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リセットボタン【hack to brain】-5

5分後-

『やっぱり、誰も見てないって言ってたよ。一応、確認で公衆電話の104でオルタネートスイッチの咲人に繋いで下さいって尋ねたら、そんな会社はありませんって言われてたよ、これ、やっぱり物理法則が歪んだのかな?』

『もう一ついい?ここは何処?』

昨日と今日で分かったことがある。この病院は作り物なのかもしれない。前の隔離閉鎖の自宅のように、窓は開かない。昨日、窓の外を一日中眺めていたが、駐車場や道路には車はあるが、まったく動いていない。病院の外の道にはまるで誰もいないくらいの静けさで誰も歩いてる影すら見えない。わたしの推測ではここの病院がまるごと閉鎖空間なのではないか。

『だから、ここは東大付属病院だよ。フツーの病院、それ以外何もないよ』

『窓の外おかしいんだけど、どうなってるの?窓の外に人はいないよ、これの何処が普通なのさ』

『だから、ここは東大付属病院だよ。フツーの病院、それ以外何もないよ』

那津子はまた同じことを言った。

わたしは窓に視線を向けた。動いていなかった道路や駐車場には何一つおかしな事はなかった。車も人も動いてるし、窓に手を掛ければ、簡単に開いた。

『お姉ちゃん、大丈夫?』

『ごめん。ちょっと頭が痛くなって…。まだ本調子じゃないみたい』

当然と言えば当たり前か。この記憶はまだわたし、違う人のモノだから。それ故に怖い。私の精神、記憶、人格は何処に行くのか、天国か地獄かまたや消滅するのかもしれない。

『私こそごめんね。物理法則なんか歪んじゃいけないよね』

『一ついい。葵さんってどんな人だったの?わたしはさ、まだ頭の中は違う人だからさ。』

信じたくはないが、わたしはこの葵って人に憑依しているのだから。

『んー、以前のお姉ちゃんはとにかく明るい人だったよ。一人称は【あたし】で、他人の心にズカズカと入ってくる、そんな人だったよ』

で、最後に一言。

『でも、今のお姉ちゃんも良いよ。優しい感じがしてて』

彼女は目に涙を浮かべていた。以前の見知った姉を失った彼女にとっては辛いのだろう。

『大丈夫、わたしはもう何処にも行かない。性格や人格が変わったとしても、わたしは那津子のお姉さんだから。』

わたしは妹を抱きしめた。


【わたしは三日後、葵になった。】


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