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雷電魔術での救世術  作者: ケロっち
魔術学校一の劣等生
3/6

魔術学校一の劣等生②


自作の弁当を開けてみると、外見は平凡かつ個性のない弁当。

弁当箱半分に敷き詰められたわかめご飯、おかずは卵焼きとソーセージ、焼鮭にきゅうりとレタスの浅漬け。


しかし、これでも一応こだわりはあったりもする。

一つは、絶対に揚げ物は入れないこと。

別に健康志向というわけじゃないが、揚げ物はまともに作れば時間がかかるし、下手をすると服に匂いがつく。


前日に作るという手もあるが、そこまでして食べたい訳でもない。

だから、弁当を作り始めてから一度も入れたことはない。

そして、こだわりの二つ目は――

いつものように、自分の弁当について数瞬考えていると、さくやがじぃーとこちらを見てきていた。


「……なんだよ?」

「いや、とうやの弁当ってさー。いつも電気調理器で作ったとは思えない出来だよね。

 私なんか、たまに料理すると魔術使ってもこげこげなのに」


これが、二つ目のこだわりだ。

現代では使われなくなった科学文化の遺物(アンティーク)を使って、俺は料理を作るようにしている。

魔術を使えば、ある程度自分でも力加減できる為、出来が良くなるというのが、最近巷の通説だが、俺はあえてアンティークを使うようにしている。


趣味でアンティークを集めている理由も多大にはあるが、化学時代の器具には独創的なものが多く、料理を単なる作業から一つの娯楽にかえてくれるのだ。

もっとも、こんな説明をさくやにしても、たぶん「えっ、何その無駄なこだわり」とか真顔で言われそうなので、言わずに話を続ける。


「お前の場合は、魔術の出力が大きすぎんだよ。もっと絞れば、きれいに出来るもんさ」

「ふんっ!余計なお世話ですー! 大体、ちまちま出し続けるのって、結構難しいよ?」

「前も言ったじゃねぇか。蛇口を閉める感覚だって」

「雷電系魔術しか使えない人にいわれましても……」

「でも雷電系については他の誰にも負けないつもりだぞ?」

「むぅっ!」


機嫌を損ねてしまったようで、さくやはそっぽを向いてしまう。

整った顔立ちをしているから、すねた顔はそれなりに可愛かったりもするが、あえて本人には言わないでおく。


前、言ったときは何故か真っ赤な顔で殴られ「ばーか!ばーか!ばかとうやー!」と意味不明の罵りを受けたしな。

黙ってわかめご飯を咀嚼していると、教室のドアが叩き開けられ、見知った一人の男子が走りこんできた。


名前はイスラグ=ナイ(通称イスラ)と言って、一応俺の親友(?)にあたる存在だ。

金髪に碧眼で、すらりと長身な外人体系で女性に良くモテる。

実際、何処かの国の有名人だと本人は言っているが、仕事で学校を欠席したことなど一度もない。

たぶん、ジョークなんだと思う。

今日は、何故か腕いっぱいに大量のクリームパンを抱えていた。


「イスラ、お前またなんかやらかしたのか?」

「何も俺はしてないって!そんなことより、匿ってくれ!!」

「あっ、おい」


イスラは言うのと同時に俺の後ろに隠れる。

数秒して、三人の女子たちが教室に乗り込んできた。


「イスラ様~!私とクリームパンを食べる約束忘れたんですか!?」

「イスラ君…逃げるのは良くない…。私と校庭の隅で一緒にもぐもぐ。そして―」

「でてこいイスラァ!あたいとパンが食えないっていうのかい!」


三者三様、態度は違うが確かにつかまったら色んな意味で危なそうだ。

三人の声に縮こまるイスラ。若干震えている気もする。

目が訴えている「なんとかしてくれ」と。

イケメンもこうなると、ちょっと情けなく見えるものだと実感した。

仕方なく、俺は三人を追い払うことにした。


「なぁ、そこの三人組」

『何か用?学校一の劣等生』


なんで、この三人はこういうところだけ息がぴったりなんだろう。

もしかして、三つ子か何かなのだろうか?

というか、さも俺の名前が『学校一の劣等生』であるかのように言わないで欲しい。

いや、まあ劣等生なのは事実だけどさ。


「何か用っていうか……イスラなら、さっき窓から校庭に逃げてったぞ」

『わかった!ありがと!』


短く感謝だけ述べると三人は迷いもなく教室の窓から外に飛び出していく。

一応、ここ二階なんだがな……。

落っこちたかと思っていると、しばらくして三人とも宙を駆け抜けていた。


初歩中の初歩、浮遊魔術だ。もっとも、俺は使えないが。

三人の姿が見えなくなると、イスラが俺の後ろからでてきた。

まだ、若干手は震えているようで、クリームパンが一個床に落ちてしまっていた。


「ふぅ…サンキュー、とうや…」

「お前、相変わらず女遊び激しいなー」

「ち、違う!俺はただ、『クリームパン食べたいなー』って言っただけで!」

「だとしても、何で3人なんだよ」

「そ、それはぁ……」


俺とさくや、無言ながらもジトーとした目でイスラを見やる。

しばらく固まった後、イスラのやつ、目をそらしやがった。

どうやら、思い当たる節はあるらしい。


「んなことより、面白い話題を見つけてきたんだ!」

「ごまかすのか」

「あぁごまかすのね」

「と、とにかく! お前等、ヴァルプルギスの谷の幽霊の噂知ってるか?」

『幽霊?』


こいつ何を言っているんだと思いつつ、聞いていると、イスラは話始めた……。

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