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監獄のクラブチーム  作者: 八尺瓊
1年目
23/77

第22話 ブレイクタイム サバゲー3

 昼食後、俺達11人と、40代6人チーム”ざ・ショクイン”とのサバゲーが始まろうとしていた。

 武田監督に俺達の”サバゲー”はぬるいと言われた。

 手を抜いているように見えると。

 俺は今回のこの”サバゲー”はチームの親睦を深める要素が強いと思っている。

 そこに親近感が湧き、手を抜いているわけではないが、”楽”が混じってもおかしくはない。

 始めてだし、確かゲーム内容は真剣勝負という感じじゃなかったかもと思っている。

 しかしこのサバゲーの意図がまた見えなくなっていた。

 俺以外にも同じような事を考えている奴が大半で、武田監督が考えるこのサバゲーの意図をあれこれと議論している。

 ゲームまで後5分。

 議論は一旦中断して、弾の確認、装備のチェック、人員の配置についてなど、重林が中心となり確認していく。

 3軍キャプテンで、よく周りを見ている奴だとは思っていたし、気の使いどころがうまい奴でもあるので、重林が中心になって話を進めていくのは、スムーズにいくのでいいことなんだが、みんな納得したというか、重林がいうなら大丈夫だろう的な所が出ていて、疑問などの発言数が少ない気がする。

 俺も、あまり意見をいうほうではないし、彼の戦術にも納得している。

 疑問ではないが、彼のもつペースだけに流されていないかが心配だった。

 

 「どうした彼我?」

 

 それを察したのか重林が俺の顔を見て話を振ってくる。

 

 「いや。俺もお前がいう戦術に特に言う事はない」

 「なんか、気になる言い方だな?”特に”って所が」

 

 自分で言っていて、そこまで強調したわけではないが、よく考えると確かに”特に”といわれれば他に何かあるのではと思ってしまう。

 俺がもつこの感情をうまく表現できればいいんだが、あいにく閃きでごまかしていくタイプの俺にとって”考えて”発言するのは難しいんだよ。

 それでも答えないと、空気が重くなっていく気がして、”特に”を否定する。

 

 「いや、本当に深い意味はないんだ。言葉に出てしまっただけだよ」

 「そうか。彼我に言われると何かあるのかなって思ってしまうんだよ」

 「どういう意味だ?」

 「サッカーの試合でさ、彼我っていい発言をするときがあるだろ。最近それを良く感じるんだ。俺がキャプテンでみんなを引っ張っていかないといけないときに、お前の考えに助けられるときがある。それがなんとなく悔しくてな」

 「ぶはははは。考えすぎだ。俺みたいな後ろでこそこそしている奴よりみんなの前で、堂々と意見を言って、ほかの奴から逆に言われて受け止められる奴の方が器の大きさを感じるよ。重林お前はキャプテン向きだと思うぜ」

 「そうかな?」

 

 否定的に答えてはいるが、重林の顔が少しうれしそうだった。

 チーム内の揉め事じゃないけど、意見の食い違いなどあり練習でギクシャクする事は少なからずある。

 そこで、まとめ役で重林が真中に入って中立の立場をとって話を纏める部分を見かける。

 どっちの意見も否定しないし、肯定しない。

 ぶつかった意見の妥協点を見つけたりとかするのが非常にうまい奴だ。

 とてもじゃないが、俺にはそんな芸当はできない。

 頭が痛くなってくる。

 そんな重林の心労を少しでも、減らしてやれるとすれば俺がおとなしくしてることだろう。

 こいつに迷惑はかけたくないなと思う奴の一人だ。

 だから、”重林”だけに今回のサバゲーの話を進めさせるのが気になっていたんだと気がついた。

 最近どうも俺を周りの奴らは過大評価している気がする。

 

 「お前ら、最近俺を過大評価しすぎじゃないか?」

 「過大評価というか、最近伸びすぎなんだよお前が」

 「はぁ?!」

 「ベニート、アビラと一緒に最近サッカーの練習もしているようだし、特にここ最近の練習で動きが日本人臭くないんだよ」

 「そうは言ってもな。あいつら要求高いんだよ。ベニートの奴なんかミスするとすげー怖い顔で、無言で睨んでくるしさ、アビラは意味深な顔でニヤっと笑ってくるし、マジでむかつくぜ」

 「けど、なんだかんだでそれに対応できるわけじゃん?」

 「いや、まだミスは多いし、合わせてもらっている感じもするし、”あいつの本気はこんなもんじゃない”って感じるから、ぜってーそれに合わせてやるって思ってるわけで」

 「愛してるんだな」

 「ぶほ!馬鹿いうんじゃねー!!俺は美人な女性の巨乳とおしりが大好きだ!」

 「筋肉は好きではないと」

 「あったりめーだろ。そんな話するから見ろ、サボイボがこんなに」

 

