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暗盗の日常  作者: 白木
1/1

始まり

他のサイトなどでは二次創作ばっかり書いていましたが、今回オリジナル作品を書いてみることにしました。

オリジナルは初めてのため至らない所があると思いますが、許していただけると嬉しいです。

では、どうぞ。

 深夜、一つの影が建物の屋根から屋根へと跳び続ける。その足は止まることなくただまっすぐと向かっている。

 その姿は人が見れば怪しいと思うものだった。

 暗闇に紛れるように黒いローブを纏い肩に留めるようにマントを羽織っていた。

 口元を布で隠しているが見えている部分でこの人物が一目で女性だということが判る。

「待て!」

 女の背後から男の叫び声いくつも聞こえてくる。

「ったく、しつこいわね…………」

 いくら逃げ続けてもしつこく追ってくる男達に呆れたような表情を見せれば走る速度を上げ、追っ手を完全に巻くための準備を始める。

 腰に備え付けられた大きめのポーチを漁り中から糸で繋がられた四角い物を取り出す。それを走りながら振りかぶり進行方向に思いきり投げる。

 弧を描いて宙を飛ぶそれはカツンと音を立てながら屋根に落ちる。

 手には物と繋がれた糸を持ちながら走り続けていくが突然とまってしまう。

「はぁ、はぁ、はぁ…………とうとう諦めたか!」

 それに合わせて追っ手の集団も女から少し離れた場所に止まり女を警戒する。

「諦める?何それ?私の辞書に諦めるなんて言葉は無いのよ」

 女は屋根の縁にいても不敵な笑みを浮かべ、まるでここから逃げきれることが判っているかのように見えた。

「ハッ、減らず口を。どこからどう見ても貴様は此処で捕まり死刑になるんだよ」

「あら、裁判もしてないのにいきなり死刑?相変わらずこの町の行政機関は腐ってるわね」

 女はゆっくりと屋根の縁に後ろ足で進んでいき、足を半分ほど縁から出す。

「まぁいい中央に連行する前に、俺らが貴様の身体を楽しんでやるよ」

 ヘッヘッヘッと汚らしい笑みを男達は女の身体を上から下まで舐め回すように見つめる。女の体は暗闇に紛れるように黒いローブを羽織っているとはいえその上からでわ判るぐらい抜群のスタイルをしていた。

「ったく、これだから男は嫌なのよ」

 やれやれと言ったふうに頭を何回かゆっくりと振れば、その顔に再び不敵な笑みを浮べれば両手を横に広げる。

「何をするつもりだ?」

 その行動の意図が読めないのか男の一人が聞く。

「判らない?ここから逃げるのよ!」

 膝を軽く曲げそのまま後ろに一回転しながら屋根から飛び降りる。その行動にびっくりした男達は慌てて屋根の縁に駆け寄り、下を覗き込む…………その瞬間、男達のいる地点が爆発で生じた炎で包まれた。爆発のエネルギーは凄まじく、中心地にいた男達を尽く吹き飛ばした。その威力は傍目から見ても巻き込まれたら即死は免れないほどだった。

「いやー、この爆弾の威力恐ろしいわ…………」

 どのようにして無事に地面に着陸したか判らないが女は爆発の地点から少し離れた場所でその様子を見ていた。

 女が投げた四角い物は小型の手作り爆弾であり、繋がっている紐を引っ張ると起爆する仕組みになっていた。

 実の所、女も内心驚いていた。まさか適当に爆発物を混ぜて作った爆弾があそこまでの威力を発揮するのだ、女は顔には出さないが心の中で軽く慌てていた。

「さてさて、今回手に入れたお宝はどんなのかな?」

 そのまま現場から立ち去るようにゆっくりと歩きながら爆弾を取り出したポーチとは違うポーチに手を入れれば、中から煌びやかな宝石のついた豪華なネックレスを取り出した。

「これは中々いいものを盗ったわね」

予想以上のお宝が手に入ったため、顔に満面の笑みを浮かべれば再びネックレスをポーチの中にしまい、歩きながら懐から通信機を取り出し耳にあてる。

「もしもし?ええ、私よ。ミッションをクリアしたから今から帰るわ。えっ?帰るときにもう一つ盗ってこい?」

通信相手の突然の言葉に彼女は驚きの顔を隠せない。今日のミッションは一つだけの予定だったのに、いきなり予定にないミッションを受けろと言われたのだ。驚かないほうが可笑しい。

