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 その瞬間、世界の時間が停止したように感じた。

 横断歩道を横切る雑踏も、歩行者用信号の音楽も、車の騒音も。あらゆる音が消失して、あらゆるものが色を失う。そんな世界で、でも彼女の靴が地面を叩く音だけが、唯一の真実のようにはっきりと俺の耳に届いた。

 ――彼女と、擦れ違った。

 どくん、と心臓が跳ねた。

 心の間隙に突風が吹き込み、思考をさらっていく。

 それが彼女であると気付いてから擦れ違いざまの一歩を踏み出すまでの時間が、永遠のように感じられた。

 彼女と会うのは、実に五年ぶりだった。

 だからその瞬間、擦れ違ったのが彼女であると確信したのは直感に他ならない。

 でもその直感は、何故だか外れている気がしなかった。

 擦れ違った瞬間、懐かしい彼女の匂いが五年ぶりに俺の鼻孔をくすぐった。

 身体の奥のどこか遠いところで、昔の彼女の声が聞こえた。

 ――人生ってやつは、隕石みたいなもんだよね。

 ざわっ、と肌の粟立つ感覚が全身を駆け抜ける。

 擦れ違うその一歩を踏み出すまでの瞬間に、彼女との思い出が走馬燈のように頭を巡った。

 これは、五年ぶりに偶然再会した俺と彼女が擦れ違うまでの、ほんの一瞬の物語だ。

 その一瞬はきっと短くて、それでも俺にとっては永遠とも思える一瞬だった。

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