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リセットボタン【hack to brain】-28

ミナコのアパート-自室

『へぇーこいつは驚いた!!ADAは何でも可能にする機材だとは。これならアキバのラジ館でパーツさえあれば、外付けハードウェアは完成するぞ、私の魔力を注げば、君はスーパー魔法少女だ。でも、君は一度そのADAの完成品を持ってたような口ぶりじゃないか。』

『ああ、つい最近まで持ってたさ、ミラーエフェクトつって鉛で鏡のように、攻撃出来たり、攻撃を逆に弾き返したりするADAをな。だがな、クラウドとか言うバカ野郎のせいであたしのADAは奪われちった。テレビで見ただろ。名古屋支部事件をさ。この事件はあたしと妹のミナコが首謀者なんだ。けど、ミナコはクラウドのロケランの爆風で死んだ。あたしはミナコの敵討ちがしたい』

名古屋支部は壊滅した情報は昨日ニュースで流れていた。大勢の犠牲者が出たらしい。

その戦闘で妹さんを亡くしてしまったナナコは今どんな心境だろうか。

『すまない。野暮な事を聞いて。』

『慰めはいいって。そんな辛気臭い顔すんなって。あたしが魔法少女になれば、死者だって甦らせる事が出来る神になれるんだぜ』

ナナコの言葉は強がりが混じっていてで今にも泣きだしそうな顔をしていた。

『ナナコ、お前がしたいことは平和な日常だろう。妹さんと二人で笑って暮らしたい。ただそれだけの事だろう』

『ああ、そうさ。あたしたちは強盗犯に両親を殺された。そんで、ミナコはそれがトラウマで喋ることができなくなった。だから、名古屋支部の最深部にある何でも願い事を叶えてくれるケュネイアの鹿の首を手に入れて、両親を甦らせてまた四人で暮らしたい。だから、名古屋支部に襲撃をかけた』

彼女には今まで何を背負って何に希望を抱き何を考え生きてきたんだろう。その辛さは本人にどれだけの苦しみを与え続けたのだろうか。

『私のクローンはね、作ろうとしたのは、私の息子だったんだ。私が22歳の時、丁度、息子が2歳になる頃で、難病にかかり死んだ。私の妻はそれを嘆き悲しみ、ビルの屋上から飛び降りた、せめて息子だけでも甦らせようとして、当時の最新の医学で人クローンを作るつもりだった。だけど、当時の医学では人クローンは作れなかった。失敗に失敗を重ね、最後には院長に見つかり、お終いだった、それから8年、この有様だ』

『お互い似たもの同士か』

ナナコは悲しそうに呟いた。

『私のアパートに来るか?ここよりは大分、居心地がいいはずだ。そのノートPCに書かれている資料も私の最新のパソコンなら、そのADAの解析も随分楽になるだろう』

『咲人さん、すまなかった。さっきはインチキ詐欺師だとか言って。じゃ、これはご厚意に甘えて、住まわしてもらうよ』

一瞬、ナナコは私の子供のように思えた。

『ところでナナコは今、高校生かな?』

いきなり無粋な質問だっただろうか。でも、返ってくる答えは悲惨なものだった。

『あたしは今は学校にすら通ってないさ。義務教育を去年終えて、ブラック企業でこき使われた。まったくこの世はどうかしてる。貧富の差ってやつを思い知ったさ。一か月ほど前にその会社をADAを使って倒産させた。資本主義なんてクソ食らえだ。』

『まったくだ』

『とか言う咲人さんはお金持ちなんだろ。』

『まぁな、でも、ムショにぶち込まれた時はマズイ飯食わされ、ボロ切れ布団で寝かされたときは、最悪だったさ。今じゃ金持ちの渋谷の高級アパートの最上階だがな』


2014年2月11日18:00 –ナナコSide

わたしは今、咲人さんの車で咲人の高級アパートに招待された。

『こいつはスゲーな!!これが咲人さんの自室か!シャワールームもキッチンも高級感で溢れている。それにしてもここから見る夜景はとても綺麗だ。』

わたしはミナコにもこの景色を見せてやりたい。切実に心からそう思った。全てを失った私だけが見るのは悲しすぎる。悲しすぎて大粒の涙が頬を伝う。

気づいたら、咲人さんは私の手を握っていた。

『大丈夫かい?私もこの景色を見るたび、思い出すよ。今はもういない妻と息子の事をね…。』

『ありがとう。』

わたしは次の瞬間、両親とミナコを失い、初めて声を上げて泣いた。その度に、咲人さんはわたしのことを慰めてくれた。



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