五話 成果
突然そんなことを言われて俺は困惑したが、そういやそのつもりで監禁していたんだと思い出した。
隣には今回の騒動を起こしたあの女がいるが、殴られた影響でおそらく気絶している。
改めて自分からそう言った女を見てみると、胸や尻の出るところは出ていていい女だった。
女は少し怯えた表情でこちらを見てきている。
向こうは俺がそれを求めていると勘違いしてここにいるが、その勘違いを正す必要はない。
正したところで、この状況を利用しようとする大人達にいいように扱われるだけだ。
俺は静かにその女が入っている檻の中に自分も入った。
俺が近づくとビクリとその女は震えた。
俺はそのまま胸に触れようと手を伸ばしたその時、
「...ちちくりあって楽しそうですねー」
突然話し声がして俺も驚いたが、隣の檻にいたあの癇癪を起こす女が起きたらしい。
「...」
「...」
せっかくの雰囲気が台無しだった。
この女を一発殴られただけで檻に入れておいたのを後悔した。どうせならもう一発殴っておくようにゴブリンリーダーに命令しておくんだったとさえ思った。
とはいえ、もう壊れた雰囲気は戻ってこない。
「...この2人を監視しておけ」
俺は近くにいたゴブリンにそう命令すると檻から出た。
今日はダンジョン攻略の一仕事を終えた後だ。
その後処理はたくさんある。それに取り掛かるつもりだった。
俺はそのまま結晶がある部屋へと戻っていった。
まずはナビゲーターに聞くことがたくさんある。
「制圧したダンジョンはどうなるんだ」
「お答えします。制圧したダンジョンは制圧した方のものとなります。所持していたダンジョン、魔物、ダンジョンポイントが制圧した方へと移行します。ダンジョンマスターも貴方の思いのままです」
「ん?思いのままというのはどういう意味だ?」
「貴方のどんな命令にも従うもいうことです」
なら檻に入れておく意味はないな。結晶のあること部屋の隅っこにでも置いて「動くな」と命令しておくか、いや...
「ダンジョンポイントで作成できるものの一覧を出してくれ」
「言葉になさらなくても頭で思い浮かべれば問題ありません」
ナビゲーターはそういうがこれは気分の問題だ。口に出した方がすっきりする。
目の前に現れた半透明な板をスクロールしながら自分が探しているものを見つけ出す。
「あった」
それはダンジョン内に作れるダンジョン畑というものだった。
「ダンジョン畑の効果を説明してくれ」
「はい、ダンジョン畑とはダンジョン内でのみ使用可能な特別な畑のことです。育てる作物は通常育てる場合より10倍早く作物が育ちます」
「よし」
期待した通りの効果だった。あの女にはダンジョン畑の世話をするよう命令しておこう。
地味にDPでゴブリン共の食べ物を賄うのは負担だったんだ。これである程度節約できる。あの女の扱いにも困っていたところだしな。
もう一つ気になっていたことをナビゲーターに聞く。
「一日の終わりに得られるDPはこれで増えたのか?」
「はい、増えております」
やはりダンジョン攻略にはメリットがたくさんある。その分攻められるリスクがあるわけだが。増えたDPの収入を得たら、ダンジョン畑の作成を行おう。あとは日付けが変わるのを待つだけだな。他に聞くことは...
「ダンジョン間の魔物の転移は行えるか?」
「行えません、魔物の転移は同ダンジョン内のみです」
ダメか、これはしょうがない。歩いて魔物の戦力は移動させるか。
他に聞くことは、特に思いつかない。俺は日付けが変わるのを待つことにした。
そしてその時が来る。
ダンジョンポイントが1105DP俺に振り込まれた。
思ったよりDPが増えていない。評判が悪かったみたいだし、あの女の担当地区に住んでいる人がある程度逃げてしまったからだろう。特に問題はない。
早速俺はダンジョンの改装を行った。
|-ゴブリンダンジョン
|-1F 洞窟迷路
|-2F 直線洞窟
|-3F 迷路洞窟
|-4F檻、ダンジョン畑、洞穴
|
|-610DP
|
|-所持魔物
|-ゴブリンリーダー1体
|-ゴブリン 12体
|-ゴブリンシャーマン 5体
|-オーク 2体
ダンジョン畑を作成するついでに(突貫工事)になっていた迷路洞窟を完成させる。
まだ610DPのこっているが、それは今回のダンジョン攻略で消耗した魔物の作成に当てることにした。
600DPを使ってゴブリン達を補給する。
|-ゴブリンダンジョン
|-1F 洞窟迷路
|-2F 直線洞窟
|-3F 迷路洞窟
|-4F檻、ダンジョン畑、洞穴
|
|-10DP
|
|-所持魔物
|-ゴブリンリーダー 1体
|-ゴブリン 60体
|-ゴブリンシャーマン 10体
|-オーク 3体
これで戦力は攻める前より、ゴブリンリーダーがいる分プラスだ。向こうのダンジョンに残してきた戦力もある。ひと段落ついたことだし、俺は周りのダンジョンの様子をスマホで調べるが、特段変わったことは起きてないようだった。
とりあえず、命令を下すために檻の部屋へと俺は向かった。
「おい、ダンジョンマスターの女」
「...なによ」
「ダンジョン畑で作物の作成をしろ、種は渡すし食事は最低限出す」
「なんで私があなたのいうことを聞かなきゃ...あれ、いや!」
口ではそう否定しても体は命令を実行するために立ち上がっていた。これが負けたダンジョンマスターの末路か...気をつけないとな。
「体が勝手に...ちょっと、何私に命令してるのよ」
「あとはそのうるさい口も閉じろ」
「...」
これで静かになった。...あれ、俺ってこんな荒っぽい性格だったっけ...
何か違和感がある、がそれが何か分からない。これはエキストラスキル「狂化」の影響だろうか。だとしたら「エキストラ」とついてるのにデメリットしかないクソみたいなスキルだな。
あれ、また口が悪くなってしまった...まあいいか。
そういえば、この女が俺の魔物の様子が変だとか言っていた。魔物にも影響があるとすると、この女の魔物より、俺の魔物が平均的に強かったのは「狂化」のおかげなのかもしれない。こんな時にナビゲーターが役に立たないのがもどかしい。
「狂気につつまれている」とかいって詳細が分からないからな。
とりあえず、俺は元ダンジョンマスターをダンジョン畑に連れて行くために、そいつを檻の外へと出した。
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