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雷電魔術での救世術  作者: ケロっち
魔術学校一の劣等生
2/6

魔術学校一の劣等生①

『…い…ら!』

『お…こ…!』


声がした。

朦朧とする意識の中、どこか懐かしく、それでいて煩わしい声が聞こえた。

だが、どうしてだろう? すごく懐かしいはずなのに、何故か思い出せない。

モザイクがかかったように不鮮明で、重要な部分が抜けている気がする。


「一体…誰、なんだ…?」


あまりにもどかしく、つい口に出てしまった瞬間、頭に味わい慣れている衝撃が襲う。

それと同時に、意識が現実に引き戻された。


「あれ…?俺、一体何を…?」


寝ぼけ眼をこすりつつ言うと、真正面にまったく特徴のない中年おやじの顔がでてきた。


「何が「一体何を…?」だ! 雷門寺、お前この前も俺の授業で寝てたよなぁ! あっ?」

「へっ?あ、えーと……おはようございます! 柳池先生!」

「おはようって…お前なぁ…今何時だと思ってやがる? 昼前だぞ、昼前! 寝ぼけてるんじゃない!」


柳池は顔に青筋を浮かばせつつ言ながら、歴史のテキストで再度頭を叩いてきた。

今度の方が、若干さっきより強い。

地味に痛かったため、若干目に涙がにじむ。


「いっ! くぅ~!」

「ふん! それじゃあ雷門寺、罰として今のところ読んでみろ!」

「へぇ!? あっ、でも聞いてなか……」

「あん?」

「ひぃっ」


柳池の顔が、ヤクザかマフィアではないかという位怖くなる。

まったく平々凡々な顔立ちなのに、キレると怖い…これが柳池だ…。

実際、すでに青筋がもう一本浮き出ようとしていた。


しかし俺、雷門寺(らいもんじ) 東弥(とうや)は社会がすこぶる苦手だ。

どの位かというと、世界史と日本史の8割がわからないくらい苦手だ。

特に近代史が苦手で、魔術文化の開花とか意味不明。


だが、今はそんなことを言っている暇じゃない。

早く答えないと、あと3発くらい殴られそうだ。

どうしたものかと悩んでいると、不意に服を引っ張られた。

振り返ると幼馴染の十六夜(いざよい) 咲弥(さくや)がテキストのページを示していた。


『24ページの「旧文明と新文明への転換点」だよ、とうや』

『お、さんきゅーな、さくや。恩に着る』


軽い会話をした後、俺は早速読み始める。

横で柳池が丸めたテキストを手でパンパンしている。地味に怖い。


「物質エネルギーを原資として栄えた時代を旧文化、無形エネルギーすなわち魔術エネルギーを原資として栄え始めた時代を新時代という。これらは、別用語で科学文明、魔術文明とも呼ばれ、転換点は現代より約600年前の『ヴァルプルギスの宵』により物質エネルギーが枯渇したことによる……」


ちょうど、ここでチャイムが鳴る。

柳池は時計を見て少し悩んだ後、教卓に戻りながら言った。


「雷門寺、もういいぞ。 これに懲りたら、もう居眠りなんかすんじゃねーぞ。次したら、個人課題出すからな。よし、んじゃ授業はここまで。 俺は行くから、日直黒板よろしくー」


言うが早いかやるが早いか、柳池はさっさといなくなってしまった。

とりあえず、もう読む必要は無さそうだ。

肩をなでおろしていると、さくやが話しかけてきた。


「ったく、とうやは本当に良く居眠りするよねー」

「仕方ないだろ、柳池の授業はガチで眠くなるんだからさ」

「だとしても、授業態度ぐらいちゃんとしとかないと、ヤバイんじゃない~?」

「なんだよ、それ」

「余計なお世話かもしれないけど、あんたテストからっきしじゃん」


さくやの言うとおり、実を言うと俺はテストがすこぶる苦手だ。

いや、違うか…正確には、実技を行うテストが苦手だ。

ウチの学校はテストを魔術の実技で行う場合が多々あるが、俺は魔術の才能がないのか、未だ雷撃系の魔術しか使えないのだ。

だから、実技が他の魔術だったりすると、評価は1になる。


そのせいで一部では「魔術学校一の劣等生」と呼ばれたりもしているようだが、正直俺自身としてはどーでも良いと思っていた。

できないものは、仕方ない。魔術ばかりは才能云々だしな。

だから、普段は気にしないのだが――こと、この幼馴染については言われたくはない。


「何言ってんだ。 お前だっていつも補習組じゃねぇか」

「ふん、私はその分部活とかしてるからねー。どっかの誰かさんと違って」

「へいへい、帰宅部ですいませんねー。 てか、馬鹿いってないでそろそろ昼食にすっぞ」


若干嫌味っぽく返しつつ、俺は自作の弁当をかばんから取り出す。

ここ1年、訳あって一人暮らしをしている為、衣食住は一通り自分でこなしている。

そんな俺の様子を見て、さくやも自分のカバンをごそごそとして、弁当箱を取り出した。


女性にしては少し大きめの弁当だが、本人曰く陸上部に所属している関係上、そのくらいがちょうど良いらしい。

時計を見ると、すでに昼休み開始から10分程度たっていた。

俺たちは、早速自分の弁当に手をつけることにした。


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