暗闇を歩く少女
お母さんから最後に聞いた言葉は「早く家から出ていきなさい!」だったんだ。
それまでわたしは順風満帆の生活で、別に両親が厳しいと言うわけではなく、お金に困っていたわけでもなく、本当に絵にかいたようなとても素晴らしい家族だった。
そんなある日、お父さんが仕事でミスをしてしまったらしい。お父さんはものを創る関係の仕事をしているのたが、変な物を作っちゃったんだって。その変な物が世の中に出回ったせいで皆がパニックに陥り、死人もたくさんでちゃって、リストラまでされたんだって。
それから数日後、お父さんが妙に真剣な顔で話しかけてきたの。
「戻ってくるからな」
結局お父さんは戻ってこなかった。
数年後、変な物がわたしたちの所にきて、戦争を始めちゃったの。
一つ対大勢。勝敗は目に見えているのに、負けちゃったのは大勢のわたしたちの方だったの。抵抗をやめたわたしたちは、なすすべなく死んでいった。
変な物がわたしたちの家の方へと向かってくる。
怖かったけど、お母さんが一緒だから怖くないもん。
お母さんをギュツと抱きしめる。いつもの匂いがする。とても心地良い
「早く家から出ていきなさい!」
お母さんがわたしを叩いて、壁にぶつけた。
理由が分からなかった。でもすぐに、お母さんはわたしを愛してくれてないのか。そう思った。
せめて、最後くらいはお母さんに良い子だと思って貰いたいから、出ていくね。
「バイバイ、お母さん」
∇▲∇▲∇
光が無くなった暗い暗い夜道を歩く。なにも聞こえない、聞きたくない、でも、自分が生きている証拠の心臓が脈を打つ音、自分の口から発せられる泣き声。
何度も後ろを振り向いた。もしかしたらお母さんが迎えに来てくれるかもしれないから。
暗い暗い夜道はどこまでも続き、どこまでもある。後ろを見てももう暗闇しかない。
歩く体力もなくなって、地面に倒れて、でも、まだ泣いて、涙かこぼれる。
死にたい、消えたい、帰りたい、もう嫌だ。
何度も何度も心の中で唱えるように繰り返してきた言葉。
そんなとき、一筋の光が射し込んだ。暖かく、綺麗な光。
その光は地面に落ちたわたしの涙に反射して七色の光に変わった。
色とりどりの光に最初は眩しくて、目を閉じた。
でも、光はわたしの瞼を透けて、入り込もうとする。
目を開けると、沢山の光がわたしを包んでくれた。もう暗闇なんてなかった。
音はわたしの笑い声になった。
そうだね、もう泣いてなんかいられないんだね。
もう、後ろは見ないで前を向いて進もう。
例えどんな未来でも、笑顔で歩んでいこう。
シリーズものなので、興味を持ってくれたらシリーズを見ていただけると嬉しいです(*≧∀≦*)