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監獄のクラブチーム  作者: 八尺瓊
1年目
12/77

第11話 レギュラーチームとの試合 後半

 彼我はセンターサークル内でボールを転がしながら現状の把握に必死だった。

 すでに後半が開始されて5分。

 その間に2点を追加され、3対1。

 後半開始1分30秒に失点。

 そして、今30秒ほど前に失点。

 そのシュートを決めたのはベニート。

 そこは判る。

 ただ、なぜそうなったのか自分達に油断があったのか?集中力が切れたのか?いやそんな次元の話ではない。

 簡単に”力”の差をはっきり見せ付けられている。

 そう納得するのにかなり混乱しており、今もまだ夢を見ているようだった。

 

 3-5-2のフォーメーションに両チームが切り替えをし

 3軍

 CF 中町なかまち 葉柄ようへい 身長170cm 体重57kg

 ST 倉見市くらみし 俊治しゅんじ 身長171cm 体重60kg

 OMF 彼我ひが 大輔だいすけ 身長169cm 体重56kg

 SMF(左)大河たいが 智治ともはる 身長171cm 体重60kg

 SMF(右)池華いけばな 益雄ますお 身長175cm 体重62kg

 DMF(左)倉石くらいし のぼる 身長172cm 体重59kg

 DMF(右)片磐かたいわ 重道しげみち 身長168cm 体重55kg

 CB(左)水八みずはち 陽一よういち 身長173cm 体重60kg

 CB(中)皆口みなぐち 雄介ゆうすけ 身長172cm 体重61kg

 CB(右)青木あおき 撤兵てっぺい 身長173cm 体重62kg

 GK 重林しげばやし 大成たいせい身長176cm 体重68kg

 

 左右のMFで走れる水八と青木をCBに下げて、とにかく粘りのあるディフェンスをと監督からの指示をうけ、もともとSBだった池華、倉石を中盤のほうへ配置換えをした。

 彼我が前半見せたミドルシュートを生かす為にOMFに変更。

 彼我が中盤から”貯め”を作る役割も与えられている。

 しかし、そんな戦術はすべて、自分達が攻める前提での話し。

 ディフェンスを”無理やり”やらされている状況で、そんな戦術がうまくはまるはずがなかった。

 とにかく、レギュラーチームの本気は驚かされる。

 

 レギュラーチーム 

 CF(左)ベニート・ミロ 身長180cm 体重69kg

 CF(右)ベレンゲル・ニッセン 身長178cm 体重65kg

 OMF 箕河みがわ 春樹はるき 身長173cm 体重62kg

 CMF 川上かわかみ 雅士まさし 身長168cm 体重58kg

 SMF (左)セサル・ノゲイラ 身長173cm 体重63kg

 SMF (右)カミロ・アビラ 身長163cm 体重48kg

 DMF アーロン・オルネラス 身長175cm 体重60kg

 CB (左)下塚しもつか 騰児とうじ 身長169cm 体重58kg

 CB (中)合田ごうだ 憲次けんじ 身長174cm 体重59kg

 CB (右)ディオニシオ・モタ 身長183cm 体重75kg

 GK 荒川あわかわ 修司しゅうじ身長180cm 体重70kg

 

 レギュラーチームの中盤は十字に配置されており、中盤に配置された箕河の動きに合わせて、全員が動きを変えるのだが、その動きはあくまでもベニートがシュートを入れやすくする前提で動いているようで、すべての行動が彼の為のフェイクである。 

 ニッセンがシュートを狙う(もちろん枠に飛んでくる)それを防ぐ重林の行動がわかっているかのようにベニートが詰めて、ヘッドで合わせて失点。

 ゴールライン際で出されたスルーパスをノゲイラが中央で受けるように見せかけて、ベニートが受け、そこからダイレクトでシュートをし2点目。

 レギュラーチーム全員が繋がったような動き、パス回し、そして最後に必ずベニートにボールが絡むように組み立てられている。

 ではベニートをマークすればいいじゃないかと思うが、もちろん3軍選手達はやっているが、厳しいマークもそんなものがあったのかとあざ笑うようにスルリと抜け出し、ベニートが簡単にマークをはずしてしまう。

 30分立った頃にもう一点ベニートに追加されて。4対1。

 GKの重林と1対1の状況を作ってしまい、股を抜かれて失点。

 オフサイドラインから抜け出すテクニックは超一級品。

 どうにも出来ない状況に3軍選手から落胆がもれ始める。

 つぶれかかった3軍の精神状況を何とかいっぺんするために彼我が出したアーリークロスに中町がダイレクトで合わせて1点返す。

 

 「馬鹿な。あんなクロスをあげるなんて」

 

 ニッセンが驚きの声を上げる。

 彼我が放ったセンターラインより少し敵陣のゴールに近い場所から斜めに出されたクロスが綺麗に中町の足元にボールが渡り、後は蹴りこむだけの仕事を華麗にこなした。

 そこから40分ベニートのドリブルから中央を突破され、何とか凌ぐものの、つめてきていた箕河にヘッドで合わされて5対2。

 3軍はもう勝ち負けより、一矢報いたいと、コーナーキックを獲得すると、大河のコーナーキックを彼我が合わせて、5対3。

 残り5分でまだ点が動きそうな試合展開を見せる。

 

