表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エトワール  作者: 都望偲
3/7

多嘉恵さんの誕生日

ある週末、四人組の客がやって来た。

「ここよ。やっぱり素敵ね。『美しい自然の中に建つ、ヨーロッパの古城のようなオーベルジュ』って情報誌に掲載されてたけど、本当ね。」多嘉恵さんの声だった。

「しかし、やっぱり遠かったね。」

「あ~、腹減った!」

「圭助、場所をわきまえろよ。」

この会話でおわかりのとおり、四人組の客とはシェアハウス「キャベンディッシュ」の面々だった。今回は、多嘉恵さんの誕生日を祝うために皆で出かけて来たのだ。男三人で金を出し合うから、どこでも好きなとこを選んでいいよ、と言ったところ、「嬉しいわ!実は、前から行きたいとこがあったのよ。」と多嘉恵さんは、とある情報誌を出してきた。そして早速、ここが予約されたのであった。


オーナー兼シェフという綺麗な女性に案内されて、四人は館の門をくぐった。

門を入ると、館の玄関まで続く広い庭があって、平たい石を敷き詰めた道が車寄せのように丸くアーチを描き、アーチの真中が玄関前に接近していた。そして、その丸い道路に囲まれた芝生の真中には草花に囲まれた池があり、その中心には水瓶座をモチーフにした像が設置されていた。

「馬車で来たほうが、よかったね。」圭助が冗談を言った。


玄関を入ると、天井が二階まで吹き抜けになった広くて丸いロビーになっており、右手に壁に沿って広い階段が流線形に二階へとのびていた。階段にはぬくもりのある色合いの花柄のカーペットが敷かれていた。壁には、様々な空と水を中心に描いた美しいヨーロッパの風景画が、美術館のように並べて飾られていた。

そして、そこここの壁に取り付けられた、アンティークのランプのような照明が、薄橙色の柔らかい光を室内に投げかけていた。

「ロマンチックねえ…。」多嘉恵さんがうっとりとして言った。

その館の内装は、ヨーロッパ調のアンティーク家具に囲まれたお洒落で落ち付いた雰囲気で、どこを切り取っても、まるで歴史あるイギリスの貴族の館のようだった。


大きなシャンデリアが天井から釣り下がった広い食堂の中央に、ゆったりと置かれた一台の丸テーブルは、マホガニーでできており、縁にぐるっと彫刻がなされていた。テーブルの下は真中で一本の太い柱に支えられていて、柱の途中から三つ又に広がる三本の足は、猫足になっていた。テーブルの彫刻された縁から内に向かって三センチ程のところから、円形にガラスがはめ込まれ、ガラスの下からテーブルの木目がきれいに浮き出ていた。

テーブルの周りには、四脚のアンティークな肘掛け椅子が置かれていた。これらの椅子もマホガニー製で、猫足だった。座面と背もたれの布部分は、緑茶のようなグリーンに光った糸で縦縞に編まれていて、その縞模様が濃淡のコントラストになっていた。

そして、丸テーブルの真ん中には黄色や橙色、薄オレンジ色の薔薇が、それぞれ濃淡のコントラストも美しく飾られていた。


そんな素敵なダイニングテーブルと椅子のセットに案内され、四人は若干緊張して座った。

「お洒落過ぎて、緊張するよ。」神原が、襟を正した。

「もっといいスーツで来ればよかったよ。」芳田も背筋を伸ばした。

運ばれて来た料理も本格的で、料理には無頓着な男達にもわかるくらい、素晴らしいものだった。店のオーナーの薦めにより、料理にあわせて二種類のワインが選ばれたが、どちらも料理によく合って美味しかった。

そして最後に、シェフの手作りバースデーケーキが持って来られた。これには多嘉恵さんも大感激だった。

男三人は、非常に照れながら、下手くそな「ハッピーバースデイ・トゥ・ユー」を歌った…。


食後、二階のテラスに出て、コーヒー、紅茶などをそれぞれ飲みながら、夜空を眺めた。

「美しい星空…。」多嘉恵さんが、ウットリと言った。

今夜ばかりは圭助も、多嘉恵さんを茶化さなかった。

最終電車に間に合う時間ギリギリに、四人は「オーベルジュ・シェル・エトワール」を出てタクシーに乗り、電車に乗り継いで「楽しい我が家」へと帰っていった…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