リセットボタン【hack to brain】-27
2014年2月11日15:07 –ナナコSide
あの戦いのから何日経つのだろう。あたしは掃除屋だか何だか知らないクラウドとか言うイカレ野郎にADAを奪われ、唯一の妹であったミナコを失い、秋葉原のボロアパートで壁に寄りかかり、途方に暮れていた。
『ミナコ、何で死んじまうんだよぉ、約束したじゃねぇか。この下級階層の私たちでも、いつか世界を見返してやるってよぉ。ふざけんじゃねぇ。何で先に逝っちまうんだ。あの時、私も死ぬべきだった。クソッタレがぁぁぁぁぁぁ』
飲みかけのチューハイの缶を窓ガラスにぶつけて、ガラスが飛び散る。
『うぜぇ、何もかも。ADAがあったならあんな野郎、何回でもぶちのめしてやる』
ふと横を見たら、西なんとかとか言うインチキ臭いタイムマシンの講義の招待状があった。
裏には【お姉ちゃんへ、誕生日おめでとう。こんなモノでごめんなさい。】
『ミナコが…。そういや今日が私の誕生日だったっけ』
あたしは初めて理解できた。本当の悲しみが。このチケットはミナコが残してくれた形見だ。
あたしは理解した。私はまだ死ぬべきじゃない。あのバカ野郎をぶち殺して初めてミナコの敵討ちが出来る。
あたしは立ち上がると、ミナコのパソコンが起動していることが分かった。
ミナコはADAの作り方を自力で調べていたのが分かった。ミナコは姉のナナコと同等に戦えるように。
これで分かったことがある。ADAはゲーム機のCFWのように自作出来る。
だが、しかし、ADAは魔力を注いで、初めて使い物になる。
そのミナコが作ろうとしていたものはミラーエフェクトとはまったく違う。一般的には魔法の類のモノ。つまり、完全無敵の魔法少女になれる神ですら凌駕する技術だった。その中には死者を甦らせる術式も詳細に書かれていた。それらはこの世の理、全てを完全否定する内容だった。
『魔法少女ねぇ。そいつであやつをぶっ潰せってことで良いんだな。サンクス、ミナコ、ぜってーアイツをぶっ殺して、ミナコを取り戻す。まずは魔力提供者もしくは資源を探さないとな。ありがとな、感謝しても仕切れないぜ』
あたしは立ち上がり、ペットボトルに入った炭酸水を飲み干して、アパートを出た。
『まずはアキバで部品調達してくるかねぇ、でも、金がねぇ、大家さんにアパート追い出されんのも時間の問題ってか(笑)』
あたしはアキバの散策に出かけた。
2014年2月11日16:02 –咲人Side
私は今日は模造刀を買いにアキバの武器屋本舗に来ていた。武器屋本舗にはコレクションとして鑑賞する刀や剣、サーベル、銃、等が売っている。だけど、それらは全て模造刀だったりモデルガンであったりする。
私は日本刀を買うために来た。今年の元旦にリセットボタンと偽った意味もないただのボタンを売り付け、一千万ほど稼いだからなるべく高級品の模造刀を買い、私の高級マンションの部屋にでも飾ろうかと、思っていたら、いきなり大声で声をかけられた。高校生だろうか、まだ幼い顔付きをしている。
『おい、テメー元旦の筑波山でインチキ商売してた詐欺師だろ?』
店内にいる人は一斉に私を見る。
『えーと、君はどちら様でしたっけ?ここで話すのはマズイから裏路地で話そうか。』
秋葉原裏路地-
『えーと、君は誰だい?私は詐欺師ではないよ。だって、そのボタンの機能には説明してない。つなりこの武器屋本舗の品物と同じことですよ』
『だからさー、それがインチキ商売だって言ってんの!!ちゃんと法律理解してるアンタさー。こっちとしちゃあ警察突き出してもいいんだぜ!!一体いくら稼いだ訳?テメーは一個二万でそのボタンを売りさばいた。日の出観光客はざっと500人いやそれ以上いたよねぇ』
どうやらこの少女は私に圧力を掛けて、何かを聞き出そうとしているのは分かる。
だが、その少女の目的がはっきりしない。
『分かった。君の了見を聞こう。金なら半分くれてやってもいい。どうだい?』
『金なら有り難く貰うよ。だけど、今聞いてんのは、アレは魔術の類のモノじゃないかって話だよ』
一瞬、私の胸にズキンと来た。私の魔眼は体内生成された魔術の塊だからだ。
『しかも、登山コースの入口が燃やされて跡形もなくなってた。不思議だと思わない?』
チっ、マズイことになった。私の能力がバラされるのも時間の問題か?もうこうなったら開き直ろう。もしかしたら、このガキ女から金をむしり取る事が出来るかも知らないからだ。
『なぁアンタ、魔法少女に興味はないかい?アンタは前は科学者だったらしいじゃん。黒崎咲人、東大病院の地下室でクローンを作ろうとして、医学界から追放された。昔テレビでやってたぜ!!』
『つまり、私がその魔法少女とやらの実験体の製作に手伝って欲しいと?』
こいつは大当たりを引いたかもしれない。これで私は昔のように実験を再開を出来る。
魔法少女とか面白そうだ。
『そういうこった。契約完了、拠点はアンタの稼いだ金で作って欲しい、ちょいと家に来な。いいもん見せてやる』
『一つ聞いていいかい。君の名前は?』
『佐々木ナナコだ』