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リセットボタン【hack to brain】-2

『お姉ちゃん、葵お姉ちゃん!!起きてよ、お姉ちゃん、お姉ちゃん。』

 微睡みの中、わたしは思った。わたしは確か妹、いや家族すらいない。その私のために泣いている方は誰なのだろう。決定的なのは、わたしの名前は【葵】ではない。ええとわたしの名前が思い出せない。

『何故わたしのために泣いてるの?』

わたしは彼女に問うた。

『え?意識が戻ったの!!良かったぁ。ボーリングしてたら、いきなり葵お姉ちゃんが意識不明で倒れてびっくりしたよ。ちょっと先生呼んでくるから待ってて』

『はい』

まったく意味が分からない。ボーリングで意識不明何のことだ。

わたしは一つ深呼吸して、今置かれている状況を整理しようとした。確かついさっき赤いボタンを押した。まだ、そこまではいい。重要なのは起きたら、季節と場所が入れ替わっている。わたしがボタンを押したのは冬だったはず、それなのに何故、こんなに暑いのだろう。ふと、目線を逸らすと部屋の温度計が30℃ある。おそらく夏だろう。次は場所について考えてみることにした。確かアパートの部屋にいたはずだったが、ここは病院のベッドの上である。おかしなことに私の名前が思い出せない。葵と言うのは自分の事だろうか。

しばらくしたら担当の医者らしき人がやってきた。

『葵さん、これからいくつか質問します。』

『はい。』

医者の質問は私が記憶喪失ではないかと言う簡単な質問だった。物の使い方までは分かったが、自分の記憶、最近起こった事、名前、それらが全て抜け落ちていた。診断結果は医者の言い分では軽度の記憶喪失だそうだ。重度の患者は、物の使い方、それらの名前すら覚えていないらしい。わたしは一か月ほど意識不明の状態に置かれていたようだ。けれど、、赤いボタンを押すまでの記憶は所々覚えているが、それについては話さなかった。それはどうしても話してはいけないと元の名前の人格者が囁いたからだ。

『まぁこれは一種の記憶障害で、普段の生活を送っていれば一か月程度で記憶は元に戻りますよ。

『まぁこれは一種の記憶障害で、普段の生活を送っていれば一か月程度で記憶は元に戻りますよ。精神に関しては検査入院という形で進めていきましょう。身体に関しては一か月も寝込んでいるので筋肉が衰えているので自由に身体を動かすには、一週間程度リハビリをしないといけませんね』


‐病室-午後八時-

『私は那津子、望月那津子、葵お姉ちゃんと同い年の双子、困った事があったら何でも頼っていいからね』

どうもしっくりこない。わたしは一体何者なのだろうか。

『ありがとう。わたしの名前は葵か。そして、あなたがわたしの妹さんの那津子さんですね。』

『そうそう♪お姉ちゃん思いの優しい妹、那津子さんです、って姉妹なんだから【さん】付けしないでいいよ、明日また両親と来るからね、じゃおやすみ』

『分かった。那津子、じゃまた明日』

 那津子、望月那津子、やはり聞いたことのない名前だ。望月葵、それも私の名前だがわたしの事なのに分からない。この世界が本物で、赤いボタンの世界は夢だったのだろうか。医者の判断によると、すぐには退院させてもらえないらしい。意識が戻っても身体が動かせないため一週間程度のリハビリが必要らしい。まぁそれは仕方ないと自分でも思う。ボーリングで意識不明で記憶喪失。おまけにボタンを押す前の謎の記憶。どう考えてもおかしい。本当に一か月も意識不明なら検査入院で二、三日は早すぎる。目を閉じたら、また元に戻るだろうか。そんな事をぐるぐる考えていたら私は眠りに落ちた。



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