八話 癇癪3
怒りで我を忘れそうになるが、ここは一旦落ち着いて冷静にならないと。これは少し怒りっぽい私が身につけた処世術だ。こういうときこそ冷静になる必要がある。
状況をまとめると、相手の魔物の数は私と同数程度。でも相手にはこっちより多い上位種がいるように見える。ダンジョンにDPを使わなかったせいで守りに回ってもそれほど強くない。だが、この状況で私には明確な有利がある。それはエキストラスキルだ。私のステータスを改めて確認すると、
「ステータス」
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|ーレベル 1
|-HP 10
|-MP 4
|-ATK 7
|-INT 2
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|-スキル
|-叫び声 レベル1
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|-エキストラスキル
|-癇癪
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|-称号
|-小さな町の女王
|-エキストラスキル
|-癇癪・・・味方の魔物全体のATKを一時的に上げることができる(1日1回)
このエキストラスキルを使ってATKというのを上げて、相手と同じように待ち伏せすれば私の勝ちは確定だ。さっき攻めた時は待ち伏せされて一気に倒されたから使う暇が無かったけど、今回は違う。
攻め入ったガーゴイル達の足が遅くなったのを見るに、相手のエキストラスキルは攻めてくる相手のやる気を削ぐものだと思うし、今回の攻勢では使えないはずだ。この勝負勝てる。
私は魔物達にニ階の洞窟にぎゅうぎゅう詰めで待ち構えるよう指示する。やられたことをやり返してやる。
相手の魔物達はそんなことも知らずに悠々と一階の草原ダンジョンを歩いて進んでいる。その様子をダンジョンの機能を使ってみていたが、なにか様子が変だった。みな、目が血走り表情がおかしいのだ。
「なにか薬でもやってるのかしら」
いや、そんなことできるはずがない。こんなこと起こせるのは一つだけだ。
「ナビゲーター、あれってエキストラスキルの影響よね?これじゃあ二つエキストラスキルを持つことになるじゃない。一人一つまでって説明を受けたわよ」
「え!?ちょっと確認するね、、、あ!今原則一つに制度が変わったみたい。相手はイレギュラーの称号持ちだって、運がないね〜〜」
そんなの完全なズルじゃないか。運がないで片付けらたらたまったもんじゃない。後で正式に抗議してやる。
でも、これでエキストラスキルの件はイーブンだ。待ち伏せしているだけこちらが有利のままだ。
相手はそのまま魔物達が待ち伏せしている扉の前まで来た。魔物には敵は入ってくればすぐさま攻撃するよう命令してある。相手は自分の魔物全員に突撃するよう命令したようだった。
私はすぐさまエキストラスキルを発動する。一度試したことがあるが、「一時的にATKが上がる」
の一時的は三〇分だった。今回のような戦闘では十分な長さだ。相手の魔物達が雪崩のように私達の魔物が待っている部屋へと突撃してくる。そこから先は乱戦だった。私のガーゴイルと相手の小人の魔物が対峙し合い、上位種とみられる魔物が後ろから魔法を打ってくるが、ハイガーゴイルにはあまり効いていない。ただ、前線にいる大きな巨体を持つ魔物がやっかいだった。こちらが有利なはずの前線を支えている。
ひどい乱戦だった。相手の魔物は倒せているが、こっちのガーゴイル達にも被害が出ている。そんな状況が続いており、このままでは結果がわからないかと思えたが、よく見ると私の魔物達が怯えている。狂気につつまれた表情で永遠と攻めてくる相手の魔物に恐怖していた。さらに、突然戦場に光が現れる。正確には前線で戦っていた小人の魔物が光り始めたのだった。光が収まると、そこにはさっきよりも強靭な肉体を持った魔物が立っていた。その魔物の強さは以前とは比較にならないほどで、あっという間に均衡していた前線は相手有利になる。
「なんなの、なんなのよ!こんなのズルよ!みんなズルばっかり!ほんとになんなのよー!」
彼女は最後の足掻きとばかりにスキル「叫び声」を使うが、自陣の方が彼女に近い分影響を受けていた。叫び声をうけてガーゴイル達が一瞬硬直する。このことがきっかけで前線が崩壊した。
前線にいたハイガーゴイルがやられると後ろにいたガーゴイルも瞬く間に倒されていく。
気付けば私は相手の魔物に囲まれていて、囚われていた。私の持つ魔物は一匹もいない。
私はもう堪忍袋の尾が切れた。
「なんでよ!なんでよ!どいつもこいつ役立たずばっか!どいつか1人くらい役に立ったらどうなのよ!」
そう叫んでも、命令を聞いてくれる魔物はもういなかった。そこを今回攻めてきたダンジョンマスターが横切ろうとしていることに私は気づく。
「あんたもなんなのよ!私の住民を奪ったと思って、取り返しにいったら逆に私のダンジョンを攻めてくるなんて正気じゃ無い」
「あなたの魔物、目がイッてて何かおかしいし、私の魔物より強いなんてゲームとして成り立ってないわ」
散々文句を言ったが、そいつはなんと私を無視してけっしょのある部屋へと向かっていった。そして、そいつがダンジョンを統合したことで私は死にはしなかったけど、そのダンジョンマスターの下僕となってしまったようだった。
私は今、檻の中に入れられている。その檻に鍵はかかってないが、私はこの檻から逃げることは出来ない。なぜなら、「この檻の中で生活しろ」とそう命令されているからだ。檻の中でぼーーっとしてると、小人の魔物に催促されて檻の中を出る。私にはもう一つ命令されたことがある。それはダンジョン畑を耕すこと。なんとこのダンジョン畑、一日で作物が育つのだ。だから、一日に何回も作物を耕すための労力が必要になる。ゴブリン達は手が器用でないため、畑を耕すことができないらしい。だから、代わりに私が耕している。今は、作物を掘り起こしているところだ。ゴブリン達がやると、作物を傷つけてしまうため、私にやるように催促してくる。言われた通りジャガイモを掘り起こすが、これはどう考えても少女がやる作業ではない。でも、不思議と掘り起こす体力はあった。ダンジョンマスターになった影響だろうか。元、だけど。
ジャガイモを掘り起こし終えると、他にも捕まっていてあのダンジョンマスターニ襲われそうになっていた女性が手料理を分けてくれる。全部、私が作った作物でできている。不思議と食べていると達成感があった。農業する人生も悪くない、かも?