから景色が戻り、音が耳に入ってくる。

 

 (あれ、僕一体なにを?)

 

 自身唖然となり、ゴール内に転がるボールを見つめる中町。

 後ろから、抱きつかれて自分がサッカーの試合中だと気がつく。

 

 「すげーーー!まじでやっべーーーよ。中町すげー!」

 

 数人に囲まれ賞賛の声が聞こえる。

 センターサークルに戻りながら、自分が何をしたのか記憶を探るが、夢を見ていたように記憶が曖昧で、なかなか思い出せない。

 サッカーの試合をしてボールを運んでいたことすら何かぼやけて、自分がおかしくなってしまったのかと心臓がドキドキしている。

 

 (あれは、ゾーン”究極の集中力”か)

 

 上杉監督が立ち上がり、目を見開いて驚いている。

 中町の独断専行で、いち早くベンチを立って彼の異変に気がつき、いけーーー!と叫んでいた。

 上杉は今まで試合で、大声で叫んだ覚えがない。

 無心だった。

 気がついたら、何度も叫んでおりのどが焼けるように熱い。

 右手も強く握りこまれて、本当に自分が興奮を抑えられなくなっている事に驚いていた。

 

 (俺にもこんな熱い気持ちがまだあったんだな)

 

 思わず笑みがこぼれてしまいそうになるが、気恥ずかしいので気合でしかめた顔を作る。

 開始早々の失点で、パニックになっているU-17達だったが一旦落ち着く為に、全員で深呼吸を行う。

 

 (よし、それでいい)

 

 多田川監督が頷く。

 中町の異変には多田川監督も気がついていた。

 あまり見たことがないが、ゾーンは知っていた。

 中町がどうやってゾーンを引き出したかはわからないが、彼は今、”景色が戻っているはず”。

 まだチャンスはいくらでもある。

 ここで腐るようなら、3軍との敗北を乗り越えていないことになる。

 心に言い聞かせる。

 

 (俺達は負ける為にここにきたわけじゃない)

 

 ボールをセンターサークル内にセットし、U-17からのキックオフで試合が再開される。

 

 改めて、チームメンバーの紹介

 

 2軍チーム

 

 CF(右) 中町なかまち 葉柄ようへい 身長171cm 体重55kg

 CF(左) アルバート・ロペス 身長180cm 体重65kg

 OMF 箕河みがわ 春樹はるき 身長175cm 体重62kg

 SMF (左)セサル・ノゲイラ 身長174cm 体重63kg

 SMF(右)はやし 茉耶まつや身長173cm 体重63kg

 DMF(左)マルニャ・アバスカル 身長176cm 体重63kg

 DMF(右)セルディア・バジョ 身長176cm 体重62kg

 CB(左)下市しもいち 庄司しょうじ身長171cm 体重56kg

 CB(中)皆口みなぐち 雄介ゆうすけ 身長173cm 体重63kg

 CB(右)檀乃だんの 琴伴こととも 身長170cm 体重53kg

 GK 御津島みつじま 修三しゅうぞう身長180cm 体重65kg


 ベンチ

 CF 花形はながた 智明ともあき 身長173cm 体重62kg

 CB アルビアル・ベルグラーノ 身長174cm 体重60kg

 MF 大河たいが 智治ともはる 身長175cm 体重59kg

 MF 水八みずはち 陽一よういち 身長174cm 体重59kg

 MF 倉石くらいし のぼる 身長173cm 体重60kg

 

 

 U-17チーム

 

 CF 早川はやかわ しげる身長 170cm 体重54kg

 水戸ヘエル ユース所属


 CF 井ノいのかわ 誠司せいじ身長180cm 体重69kg

 ザキエル鳥栖 ユース所属


 OMF 曾崎そざき みなと身長169cm 体重59kg

 アルメルス新潟 ユース所属


 SMF(左) あずま 弘道ひろみち身長182cm 体重75kg

 エゼケエル東京 ユース所属


 SMF(右) 末浪まつなみ 博正ひろまさ身長176cm 体重67kg

 エゼケエル東京 ユース所属

 

 DMF(左) はら 勇次ゆうじ身長168cm 体重59kg

 東京アザゼル ユース所属

 

 DMF(右) 大林おおばやし 勝彦かつひこ身長169cm 体重60kg

 聖トモバラエ高校 所属

 

 CB(左) 紅林くればやし 秋矢あきや身長169cm 体重59kg

 横浜ヘロヤセフ ユース所属

 

 CB(中) 深平ふかひら 哲平てっぺい 身長175cm 体重64kg

 名古屋ゲダエル ユース所属


 CB(右) 藤田ふじた 秋友あきとも 身長177cm 体重63kg

 名古屋ゲダエル ユース所属


 GK 清水しみず 清隆きよたか身長177cm 体重68kg

 名古屋ゲダエル ユース所属


 ベンチ

 

