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序章 とある時代の記憶


「はぁはぁっ!」


漆黒の空の下、人影一つない街中を一人の少女が疾走していた。

本来なら道を照らし出すはずの街灯も、今は微光さえしない。

灯りを持たぬ彼女には、自らの手元さえ見えない状況だが、少女は全力ではしっていた。


「にげ…なきゃ…!わたし、だけでもっ!」


悲しみと強い決意を抱いた瞳で少女は小さく声を出し、自らを鼓舞する。

しかし、彼女の額には汗がにじみ、鼓動をする心臓が悲鳴をあげていた。

足も、長時間の疾走により膝が笑いはじめていた。


走れたとしても、あと幾許かの間だけである。

彼女自身も、自らの体が限界が近いことは理解している。

だが、立ち止まればすぐにアレに追いつかれることは分かっていた。


「なんとか、しないとっ!せめて、これだけでも!」


焦りを抱きつつ、少女は手に握った物をより強く握る。

その時だった。彼女の右足を違和感が襲う。

重く硬い感触を感じつつ、少女はバランスを崩し転倒してしまう。

地面に打ち付けられた痛みに呻きつつ、振るえる足で彼女が立とうとすると、不意に耳元で声がした。


『鬼ごッコはモウ終ワり?』

「っ!」


出そうになる叫び声をかろうじて押さえ、少女は敵意に満ちた眼差しで振り返る。

すると、目と鼻の先に暗闇でもはっきりと認識できる程の存在感を持ったアレがいた。


「これは、貴方のような化け物に渡す訳にはまいりません!」

『面白イ。なら、コロしてウバウだけ』


暗闇の中、少女の首に鋭く冷たい感触が伝わる。

彼女が死への覚悟を決めた時、ポケットから何かが転げ出た。

それは、地面を転がると少女手に触れ、何であるかを思い出させる。

少女は不適な笑みを浮かべると、ゆっくり言った。


「殺すなら、好きにしなさい。このアリシア、第一皇女として覚悟はできております。ただし、貴方もタダでは済みませんよ? この玉を、貴方も知らないわけではないでしょう?」

『ソ、そレハ!? だが、それデハお前もタダでは済まナイゾ』

「覚悟の上!覚悟はできていると言ったはず!」


強い意志のこもった眼で言うと、少女は玉をより強く握る。

玉は圧力が強くなるにつれ、発光しながら湾曲し、やがて空間をも曲げはじめる。


そして、完全に潰れた瞬間、空間ごと二人を飲みこんで消え去った。

物語は、これより数百年後。

科学文明が滅び、魔術文明が全盛期を迎える時代から始まる。

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