10;人
『果たして、本当に呆気ないものだったのかしら…。私は……そうは感じなかったわ』
『年に一度しか降らない。空中に舞っている時に、輝いていて…落ちると共に姿を決してしまう…。私にとっては、呆気ないよりも……穿かなく感じるわ』
急に、哀しいことをいうサヨの言葉を耳にし、また空を見上げた。
「サヨのいう通りかもね。…私もわかるわ、サヨの気持ちが…。なんでかな…」
『同じ、人間だったからじゃないかしら?』
サヨは少し、声のトーンを落としていった。
「人間…だっ…た…?」
『そう。私は、自分がどういう人間だったか、どうなったか、全部…記憶にあるわ』
「それは…哀しいこと?」
『そうね。その人、次第だわ。私は…哀しい…過去があるから忘れてしまいたかった』
「そう…なんだ。でも、私は記憶が…残ってほしい。記憶が失くなるって、哀しいことだと思うわ。それに、きっと、私はその時、後悔すると思うから…」
『………』
「サエ?また、独り言?」
「え、あ、うん」
「もう、中に入ろう?」
友人は、校舎へと向かっている。
「私…もうちょっと、ここにいたいわ。先に入っててくれない?」
軽く笑い、また空を見上げる。
「うん、別に良いけど」
そういうと、学校の中へと姿を消した。
―――――ボフ。
真っ白な雪の中へ、体を倒した。
「サヨ…?」
『ん?』
「ううん、なんでもなぁ〜いっ!!」
私は雪に包まれながら、くすくすと笑った。
サヨ…本当はね。
私達、友達だよね?って、聞こうと思ってたんだけど…いいや。
今、楽しくて、幸せだから。