 CF 前島まえじま 春友はるとも身長169cm 体重62kg 

 鹿島アルマロス ユース所属 

 

 MF 相良さがら 智明ともあき身長168cm 体重63kg 

 浦和ラグエル ユース所属


 SB(左) 但馬たじま 正也まさや身長172cm 体重61kg

 サハリエル広島 ユース所属


 SB 長橋ながはし とき身長175cm 体重63kg

 エゼケエル東京 ユース所属


 GK 子守もこり 翔太しょうた身長176cm 体重65kg

 横浜ヘロヤセフ ユース所属


 2軍チームはレギュラーチームと、3軍チームの入れ替えで、4人の選手達が変わっている。

 試合にどこまで影響するのか、練習では上杉監督が影ながらフォローを要れ、繋ぎの役目をしている。

 本来、チームメンバーに任せるのだが、2軍のチームで要となる選手がこれと言っていない。

 皆口が周りに気を使える選手ではあるのだが、まだ3軍からあがってきたばかりで、その役目は酷というものだろうと、指示は出していない。

 これから皆口を中心にチームが出来ていくだろうと予測している。

 U-17は3軍との試合で使っていたメンバーを総入れ替えし、前回の試合でベンチメンバーだった選手を中心にチームを構成している。

 多田川監督が目指しているチーム構想は総入れ替えでも勝てるチーム。

 タレント性に依存することなく、どんな状況下でも選手を入れ替えても常に同じパフォーマンスを出していけるチーム作りを目指している。

 そういう意味では、今回の件は非常にいい状況なのだが、それはあくまでも勝てる見込みのある試合でやりたい事であり、今の状況では正直やりたくないプランである。

 試合の話を受けた時にこのプランがあったからこそ、1週間という短い期間で試合を受けたのだ。

 U-17のメンバーは突出した能力はないが、ボールをまわすのがうまく機能さえすれば2軍との試合も一方的な展開になる事はないと思っている。

 中町のゴール後、それを裏付けるかのように、ショートパスをまわして2軍にボールをとられないようにしているが前線に送る事ができず、自陣でボールを回す時間が多い。

 3軍との試合よりも、動きが良くなっている選手達に、手ごたえは感じているのだが、このままでは、ジリジリと体力を使うだけで、いやな予感しかしない。

 後半43分。

 2軍に大きな動きもなく、U-17も自分達の攻めができないまま終わるかに思われたが、急に試合が動き出す。

 U-17のDMF 大林からSMFのセサルがボールを奪うと、そのままサイドを駆け上がるように見せかけてアーリークロスをゴール正面のチャンスエリア手前に待ち構えていたアルバートに落とす。

 チャンスエリアから強烈なダイレクトボレーで、ゴール右隅に決める。

 当然の顔をしてセンターサークルに戻りながらチームメイトからの祝福を受ける。

 しかし、まだ2軍の攻めは終わらず、キックオフでボールを下げたU-17の井ノ川からのパスをOMF 箕河が奪い取ると、そのままフォワードの二人が駆け上がっていき、箕河のパスを前線で待つ。

 前線で待つ二人にボールを送ると見せかけて、右サイドを走っていたSMF 林にボールが渡るとサイドを駆け上がっていき、クロスをあげる。

 ゴール前で待っていた中町がドンピシャのタイミングでヘッドでゴール。

 中町がヘッドで合わせた頃にはすでにロスタイムに入っており、4分のうち後2分残っている。

 審判も口に笛をくわえており、タイミングを見計らっている。

 3点差の中、一瞬の気の緩みがあったのか、U-17の選手達から安堵が出た時、パスミスを拾ったアルバートが中央を突破していく。

 まさに、前半開始早々の中町の再現。

 一度緩んだ気を戻すことができず、中央を抜かれてはいくが、その中で誰もが目を見張る。

 チャンスエリア20m手前からアルバートがシュート体勢に入る。

 U-17の選手達は馬鹿にするな、そこから入るわけがないだろうと鼻で笑った気がしたが、結果はゴールネットにボールが吸い込まれていき、大きくネットに突き刺さる。

 砲弾バレット

 野球で言うところのジャイロボール。

 縦回転のシュートではなく、銃から発射される弾丸の回転と同じ。

 空気抵抗を受けにくく、目で見ると遅く感じるのだが、実際は体感で感じているより速い。

 キーパーの反応速度を狂わせる。

 アルバートがずっと練習してきたベニートに対抗する為の武器。

 それを中町に見せ付けるように、放った事で彼は自分でも気がついていないが、中町のことをライバル(仲間)だと認識していた。

 

最近、監獄のクラブチームを読み返すことが多く、話の矛盾を見つけてしまい凹んでおりました。

今は修正せず、一旦1年目をすべて書き終えてから、矛盾を修正して清書する予定です。

ただ、清書した作品を「小説家になろう」でアップするかはまだわかりません。

ご了承ください。

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