「私疲れてるんだけど…………?ったく、判ったわよ行けばいいんでしょ?行けば?」

通信相手の言葉に折れたのか疲れたような顔をしながらもどうすればいいのかを聞けば通信を切り、再び通信機を懐にしまう。

「はぁ、それじゃ行きましょうか…………」

雲が月を覆い隠し、再び月が雲の切れ間から現れた時…………彼女の姿はなかった。

「ふぅ、着いた」

目当ての場所が見える範囲までたどり着いたのか、体を解す様に屈伸をしたり背中を伸ばしたりしている。

「今回の目的はあの屋敷にいる主人の暗殺、並びに屋敷の隠し通路に隠されてるお宝を奪取。その後屋敷に火を付け主人の死を火事による焼死に偽装すること…………。なにこれ凄い面倒くさいんだけど」

改めてこの依頼を受けてしまったことを後悔しながらも頭の中を仕事用に切り替えながら、頭にフードを被り口元を布で覆い隠せば屋根から屋根へと飛び移りながら屋敷に近づいていく。

「…………」

門扉の近くに降り立てば物陰に隠れ様子をうかがい始める。門のところには見張りの兵士が4人ほどいた。

「さて…………」

辺りに陽動に使えるものがないか見渡す、すると少し離れた所にゴロツキが何人か屯っていた。

「あいつらを使うか」

ゆっくりと近寄り、背中を向けている一人の肩をたたきこちらを向かせる。

「あん?なんだよオメェ?」

「これあげるからちょっとあそこにいる門番を引きつけといてくれない?

懐から袋に詰められた金貨を男の手に握らせる、それをみた男たちは驚いた顔をするがすぐに意地悪な笑みを浮かべれば、周囲にいた仲間達と共に門番の処に向かっていった。

「馬鹿ね、本物の金貨なんて渡すわけないじゃない。真鍮と金箔で作ったニセ金貨よ」

門扉の前で揉めている様子を遠くから眺めれば、急いで門番からは死角になっている壁に駆けより、手を反し手首に付けられている小型のワイヤーフックを射出させ、壁の縁に引っかかればそのままワイヤーが巻き戻され体が宙に浮き、縁に向かって飛び出す。

「っと…………」

縁に近づけば縁を掴み、片手だけで縁に上り膝立ちになれば再び辺りを見渡す。

「巡回の兵士は…………10人、それぞれ二組ずつに別れて屋敷の周りを巡回、もう二組は庭の中心と外側を巡回…………最後の一組は扉の前に陣取っていると」

女は警備の配置の良さに手強さを感じていた。このまま塀を伝って屋敷の裏側に回って屋根に飛び移れば簡単だと思うが、警備の兵士達はそれぞれ体温感知ゴーグルを装着していた。

体温感知ゴーグルは登録された人物以外の熱源を感知すると装着者にその熱源の方向を記すという物だった。

「あのゴーグルを誤魔化すのって結構疲れるしお金が掛っちゃうのよね~」

その言葉通りあのゴーグルを一時的に誤魔化す事はできるが多大な苦労とコストが掛かるのが女にとっては痛手だ。ただでさえ暗盗としてある組織に所属しているせいで手に入れたお宝等は全部組織に持っていかれて女の手元に残るのは盗んだお宝の価値二割分しか貰えないのだ。

ここでゴーグルを誤魔化せば現状払える代金が無い為組織に対するツケとなってしまい、これから貰える代金が差っ引かれてしまう。

「んっ?」

考え込んでいれば通信機が小さく振動した。女は嫌そうな顔を浮かべれば通信機を手に取り通信を接続した。

『まだミッションを達成してないの?』

案の定、女の上司からの通信であった。

「えっと~、屋敷の警備の連中が体温感知ゴーグルを装着してるのよ」

『それで?』

「ゴーグル誤魔化すための代金、無しにしてくれない?」

一類の望みを賭けて上司にお願いする。

「…………」

「…………」

沈黙が続く。女は聞こえなかったのかな~?等と思いながらもう一度お願いしてみようと声を出そうとしたとき聞こえたのは…………。

『駄目に決まっているでしょう?任務の途中で掛かった経費等は各人が自分で払う。払えなければ組織からの借金という形で経費を支払う。そういう決まりでしょ?』

女を天から地に叩き落とすには十分な言葉だった。

「えぇ~‼ただでさえさっき行ったばっかりのミッションの報酬貰わずに続けてこのミッションを受けてるんだから無しにしてくれたって良いじゃない‼」

『駄目なものは駄目。あと二時間でミッションをクリアして支部に帰ってこなければ報酬は支払わないとのことよ。それじゃ』

「ちょっ、まっ!」

女が何か言う前に通信が遮断されてしまった。こちらから通信を接続してみようとしても向かうが接続拒否しているのか一向にかかる様子はなかった。

「ちくしょう‼やってやる、やってやるわよ‼やってやればいいんでしょ‼」

通信機を乱暴に仕舞えば小さく声を荒げるという器用な真似をしながらもしゃがみ込んだ体制から立ち上がる。

「それじゃ、いくわよ…………!」

その声とともに塀から飛び降りた。

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