三話 襲撃
俺に脅迫状のようなものを送りつけてきたダンジョンマスターは、ネットによればすぐに癇癪を起こす奴らしく、本当に送られてきた手紙の内容通りに行動に移す可能性が高い。
そうなると本格的に防衛のための戦略を立てていなければならない。
相手から送られてきた空飛ぶ魔物2体はゴブリンシャーマン1体で対応可能だった。
戦力的には、大きな差はないはずだし、こちらの方が有利な可能性は高い。
だがダンジョンを拡張しようにも、まずは今日一日の終わりに貰えるDPを確保しなければ何も出来ない状況だった。
なので、俺はスマホで情報収集を続けながらその時を待った。
そして、その時がきて俺のダンジョンには652DPが振り分けられた。
「思ったり多いんだな」
初めに1000DPが配られたから、てっきり1日で得られるDPは100から200かと思ったがそこそこ貰えるらしい。
DPが配られたことで止まっていたダンジョン作りを再開し、まず初めに俺は檻を作るためにDPを使用した。
652DP→602DPで、結晶がある部屋の手前に檻の部屋が作られる。
部屋の前で待っている女に俺は結晶を使って声を掛けた。
「おい、檻を作ったから入ってこい」
女はゴブリンも一緒にいる部屋の隅で小さく縮こまっていたが、話しかけられると咄嗟に顔を上げて返事をした。
「はい、分かりました」
その女は素直に従って檻の中へと入っていく。
ゴブリンが鍵をかけたのを見届けて、俺は直接女に会いにいくことにした。
結晶のある部屋を出てすぐ横の檻の部屋へと向かう。
「あなたがダンジョンマスター様ですか?」
女は出会い頭にそう聞いてきた。
「そうだ」
俺はそう答える。
正直に言えば、今からでもこの勘違いしている女とお楽しみになりたいが、DPを同じように得た隣のダンジョンマスターが今にも攻めてきたとしてもおかしくない。
そのまましばらくの間、放置するしか無かった。
そう思えば、なぜ檻なんかを真っ先に作ったのか自分自身でも分からない。
こんなDPの無駄遣いをしたことを、今更後悔してきた。
「...どうかしましたか?」
女が不思議そうにそう問いかけてくる。
少し長い間考え込みすぎたらしい。
「なんでもない、食事はゴブリンが持ってくるからそれを食べるように」
俺は1DPで召喚できる食事を出しながらそう言った。
「わかりました」
女が檻の中でそう素直に返事をするのを確認し、俺は結晶のある部屋へと戻っていく。
「...よし」
少しDPの無駄遣いをしてしまったが、気を取り直してDPを使った防衛線を構築していく。
DPは602DPとそこそこあるため、階層を含めた少し大掛かりな改造を行う。
それからしばらくして出来上がったのがこれだ。
|-ゴブリンダンジョン
|-1F 洞窟迷路
|-2F 直線洞窟
|-3F 迷路洞窟(突貫工事)
|-4F檻、洞穴
|
|-0DP
|
|-所持魔物
|-ゴブリン 50体
|-ゴブリンシャーマン 10体
|-オーク 3体
ゴブリンシャーマンが有効だったことから、5体から10体に増やす。
あとは階層を増やして、迷路洞窟を作ろうとしたが、DPが足らずに(突貫工事)になってしまった。
だが、今持つDPでできることはした。
ようやく、落ち着いて腰を下ろせると思った矢先、あのブザーがダンジョン内に響き渡った。
「担当地区に他のダンジョンマスターの魔物が侵入しました」
ナビゲーターが前と同じようにアナウンスしてくれる。
結晶で覗いてみると前見た空飛ぶ魔物数十体と、明らかにその上位種に見える魔物が3体いた。
隣のダンジョンマスターが、日を跨いでえたDPを使って前に言っていた「報復」をしにきたのだ。
だが、俺はそれを見越してダンジョンの防衛拡張を行なっている。
「やってやろうじゃねぇか」
こんな事でいちいち責められていても厄介だ。
この防衛戦に勝利したらこちらから攻めてしまおう。
今なら所持しているDPだって少ないはずだ。
