第九話 レギュラーチームとの試合 前半戦
いや~移籍後 初ゴールの香川選手は本当にすごいですね。
今までプレ子とともに試合展開を考えていたんですが、ケーブルテレビでプレミアムリーグを見て「監獄のクラブチーム」の次回展開を必死に考えて、なかなか時間がかかってます。
一瞬未完でもいいかと気持ちが落ち込むことがありますが、実は「監獄のクラブチーム2」の構想もあり、やっぱりプレ子のためにも負けるわけにはいかないので
頑張ります。
2軍との入れ替え戦同様に試合の開始時間は15時から。
朝から軽めのアップを開始し、昼をはさんで、監督との最終確認だけで今回は、メイングランドに立つ。
3軍のユニフォームカラーである青色と黒のパンツに身を包んだ集団の中に、赤と黒のツートンカラーのレギュラーチームのユニフォームカラーが1人混じる。
整理運動をしていた彼我の前にベニートが立つ。
「よう。ベニートどうした?」
「今日試合後俺の部屋に来い」
すごい形相で、体から負のオーラが漂っているかのような雰囲気に彼我も、おされ気味に頷く。
(俺、あの話を誰にもいってないんだがな)
聞き耳を立てていた3軍メンバーからどうした、大丈夫かと心配の声と変な期待感のある声をかけられ、何でもないと返事をする。
ベニートが去って落ち着くかと思ったが、もう一人レギュラーチームの選手が彼我を訪れる。
「貴様がベニート兄貴にくっついている悪い虫と噂の彼我か?!」
「はあ?」
「おいらの名前はカミロ・アビラ。ベニート兄貴の一番の子分だ」
カミロは態度はでかいが身長が163cmと小さく、あまり迫力はない。
確かに子分気質だなと、口には出さないが面倒な奴だと認識した彼我は、適当にあしらう。
「俺がベニートにくっついてる所を見たことがあるのか?」
「さっきだってベニートの兄貴と話をしてた」
「試合前の挨拶をしただけだ。とりあえず試合前だし、お前も戻れ」
「わかった。だがベニート兄貴は俺のモノだからな!」
「わかった。わかった」
カミロを軽くあしらって、整理運動を終えると、一旦3軍で円陣を組む。
「俺達は勝つ!」
「「おう!」」
キャプテンの重林が気合の声を上げるとそれに全員が答え一気に戦闘モードの顔つきに変わる。
全員がポジションに移動している間に今日のフォーメーションとメンバーの発表がされる。
3軍 4-4-2
CF 中町 葉柄 身長170cm 体重57kg
ST 倉見市 俊治 身長171cm 体重60kg
CMF 大河 智治 身長171cm 体重60kg
SMF(左)水八 陽一 身長173cm 体重60kg
SMF(右)青木 撤兵 身長173cm 体重62kg
DMF(中)彼我 大輔 身長169cm 体重56kg
SB(左)池華 益雄 身長175cm 体重62kg
CB(左)皆口 雄介 身長172cm 体重61kg
CB(右)片磐 重道 身長168cm 体重55kg
SB(右)倉石 登 身長172cm 体重59kg
GK 重林 大成身長176cm 体重68kg
レギュラーチーム 4-5-1
CF 箕河 春樹 身長173cm 体重62kg
OMF ベレンゲル・ニッセン 身長178cm 体重65kg
SMF (左)下塚 騰児 身長169cm 体重58kg
SMF (右)セサル・ノゲイラ 身長173cm 体重63kg
DMF (左)川上 雅士 身長168cm 体重58kg
DMF (右)アーロン・オルネラス 身長175cm 体重60kg
SB (左)カミロ・アビラ 身長163cm 体重48kg
CB (左)合田 憲次 身長174cm 体重59kg
CB (右)ディオニシオ・モタ 身長183cm 体重75kg
SB (右)ベニート・ミロ 身長180cm 体重69kg
GK 荒川 修司身長180cm 体重70kg
この発表で3軍チームは驚いていた。
レギュラーチームが試合の中でフォーメーションは変えてくる可能性はあるが、基本のフォーメーションが4-5-1。
しかも、1トップにベニートではなく箕河で今まで、トップ下を勤めいていた選手だ。
ベニートをSBに下げて、サイドを駆け上がってくるのは分っているが、どんな動きをしてくるのかまったく読めない。
意表を着かれた3軍の監督の顔が渋くなる。
レギュラーチームの選手が新しいフォーメーションをどう使いこなしてくるのか、脳内でシュミレーションを取れない。
とりあえず様子を見るために席を立ち、手フリで指示を出す。
サインは「防御に徹して様子を見る」と合図を送り、3軍全員が理解したようだった。
-------実況解説-------
ジュン:「こんにちは。レギュラーチームと3軍の試合を実況します、ジュン・カビラエルです。解説に喜多島 郷さんをお迎えしてお送りしております。さあレギュラーチームと3軍のフォーメーションと選手の配置がかなり変わっていますがどうでしょうか?」
喜多島:「う~ん。そうですね。意図がまったく見えないですね。3軍チームは前回の2軍との試合で、うまく機能したフォーメーションに近い形で、望んできたことは見えるのですが、レギュラーチームでベニート選手をSBに下げて1トップという形を取ってきて、まったく今までと違った戦術で望んできましたよね」
ジュン:「そうですよね。いままでの3-5-2でも十分に機能していたはずなんですが、あえて変えてきた所をみると何かを試しているのでしょうか?」
