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リセットボタン【hack to brain】-9

『思い出した。』

私は此戸葉に聞こえるようにそっと呟いたあと、此戸葉に告げる。

『私は君の母から此戸葉を助けるために未来からやってきた』


1時間後-2:30-此戸葉Side


『大体こんな感じかな。』

相葉君はわたしの母親の由紀さんから聞いた話を有りのままに話してくれた

わたしには母親しかいない事、未来視と言う能力を持っている折月家の話、それを狙って機関の起こした意図的な事故、民間自衛組織を偽った機関ボルケーノオーシャンの研究所に培養液で保存されてるわたしの脳、未来視の原因である赤龍の事、相葉君はそれを排除するため由紀さんにブレインハックマシンで、わたしの脳内世界に記憶を送り込まれたこと。赤龍を殺せば現実世界は書き換わる、と。

おそらく此処は現実世界にある脳を動かしておくために、機関よって此戸葉の心を生かすために造られたまがいもの世界だろうとわたしは理解した。

わたしは深呼吸して、一息付いて、やっと出た言葉はこうだった。

『お母さんに会いたいな。その赤龍を倒しちゃえば元に戻るのかぁ。』

わたしは現実世界で脳だけしかない存在なのに、落胆よりもすべてを聞いてさっぱり爽快な気分だった。

『良かった、これを話したら、此戸葉は落ち込むと思ってたよ。此戸葉のお母さんはいい人でクールでカッコいい人だよ。ブレインハックの最後の最後まで私を心配してくれたんだよ。』

『ところでやっぱりリアルでもわたしと相葉君の関係ってコレだった?』

わたしはは少し不安気味でもあり少し楽しそうに、今度はわたしから右手の小指を立てる。

『そうだよ。私たちは中学で出会って、同じ高校に入ろうって此戸葉が言って、私の受験する高校はワンレベル高くて、必死で此戸葉と私は勉強会開いて、ようやく高校に受験に受かった時、初めて両想いだって気づいてね。あの時はホントに色んな意味で楽しかったよ(笑)』

わたしは嬉しいようで、彼の言葉が胸に突き刺さり苦しかった。だって、わたしはその記憶さえ思い出せずにいるから。だから、いっそう現実世界に戻りたいと、深く願った。

『此戸葉、大丈夫?』

彼は心配げにわたしに声をかけてくれる。一番辛かったのは九年間と言う長い時間を費やして、わたしを救おうとしてくれた相葉君の方なのに…。

わたしの目からどうしようもなく涙が溢れてきた。

『ごめん、ごめん、相葉君、ゴメン、ごめん…』

その時、彼はわたしの唇に…口づけを。相葉君の柔らかい感触がわたしの唇にダイレクトに伝わる。わたしは動揺しているためか手首をビクっと震わせる。

どちかかというわけでもなく、自然にお互いの唇が離れる。

『此戸葉が泣いたときはいつもキスで元気づけてたから。』

彼はふっと目を逸らし、顔を赤らめ、照れ隠ししながら一言呟いた。

『うん。少し元気出たよ。だから、もう一度♪』

わたしは相葉君の唇に口を当て、何度も何度も、優しくて温かい口づけを交わした。

何度も…何度も…優しくて柔らかい感触を。

わたしはこの時が永遠であるようにと願った。このまま、時間が止まればいい。そう願う。だけど、時間は無情にも過ぎていく。だれど、一つだけ分かったことがある


【わたしたちはここから歩き出す。相葉君のためにも、お母さんのためにも。】




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