 -------実況解説-------

 ジュン:「さて後半も後5分という所になってしまいましたが、どうでしょうか?喜多島」

 喜多島:「う~んこのまま、レギュラーチームが守れば確実にこのままのスコアで終わりそうですが、それはなさそうですね。もう1点追加を考えている様子ですし、しかし、ここまで荒れる後半戦だとは予想できませんでしたね」

 ジュン:「そうですね。後半開始早々の失点から一気につめるレギュラーチームになんとか点数を返しはじめましたけど、この点数をひっくり返すのは3軍としてはかなり厳しいんじゃないでしょうか?」

 喜多島:「難しいと思いますね。ようやく意図した形でサッカーが出来始めてはいるんですが、簡単に崩される場面が見られますからね。まだまだ連携がうまく取れていないんだと思います。」

 ジュン:「しかし、そういう意味ではレギュラーチームはベニート選手をうまく持ち上げていますよね」

 喜多島:「彼がエースだと言うことはわかっていますし、彼が必ず決めてくれると信頼も厚いわけですからね。しかしそれは言い換えれば絶対エースを崩せば、崩壊してしまうであろう諸刃の剣だともいえると思いますね」

 ジュン:「難しい判断ではありますが、勝つ事を純粋に考えれば、当然の選択しともいえますか?」

 喜多島:「そうですね。見ていてエースの活躍は、面白いものもありますし、サッカーはそういったヒーローがいるほうが盛り上がりますからね」

 ジュン:「さあ、後半も残りわずか。どのような展開になるのか注目です」

 -------実況解説 終了-------

 

 秒単位で、めまぐるしい攻防が繰り広げられ、レギュラーチームの攻めを何とか凌ぐとカウンターで前線に送る3軍。

 ロスタイムも約3分と表示され、あまり時間がない。

 右サイドを使ってなんとか、ゴールエリアにボールを送ろうとするが、コースをふさがれて、動きが取れない池華のフォローに片磐が入り、そこから中盤で待っていた彼我に渡る。

 左の前線にオフサイドラインぎりぎりで待っている大河にクロスパスを出して、一気にゴールエリア内に入ると大河はシュートを放ち、GKの荒川のグローブを弾きながらゴールネットに吸い込まれるシュートを決める。

 5対4。

 3軍選手達はあきらめていない。

 残りロスタイム。

 勢いは3軍にある。

 が、その希望は簡単に砕かれる。

 リスタート開始と同時にレギュラーチームがあがり、まるでテレビゲームを見るかのような正確なパスワークで、一気にベニートの足元にボールが運ばれる。

 彼がいるのはすでにゴールエリア内。

 シュートと見せかけてアウトサイドで出されたパスにダイレクトでシュートを決めるニッセン。

 誰もがもうだめだと崩れ落ちそうになったとき、走ってボールをつかみセンターサークルまで持っていく彼我の姿があった。

 

 「まだあきらめるな!終わってない!」

 

 その声に3軍選手たちは震え立ち、そうだ終わってない!と声を上げて、リスタートをする彼我と中町に集中する。

 彼我がボールをさわり、ボールが中町に渡った途端、ホイッスルが吹かれ試合が終了する。

 結果は6対4。

 崩れ落ちる3軍の選手達。

 レギュラーチームも勝ったが、その場でへたり込む選手も少なくなかった。

 3軍だからと言って負けて悔しいのは当たり前。

 勝負の世界に生きている以上勝ち負けは常にあり、上が存在するのも知っている。

 けど、勝ちたかった。

 高校時代負けてへらへらと笑っている先輩達がいて、どこかで、自分も負けていいのかなと思った事もあった。

 しかし、このクラブチームに入って、真剣にサッカーと向き合い、仲間達と出会って勝ちたいと常に思っている。

 負けていい自分なんてどこにもいない。

 目から涙が止まらなかった。

 肩が抱かれて、目が涙でぐしゃぐしゃになっていて誰かわからなかったが、肩を借りて泣いた。

 気持ちも落ち着き、肩を貸してくれたことに感謝を述べるために、相手の顔を見たらベニートだった。

 

 「おまえか!」

 「何だ、肩を貸してやったんだ。礼をいえ」

 「お前敵だろうが」

 「今は違う」

 

 確かにそうだけど、なぜか納得がいかない彼我だったが、急に笑いがこみ上げてきて、腹を抱えてわらった。

 そんな彼我を怪訝な顔で見るベニートが用件を言う。

 

 「試合が始まる前にも言ったが、後で部屋にこい。わかったな」

 「わかったよ。飯も一緒に食うか?」

 「いい提案だ。じゃあ19時に食堂で」

 

 なんだかよくわからないが機嫌のいいベニートに、首をかしげながら、シャワー室に向かう彼我だった。

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