プロローグ
今日も憂鬱な一日だった。
夜道を歩きながら、彼は頭の中でそう呟く。
夜中の一時まで仕事をさせられ、周りからは冷たい目で見られるし、ろくな知り合いもいない。
そうなった原因は、俺の無計画な行動のせいだ。
やりたくもない残業をやらされ、上司の失敗は俺のせいにされ、そのことを上に告発したが無駄だった。その上司は口だけはよく回る奴で、なんやかんやあって俺はその職場で上司を蹴落とそうとする悪人に仕立て上げられている。
何をどう弁解してもダメで、職場にはもう居場所がない。
その上、上司には嫌がらせのように仕事を多く割り振られる。
どうしようもなく憂鬱な人生だった。
最近、食べ物もあまり喉を通らないし、うまく眠れなくて寝不足だ。
帰ったところで誰も待っておらず、一人寂しく飯を食うだけだ。
最近嫌なことしかなくて、気が狂いそうだった。
そんなことを考えながら、一人夜道を歩いていく。
「憂鬱だ...」
そう呟きながら、曲がり角を通った時だった。
曲がり角の向こうから、トラックが全速力で俺にぶつかりにきた。
「うわぁ!」
俺は情けない声をだしながらも避けようとするが、それより早くトラックは俺の体に直撃した。
そのまま俺は数メートルは道路の上を吹き飛んでいく。
「痛え...」
手を見ると血がベッタリとついていた。
体を見てみると、大きな血溜まりができている。
「はは...」
こんなに頑張ってクソみたいな人生を送ってきたってのに、最後はこんな終わり方かよ。
俺は心底絶望していた。
「ははは...」
「ははハハハハ...」
俺は笑っていた。
いや、笑うしかないじゃないか、こんなクソみたいな人生。
俺はどうしようもなく狂っていた。
「アハハハハ、ハハハゲホ...ゲホ...」
口から血のかたまりが出てくる。
「ハハハ...ハハ.....」
「ハ..」
息が、止まって...
【エクストラスキル「狂化」を入手しました】
【本来想定していない挙動が確認されました】
【状況を把握中...
確認完了しました。割り込み処理によるエラーと確認します。修正パッチを配布します。】
【エラー。既にスキルは獲得済みであり、再発防止策へと切り替えます。】
【作業完了しました。
失礼いたしました。】
何かが聞こえた気がしたがそれどこじゃなかった。
意識が消えて、いく...
ガバリと音を立てて俺は起き上がった。
「ハァハァ」
と息を立てながら全身をくまなく見渡すが、さっきまであった血や怪我がなくなっている。
周りを見てみると、俺が轢き殺された道路の上でなく、薄暗い洞窟の中に俺はいた。
「最後の一人が起きたみたいだし、説明を開始するよ」
頭の中に突然そんな声が響いた。
「突然のことで混乱してるかもだけど、結論から言うね。
君たちは選ばれたんだ」
声の主を探そうと周りを見渡すが、その洞窟には誰もおらず、真ん中に謎の水晶があるだけだ。
声は直接頭の中に響いているようだった。
「この◯◯地区では十二人のダンジョンマスターが選ばれた。私はその一二人の担当ってわけ。」
「もちろん、声を掛けているあなたたちがその十二人だよ。君たちにはね、殺し合いをして欲しいんだ」
その声はそういうが、言ってることがめちゃくちゃだ。第一、なぜ殺し合いなんかすると思っているんだろう。
「もちろん、ただで殺し合いをするとは、思っていない。
期限を設けよう。それまでに二人以上のダンジョンマスターが残っていれば皆殺しだ」
その声はそう説明する。
「期限は半年だ。半年経つまでに結果を待ってるよ」
「じゃあ、また会おう」
「ああ、言い忘れるところだった。「ステータス」って言うと、自分自身の能力値が見れるから。じゃあね」
そういうと声は聞こえなくなった。
何が何だかわからないがとりあえず
「ステータス」
と叫んでみる。すると、目の前に透明なモニターが出てきて、こんなことが書いてあった。
ーーーーーーーーー
|ーレベル 1
|-HP 10
|-MP 5
|-ATK 6
|-INT 3
|
|-スキル
|-暗黒魔法 レベル1
|-狂気耐性 レベル1
|
|-エキストラスキル
|-憂鬱 狂気
|
|-称号
|-ダンジョンマスター イレギュラー
書いてあることはまるでゲームのステータス画面のようだった。
どうやら俺は殺し合いのデスゲームに巻き込まれてしまったらしい。
殺し合いなんてしたくないが、さっき死にかけた時の情景が思い出させる。
意識が少しずつなくなっていくあの感触をまた味わうのは嫌だった。
まずは情報収集を先にしようと俺は心に決めた。
「俺は...あれ?」
ふと思い出そうとして気付いたが、自分自身の名前が思い出せない。
これはダンジョンマスターになった弊害なのだろうか。
「それは後にして...」
とりあえず情報収集のために、ポケットに入れていたスマホを取り出そうとするが、どこにもない。
よく見てみると、さっきまで身につけていたスーツ以外何も自身はみにつけていなかった。
「どうすんだよ...」
何をしたらいいか困り果てるが、そこは出口のない洞穴で中央に謎の結晶が置いてあるだけだ。
「よし...」
そうするしかないため、決意を固めて恐る恐るその結晶に触れるとまた頭の中に声が響いた。
「はじめまして、私はダンジョンマスターのナビゲーションを担当しているAIです。ご自由にお呼び下さい。何か質問があればなんでも聞いてください。答えられる範囲でお答えします。」
そんな女性の声が俺の頭に響いた。
「このデスゲームから離脱する方法はあるか」
と聞くと、
「ありません」
とそのナビゲーターは元気に返事をした。
くそったれ。
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