 腕をまくってぷつぷつしたサボイボを見せる。

 ったく。

 どいつもこいつも、ベニートとの関係を疑いやがる。

 アビラも入って、3人でよくゴール前の飛び出し練習をやっている。

 はっきり言ってあいつらうますぎて、ついていくのがすげーしんどい。

 3軍の中で一番走りこんでいると自負はある。

 元々陸上をやっていたし、長距離、三段跳びなんてやっていたおかげで、スタミナ、体のバネは結構しっかりしている。

 強引な動きにも体が付いてきてくれるのは、すげーサッカーの中でやくに立っているので助かっているが、そのおかげで、まだいけるまだ全力じゃないとか言われて、ヘトヘトになるまでストップアンドゴーを繰り返すから、最近体が悲鳴を上げていようで筋肉の張りがまったく取れない。

 近いうちに、マッサージにいかないとなと思っている。

 むしろこの後に行ってもいい。

 

 「お前らも一緒に着て練習すればいいじゃねーか?」

 「ベニートとか?」

 「おう。何そんなに緊張してるんだよ」

 「いや、そりゃ練習できればうれしいけどさ・・・」

 「彼我それは本当か!!」

 

 重林を押しのけるように勢いよく反応したのはアルビアルだった。

 

 「うぉ?!」

 「ぜひ、今度いつ練習するんだ?」

 

 詰め寄ってくるアルビアルに、手で制しながら顔が近いよって思いながら答える。

 「多分、明日の夜じゃないか」

 「わかった」

 

 すごい鼻息荒く、興奮したようなアルビアルは座りなおし、うれしそうな顔をしている。

 2軍から3軍に落ちたアルゼンチン人で始めてだから、最近アルビアルは同国の連中とうまくやっていなさそうだった。

 そこで、ベニートと練習できるようになれば、何か変わるかもしれないなと思った。

 まあ、人間関係でそこまで面倒みれないし、きっかけはあってもいいかと思う。

 アルビアルを見て他の奴も乗ってくるかと思ったけど、う~んとみんなうなった顔をしていた。

 イヤイヤやっても仕方ないし、とりあえずこの話は後でもいいかと、話題を変える。

 

 「そろそろ時間じゃね~か?」

 「そうだな。40代のおっさん達に負けるわけにはいかないぞ!みんな気合入れて、俺達は勝って、おっさんを走らせてやろうじゃないか!」

 

 そう今、重林が言った内容で、”ざ・ショクイン”とのサバゲーで俺達のキルポイントと”ざ・ショクイン”のメンバーのキルポイントの中で一番、キルされている奴がグランドを走る事になった。

 武田監督がぬるいと言った発言を逆手にとって、重林を中心に監督達にも罰ゲームを受けてもらうことにしたのだった。

 もちろん、罰ゲームの内容も同じ。

 俺達はおっさん達を後悔させてやると意気込んでいた。

 そして、ゲーム会場の施設に入ると、入っただけで緊張感が増した気がした。

 この時点で、すげー何かに狙われているような気がする。

 額から冷や汗が止まらない。

 

 「なんかさ。やばい感じがするんだけど?」

 

 重林に話かけると、俺もだと返事が来て、俺の気のせいじゃないと感じた。

 他の奴も同じような顔をしていて、アルビアルだけが無表情で、頼りになる顔をしていた。

 がゲーム開始直後、アルビアルのさっきより大きい奇声が合った事を付け加える。

 そして午後のゲームが開始され俺達は40代のおっさん達に殺されまくり、危うく罰ゲームメンバーになりそうだったが、武田監督の一言でさらに阿鼻叫喚が始まる。

 「敵は目の前の奴らだけじゃねー。生きるためには仲間も・・・しかし、それは恨んじゃいけないよ。プロの世界は蹴落として勝ち取るものだ!」

 

 そこから、みんなの目が変わり、おっさん達を殺せないなら・・・。という空気が流れ始める。

 結局フレンドリーファイヤーをやった奴はいないが、ゲーム中仲間からの攻撃は気にしないといけないし、罰ゲーム圏内の奴が目が血走っていた事が本気で怖かった。

 罰ゲームを受けた奴は、まあ敗者を晒し上げるのはかわいそうなので、この辺でサバゲーの話は終わるが、本気のプロの世界を少し垣間見た気がして、ちょっとサッカーが怖くなってしまった。

 その話をベニートにしたら、あのベニートが少し表情筋がゆるくなった気がしたがすぐに、鉄の顔に戻りいい経験をしたなと上から目線で答えが返ってきた。

 なんだろ、たまにこいつのケツを蹴り上げたくなる俺は器が小さいんだろうか?

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