夢
「もう…冬も終わりね」
この切り出し方は、何故だか、笑ってしまいそうになった。
だって、なんだか良くドラマに使われてる
「私達、もう終わりね」
って言ってるシーンと似ていたからだ。
まぁ、それは置いといて。
つい、この間まで真っ白だった道は、雪溶け季節だった。
『次は春ね。雪の次は、花が一面に…』
「あ、そういえば!!」
『なによ?大声だして』
「もうすぐで、私達が出会って、一年…経つ頃よ?」
そう。
私達が出会ったのは、春休みが明けた頃。
交通事故になった私、サエと、私の中のもう一つの声の犯人、サヨが出会った。
もう、あれから一年か…。長かったようで、短かったような。
ま、そんなものなんだけど。
サヨと出会って、可笑しな思い出しかないや。
「サヨ…」
「サヨって…誰?」
後ろから、男の人の声がした。
振り替えると、クラスの男子が立って、こちらをじっと、見ていた。
「あ…こんにちは」
「うん、こんにちは。で、サヨって誰?」
この男子は、影が薄いというか、目立たない感じの人で、だからと言って、存在が薄いというわけでもないそんな子だ。
そして、はぐらかそうと話を流そうとしたが、ナチュラルに流れを逆流されてしまった。
しかたない。
「うん。実は…サヨっていうのは去年まで飼っていた金魚なの…」
という風に切り出した。
「へぇ、その金魚が死んじゃったの?」
少し、躊躇いながらも質問は止めなかった。
私はその質問には、首を横に振り、下を向いて、そっと口に出した。
「…おばあちゃんのところに預けてあるの」