喜多島:「4バックですが、消極的な意味ではなく、両サイドのSBに走れる選手をおいているので、よりアグレッシブな形を模索しているような気がしますね」
ジュン:「そうですか。そろそろキックオフの時間ですね。今開始されました。まずはレギュラーチームのキックオフから始まり、最終ラインで一旦はパスで繋ぐ」
喜多島:「一気にいくかと思われたんですが、落ち着いていますね。3軍の選手もプレスをかけにいきますが、バックパスでGKの荒川選手が前線に送りますね」
ジュン:「そこから、中盤の青木選手と、下塚選手が空中戦でボールを取り合い、下塚選手がうまくトラップをして駆け上がってきていたベニート選手にパスが繋がる」
喜多島:「本当に速いですね。緩急をつけたドリブルでサイドのディフェンスを抜いていくが、ここは彼我選手のタックルでボールがこぼれる」
ジュン:「ディフェンスに帰ってきた倉石選手がこのボールを取ると、そのまま前線にボールを入れるますね」
喜多島:「すごいですね。綺麗にボールが前線の大河選手の足元に渡りましたね。そこから前を向いてシュート!」
ジュン:「これは枠を超えていきましたね。まずはオープニングシュートは3軍と言うことで、調子のほうはよさそうと見ていいんでしょうか?」
喜多島:「そうですね。3軍の選手はよく動けていますし、レギュラーチームの選手とうまく立ち回っているように見えますので、いいんじゃないんでしょうかね」
ジュン:「ゴールキックから、中央のベレンゲル選手にパスが渡り、これを彼我選手がプレスをかけてボールを取りにいきますね。本当に彼はこの辺りのプレスのやり方がうまくなりましたよね」
喜多島:「自分を中心に、誰がどこに今いるのかを上空から見ているようなプレイの仕方ですよね」
ジュン:「競り合って前を向けないベレンゲル選手は一旦後ろにパスをして、仕切り直すようですね」
喜多島:「おお?アーロン選手にパスが渡ったとたん、ギアが一速あがったか?全体的に選手全員が押しあがってますね」
ジュン:「さあ、すばやいパスで繋いで、すでにボールは左コーナーでカミロ選手が他の選手がゴールエリアに入ってくるのを見ている。ここでベニート選手も入ってきてクロスが出される!頭で合わせてベレンゲル選手がネットを揺らしてゴーーール!」
喜多島:「いや~すばらしいゴールですね。ベニート選手が入ってきた事でディフェンス陣がそちらに目がいった所にフリースペースができてしまい、そこに入ってきたベレンゲル選手が頭で綺麗に合わせてましたからね」
ジュン:「GKの重林選手は一歩も動けてませんでしたからね。前半17分見事なゴールが生まれました」
-------実況解説-------
(やばい。ベニートがあがってきて、どうしても奴をフリーに出来ないし、ディフェンス2人がかりで抑えてないと突っ込んでくるし、その開いたスベースを他の選手が切り込んでくるから、ベニートがボールに触っていなくても仕事をされている状態だ)
彼我は心の中で、あせっていた。
ガードをはずして点の取り合いに持っていきたくても、レギュラーチームのディフェンス陣がそれを許してくれるわけがない。
ベニートがあがるとトップにいる選手も下がり気味でディフェンスに参加せざる得ない。
カウンターも狙えず、うまく前にボールを繋いでも戻りの早さでカバーされてしまい、糸口が見えずに前半30分が過ぎる。
どうにか、1点で抑えているが、レギュラーチームの猛攻は続いており、はっきりと3軍チームのボールを持つ時間が少ない。
その中で猛攻を何とか耐え凌いだ3軍チームが一瞬の隙を突き30M付近でうまくフリーになった彼我にパスが渡る。
「馬鹿な!彼我をフリーにするな!」
ベニートの大声がグランドに響き渡るが、すでにシュート体制に入った彼我がゴールを確認する。
30Mフリーキックでもない状況で誰も入るわけがないと思ったが、彼我が蹴ったボールはゴールを超えていったと思った瞬間落ちながら曲がり、右上のゴールネットに突き刺さる。
その場で悔しそうに、地面を叩きつけるベニートを横に彼我に駆け寄るチームメイトにもまれながら、よっしゃーーー!と歓喜の声を上げる。
「馬鹿な。あそこまで曲がるシュートを日本人が蹴るなどありえない」
レギュラーチームのアルゼンチン選手達は皆びっくりした顔で、彼我に対して意識をする。
これにより、レギュラーチームがやっていたベニートをおとりにスペースを空ける方法を、彼我という存在が脅威となり、同じ現象を起こし始める。
ミドルから撃たれてゴールネットに吸い込まれるシュートを撃ってくる彼我を無視できない状況で、3軍にはもう一人ミドルが撃てる選手がいる。
ゴールエリアより少し離れた場所でパスを受けた大河がグランダーのミドルシュートを放ち、これは止められてしまうが、さっきの彼我のゴールがレギュラーチームの選手たちに焼き付いており、大河も彼我と同じく存在感をアピールする。
ゴールエリア外からの枠を捉えるミドルを撃てる選手に、レギュラーチームは少しずつ前に出れなくなる。
ここでロスタイムに入り、再度レギュラーチームの猛攻が開始されるが、何とか乗り切り前半を1対1の同点で折り返す。
悔しさをにじませるレギュラーチームと、ここまでは想定内だというような顔で3軍チームは一旦控え室に戻っていく。