リセットボタン【hack to brain】-12
2014年1月1日6:30咲人Side
私は今、茨城県にある筑波山と言う山の頂上で大勢の群集と初日の出を見るため、朝っぱらから懐中電灯一つで登山をした。無論、夜は登山道は真っ暗で登れないように鉄格子で封鎖されていたが、私の右目の魔眼【ファイヤーエンブレム】で鉄格子は鉄クズ一つ残らず燃やしておいた。
誰もいない登山道を前にして鉄格子に向かって『燃えて無くなれ』っと。
正直、私は右目の魔眼はまったく使えない。私は戦闘者ではない。私は立派なセールスマンだからだ。燃やす能力なんてクソッタレだ。
筑波山にはおそらく31日の大晦日に来た連中だろう。何故、私は初日の出を見に来たかと言うとずばり【金儲け】のためだ。
自分で言うのも何だがリックサックに入ったこのインチキボタンを1個2万で1000個売り付ける算段だ。
どうやってこのインチキボタンを売りさばくと言うと、左目の魔眼【ヨコシマの神様】でどんなものでも、私の売るものを虜にさせると言うセールスマンに相応しい目だ。
だが、インチキボタンとは言え、このボタンたちには魔術が宿っている。人生やり直しボタン、商品名はリセットボタン。半径1センチと言う小型サイズだ。その名の通りボタンを押したら他人にすり替わって、人生がやり直し出来るというものである。っと言う設定で、無論、そんな機能などは付いていない。ただのボタン、いや、スイッチかな?
私は日の出のために訪れた観光客の群集に売り付けるのだ。
私に金が全てのこの人生に何があるというのだ。諭吉さんは私の神である。
6:49になると一斉に歓声が上がる。初日の出の幕開けである。
私はリュックサックの他に担いできた風呂敷と【リセットボタン売ってます】と書いてある看板をケーブルカーの前に風呂敷と一緒に立てて、商品を並べる。ちなみにこの看板は右目の魔眼で書いた文字で見た人は絶対買いたくなると言うモノだ。
『いらっしゃいませ!これは如何ですかー!!!』
と、大声で叫ぶ。
群集はこちらに視線を向け、なんだなんだと、こちらに来る。
『おっ面白いもん売ってるじゃねーか、買ってやる。いくらだ?』
と言うおっさん。
『あら良いもの売ってるじゃない、私たちも記念に買いましょうよ』
と言うオバサンたち。
『二万高いよー半額に値引きしてよー、いやもっと値引きしてよー100円くらいぃぃぃにぃ』
と言うクソガキもいた。
『これはこれは化学の技術とはすごいもんじゃ。余に50個売ってくれ』
と言う金持ちジジイもいる。
『これは面白いじゃないか!!筑波山の土産に家族分買ってくか』
と言う一家を支えるオヤジ。
『これで俺もスネークできるかな、買ってやろう』
と言う意味不明な人。
『わいどん、これがあれば江戸の都は安楽だばい』
と言う時代錯誤の西郷もどき。
と言う訳で、だだのボタンは完売した。クソガキども、貧乏ジジイなどに値引きされた分もあるが、大体、約一千七百万円程度、売れた。
言っておくが私は嘘を付いた覚えはない看板に【リセットボタン売ってます】と書いてあるだけで、そのボタンの機能については一切合切、説明した覚えはない。
『諭吉さんガッポガッポ、これで今年は安心して暮らせる、暮らし安心クラシアン、なんてな♪』
その時の私はこれから起きるとある事件に巻き込まれるとは思いも知らなかった。