「よし」
そうと決まればまずは相手をダンジョン内に誘導する所から始めよう。といっても相手は俺のダンジョンを目指している訳だが、戦うなら場所をよく理解しているダンジョン内で戦えた方が有利だ。
「ゴブリン10体とゴブリンシャーマン2体で相手をしたのち、ダンジョン内に撤退せよ」
俺は相手をダンジョン内に誘導するためにそう命令する。
そして、命令されたゴブリン共がダンジョンから出ていき、相手の魔物達と接敵した。
ゴブリンが足止めしている隙にゴブリンシャーマンの魔法が相手の空飛ぶ魔物を焼き尽くしていく。
相手も黙って見ておらず、後ろの方にいる上位種が魔法を放つと前線にいたゴブリンのうち数匹が火だるまになってしまった。
「下がれ」
タイミングを見計らってゴブリン共をダンジョン内へと下げる。
相手からは逃げたようにしか見えないだろう。
案の定、相手は追いかけてダンジョン内へと入ってきた。
どっちにしろダンジョンに来るからと誘導してみたが、観察してみたところあの上位種は厄介かもしれない。
俺の所持しているオークを前線に出して、ゴブリンシャーマンに援護をさせようか...と考えていると何か様子が変なことに気付く。
ダンジョン内に入ってきた魔物達が明らかに動きの統制が取れておらず、やる気のようなものを失っているのだ。
「おい!ナビゲーター」
分からないことがあればナビゲーターに聞くのが先決だ。
「何でしょうか?」
「あの魔物達の様子はどうなっているんだ」
「私には分かりかねますが、恐らくエキストラスキルの影響だと思われます。エキストラスキルはとても大きな影響をダンジョンにもたらします」
エキストラスキル?そういやステータス画面にそうした表記があったはずだ。
「ステータス」
そう言うことで俺の前に半透明な板が出現する。
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|ーレベル 1
|-HP 10
|-MP 5
|-ATK 6
|-INT 3
|
|-スキル
|-暗黒魔法 レベル1
|-狂気耐性 レベル1
|
|-エキストラスキル
|-憂鬱 狂気
|
|-称号
|-ダンジョンマスター イレギュラー
「エキストラスキルの欄をタップしてみてください。詳細が表示されます」
言われた通り、「憂鬱」と「狂気」それぞれとタップしてみた結果がこれだ。
|-憂鬱
|-憂鬱な面持ちがダンジョン内の敵のやる気をそぐ。また、クールタイムに恩恵をもたらすことがある。
|-狂気
|-詳細は狂気に包まれていて見ることは出来ない。
憂鬱スキルが今回の出来事を引き起こした原因だろう。相手の魔物のやる気を削いでいるのだ。
狂気スキルは意味がわからない。これを書いたやつは厨二病か何かなのか?
とにかく、エキストラスキルのおかげで相手のやる気を削げていることが分かった。
待ち構えさせていたゴブリン共とオークに一斉攻撃を命令する。
「一斉攻撃しろ、1匹たりとも逃すな」
そこから始まったのはまさに蹂躙だった。
ゴブリンの集団が空飛ぶ魔物達を蹴散らし、ゴブリンシャーマンが魔法で遠くから撃ち殺す。上位種はオークが相手をしたが、憂鬱スキルがなくても勝てると思えるほど、圧倒的だった。
最後は、恐れをなした残党が逃げ出すがゴブリンシャーマンがそれを許さなかった。
一匹残らず相手の魔物は灰となった。
問題なく襲撃を凌いだ俺はこれで終わるつもりなんてさらさら無かった。
「相手のダンジョンに攻め込むぞ」
まだDPの配布が一回しかないこのタイミング、襲撃に使った戦力に脅威になりそうな存在は確認できず、こちらは先ほどの襲撃でほとんど消耗していない。
現状こちら側が圧倒的に有利なはずだ。
また、癇癪を起こされて攻められても厄介だからな。
今度はこっちから攻めてやる。
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