幻
私は心の中で、叫んだ。
ごめんね。
ごめんなさい、おばぁちゃん!!と。。。
サヨは金魚なんかじゃない。
私は嘘をついた。
確かに、金魚は生きてる。それに、おばぁちゃん家に預けている。
が、本当のサヨの正体を誰にも隠してる。
これだけは、誰にも言えなかった…。
『本当?岸野先輩にも?』
「あたりまえじゃない」
「やっぱり、サヨって金魚以外でも他にいるんだね」
「え、何のこ……」
「もう、嘘は止めよう。わかっているんだ」
「どういうこと!?」
「サヨが人間じゃないって…こと……」
私とサヨが少しずつ、遠ざかってゆく。
「…夢か」
目を開くと、私は机の上で腕を伸ばしながら眠っていたのだ、という痕跡がある。
夢か…よかった。
本当に。。。
私は、あの後、どうなったか知ってる。
私の夢だから。
『なんか、うなされてたわよ』
「うそ!?」
『うん。夢の中で私の名前、読んでいた」
「うん…夢の中でサヨの名前、出てたから」
『どんな…夢?』
「言いたくない」
『そう、言いたくないなら…しょうがない』
「…ごめん」
『何で謝るの?言いたくない時だって、誰にもあるわ』
サヨが大人に感じた。
私と同年代くらいだ、と言っていたが、私からしてみればサヨは、もう、大人だった。
そんなサヨに間を置いて。
「ありがとう」
これで、ちょっとはサヨみたいに、大人に近づいたかな…。