リセットボタン【hack to brain】-23
『何に使うんだコレ…』
と、見るたびに思う。電源をどうやって付けるのかすら分からない。つか、何一つスイッチがないのだ。
『またまた可笑しな事に巻き込まれてしまったよーですね、ははは』
もう笑って誤魔化すしかない。だけど、捨てるには勿体ない。
もしかしたら、この世の神様つー人が私の記憶を三日間で作り上げ、このヘンテコな機械で、波瀾万丈な人生を送れと囁いてるのかもしれない。
とりあえず、煙草を吸いたいからエレベーターでいつものように屋上まで移動する。
『ふぅー、やっぱり、サイエンティストには、煙草と屋上と、そして、白衣ですねー』
私の煙草の銘柄はマイナーなもの、誰も吸う人もいない様なものが好きだ。
このヘンテコ機械を手の中でくるくる回して、煙草を吸い、暇を潰すのが最近の楽しみでもある。
堅苦しい講義を開くのも悪くはないが、毎回毎回同じような事を喋っていると飽きが生じてくる。
ふと、空を見上げると、いつも通りのみえ映えしない青い空と白い雲が広がっていた。
月曜の空。
火曜の空。
水曜の空。
木曜の空。
金曜の空。
土曜の空。
そして、日曜の空、週の始まり空、だからといって、そのほかの週となーんも変わり映えしない空。
もし、神様がいたら曜日ごとに違う空を見せてほしいと人は願うかもしれない。
月曜は水色の青で、火曜は火のような赤い空、水曜は透き通った水の色、木曜は木の色だから緑色かな、金曜は黄金の金色で。土曜は土の色で茶色、日曜とかはお日様の色だから、空一杯に太陽あるとかとか。って暑すぎだろ。
それぞれの曜日に意味があるとすれば、その曜日ごとにデザインを趣向したっていいんじゃないかっ、と思う。
だけど、曜日と空の色はあいにく関係なさそうだ。
でも、少なくとも空には多少なりともバリエーションに富んでいるのかもしれない。
時間で決まる空の色やわずかな雲の動き、曇り空に、雨だって降るし、雪だって降る。
『さてと、圧死はもう一仕事残ってるんだけ。明日の講義のプリント作り、あーあ、めんどくさい、明日はいっそ休講にしちまうか。それならお暇な学生さんも喜ぶだろうしさ』
私は煙草を持ち歩き灰皿で火を消し、原宿でブランド服でも買うことにした。
『んじゃ、いってくんねー』
当然ながら屋上には誰もいない。
と、思って、ケータイでいつものようにニュースを見た。
『隔離地域が爆破だと…。でも、カンケーねーから、どーでもいいや』