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黄泉縁〜咎が縁を結ぶ〜  作者: 紡縁永遠
一章怪奇休夏縁〜壹❛死神の神隠〜
4/28

縛縁に呪は逃さず

 「下がってろアズミー」

 「無理だよ」

 「悪いが回収させてもらう」


 木刀に対して、刃のある大鎌、まともに受けるのは得策ではない。

 横ふりをしゃがんで回避、そのまま突くが避けられる。鎌の柄に木刀をぶつけ鎌を止める。そのまま回し蹴りをする、効果はないようだが、何か違和感を覚えたのか、動きが鈍る。


 「お前、その体」

 「悪いが俺自身体のことは理解してないんでな」

 「そうではない、どうやって生きている」

 「さあな、」


 意味のわからない問答にできるだけ距離を取ろうとするが意味はない。すぐに詰められ鎌を振るわれる。が切られはしなかった。


 「どうなってる、こうも魂が縛られているものは初めてだ」

 「縛り…あ〜あれかな?」

 「多分」


 島の伝承に触れに呪われた。それが魂を縛っているのだろう。しかし死神は関係ないのか?行方不明者は毎年おきてる。だから死神の神隠伝説が生まれたのだ。


 「ちょっと待て、知ってるのか?」

 「その前に、毎年ここに来ているか?」

 「今日が始めてだが」


 毎年起きてるはずの神隠し、消息が絶たれたものは死神が、原因ではないのか。では何が人を消しているのだろうか、人を消す伝承はいくつかあるが時間が断てば戻って来る物ばかり、死神の神隠以外はそのうち戻ってくるのだ。


 「…どうやら事情がありそうだな、名は?」

 「黄泉傀偽」

 「アズミー・ペクテラック」

 「随分と難儀な名を背負ってんだな」

 「言霊か、まぁ、うん、そうだな」


 言霊、力がこもった言葉をさし、呪にもなる。そして名は一番短い呪だ。

 傀偽、この文字は使われない。


 「お前の名は」

 「さあな、冥府は名で呼ぶことはほとんどないから、忘れたよ」

 「じゃあ魂結死強(たまゆいしきょう)、名がないと不便だろ」

 「言霊を知りながらよくもまあそんな名が出てくるな、まぁ、いいか」


 目の先に赤い糸が結ばれる。


 名前をつける、納得してくれたようだ。

 死神を表すにはいい名だと思うが、言霊を知るものからすれば嫌なものか。

 矛を収めた死神改めて死強の今後を聞く


 「ふむ、俺の目的はこの島にある、不安定な魂の回収、それが現世での仕事だ、呪が解けるまで共にいさせてもらう」

 「いいのか?」

 「島の伝承がどういうものか知らないが、怪異に呪われるのは普通の人生じゃないだろ、もうそんなものを見るのは嫌なんでな」

 「そう…だな、普通が一番だ、宿に案内するよ。そこに俺達の過去を知るものがいる」


 結縁庵を目指し来た道を戻る。帰ったらまた文献をあさることになるな。

 何かに集中すると人は判断が遅れる。今後を軽く思案して近づく陰に気ずかない。


 「傀偽!」

 「?!っう」


 飛び出してきた怪異、と言っても弱い部類の攻撃を腕で受け、鮮血が飛ぶ。


 「お前、腕が」

 「はあっ、」


 木刀を振るい怪異を吹き飛ばす。さすだけで清めの効果が聞き、消滅する。

 腕から垂れる血はやがて止まり、あとすら残らず消える。これが呪い、どんな怪我を負っても瞬時に回復する、不死の呪、頭が潰れても、高所から落下しても生きることが出来る。これが己が人であることを否定してくる嫌なものだ。


 「……なるほど、具体的な呪いはそれか」

 「傀偽もそうだったの?」

 「ああ、…あれっ?『も』ってことはアズミーもか?」

 「うん、私も傷の治りは早い」

 「なるほどつまり、不死を特にが俺の仕事だな」


 怪異との遭遇で説明することが一つ省けた、宿に着けば親父が行方不明だった時のことを話してくれるだろう。



―――――――――



 「怪我がないならと言ってもすぐに治るかお前は、そうだな、不死が直るなら問題ない」


 自身の息子に心配はなかった鬼願だが死神を連れてくるのは予想外だったようだ。


 「ただあの日のことか、島民の視点からすると、二人は、三日三晩行方不明だった。この島の神隠しは主に二つ。一時的に行方不明になりそこの記憶だけ抜けているというもの、もう一つは、帰ってこないもの。この二つ」

 「一時的のものは八月の終わりまでには帰ってくる。そして夏に集まる怪異の夢語が影響するんだろうな」


 島に伝わる多くの伝承、島の者たちが時期や内容を見て分割した物だ。


 「どういうこと?」

 「この島には伝承が多いからな。ただわかっているこは夏に関わることが多いんだ」

 「そして二人が行方不明になったのは夏の七月終わり、ペクテラック家が移動するときだな。そして死神の神隠は死神が、魂を求めてさらうからという仮説があった。だから逃げた二人は死を奪われたと思っていた」

 「何度も言うが死神にそんな力はない」

 「俺たちからすれば日没から夜明けこのくらいだったはずだ」

 

 傀偽がとアズミーの話を改めて聞きながら整理する。でてきた問題はあの日まともに見鬼が作用しなかったことか、それ以外にも月日が立つにつれ島の見鬼が増えていたことか

 三日間いなかった、二人。見つけられた時は鮮血に染まりアズミーは目を押さえながら、狂気的な悲鳴を上げていたことか


 「ひとついいか」

 「どうした死強」

 「なぜ呪で不死になったのに眼は回復しなかったんだ」

 「不死の発覚が、一年たった後、見鬼での生活に慣れたころに島の怪異と戦闘したときだった」

 「私は大きな怪我をしなかったからわからないけど、フランスで怪我をしたときだったから」



―――――――――



 傀偽の部屋にうつり死強と傀偽は整理して深まった謎、そして決意する心中を話す。


 「謎が深まるばかりだな、でも」

 「ああ、」

 「「この夏にけりをつける」」

 「それでひとつ仮説を立てた」


 話の内容、父親の仮説、それらをひっくるめてでてきたもの、


 「この不死の呪いは島の伝承に踏みはいった者を逃れられないようにするため。だから二人揃ったことで、この夏に全ての伝承が引き起こされるかもしれない」

 「そうか、眼を閉じろ」


 眼を閉じる傀偽の瞼に死強の手が触れる。目を開けると


 「これは」


 久しぶりに戻ってきた《見る》ちから、色鮮やかな景色、見鬼の視る力では無く眼球で見る事が出来ていることにと暫し感傷に浸ることになる


 「ありがとな」


 そう一言をはっし一日を終える

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