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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 後編

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ヘルハウンド−2

 大鳥が母を怖がるのが、母が大鳥ではなくケリーに乗って移動している理由の一つだ。

 母は大鳥を怖がらせるつもりはないので、申し訳なさそうにしている。


 しかし今は一度この場所を離れておきたい。

 ヘルハウンドを倒して血の匂いが周囲に漂っている。

 ドラゴンの縄張りとはいえ、匂いを辿って他の魔物が来ないとも限らない。

 トレイシーとケニーに相談して、ドラゴンが集まる洞窟の近くで休ませて貰った方が良いかもしれない。


 キャサリン殿下に相談をすると、可能なら休ませたいと言うのでトレイシーとケニーに相談してみる事にする。

 ケニーが落ち着いていると良いのだが……。

 一応落ち着いていなかった時のために母を連れていく事にした。


「トレイシー、ケニーは落ち着いた?」

「何とか落ち着いた」


 トレイシーにケニーが甘えているのか擦り寄っている。

 とりあえず落ち着いたようで良かった。

 トレイシーに大鳥を休ませたいが、ここは血の匂いで他の魔物が集まってきそうだと相談する。


「大鳥がアレクシアの存在感に当てられたか」

「そうみたい」

「洞窟まで飛べば休めるだろう」

「連れて行っていいかな?」

「問題ない」


 ケニーはしばらくトレイシーから離れそうにないので、飛ぶ準備ができるまでトレイシーに相手していてもらう事にする。

 騎士団の怪我人が回復したか確認をして、大鳥がどうしているかを見にいく。


 大半の大鳥は警戒状態なのか毛が膨らんで丸々としている。

 騎士団の団員が大鳥を宥めているようだ。

 母が大鳥に近づくと少し警戒した様子を見せるが、撫でると気持ちよさそうにしている。

 母は大鳥が好きだが戦闘時に怖がられるので基本距離を取っている。


 大鳥がある程度落ち着いて飛べるようになったところで移動を始める。

 警戒状態の大鳥をドラゴンが集まる洞窟の近くへと案内する。

 陣形が乱れつつも何とか洞窟前まで全員で辿り着いた。

 大鳥が降りると寝ていたドラゴンが起き上がった。


「ケニー帰ってきたのか。だがトレイシー揃ってどうした?」

「ヘルハウンドに襲われでしまった」

「この人数であれば追い返せたのでは?」

「アレクシアが倒したのだが、大鳥がアレクシアの威圧に飲まれた」

「あれか……。ドラゴンでも威圧を感じるので大鳥では落ち着かないか」


 ダニー長老は何度も頷いて休んでいくことを許してくれた。

 キャサリン殿下が代表してお礼をすると、ダニー長老は何もないところだが好きなだけ休むと良いと言ってくれる。


 キャサリン殿下はダニー長老と話をするのが楽しいようだが、大半の騎士団の団員は顔をこわばらせているように見える。

 ヘルハウンドより強いドラゴンに囲まれているのだから、キャサリン殿下を守る事を前提に考えている騎士団の反応は当然かもしれない。


 トレイシーでドラゴンに慣れてしまったのだろうか。

 戦えないのにドラゴンを前にして怖がらないキャサリン殿下が凄くはある。

 大鳥はキャサリン殿下と同じようにトレイシーでドラゴンに慣れたのか、落ち着きを取り戻してきている気はする。


 もう少し時間がかかりそうなので、母にメグを紹介しておく事にする。

 母を連れてメグの元に行くと、メグの顔が緊張しているのが分かる。


「私はアレクシア」

「メグと言います。よろしくお願いします」

「こちらこそアレックスをお願いする」


 メグは母を前に緊張しているようだ。

 モイラおばさんの時も緊張していたし、緊張するのは当然か。

 母もどことなく緊張しているように見える。

 アレックスとメグの事を知ったばかりのようだし当然か。


 メグが伯爵の子供と付き合うのは問題ないかと母に質問をする。

 母は首を傾げながら止まった。

 何か問題があっただろうかと母に尋ねる。


「母さんどうしたの?

「アレックス、先ほどもアレクシア伯爵と言われたが何でだ?」

「母さんが伯爵だからだけど」

「私が伯爵?」


 母は凄く不思議そうな顔でアレックスを見ている。

 どうやら母は爵位を叙爵された事を完全に忘れているようだ。

 百年前に爵位を貰っていると伝えても首を捻っている。


 戦争が終わった後に王都で何かした記憶はないかと母に尋ねてみる。

 王都に行った記憶はあると言うが何をしたかは覚えていない様子だ。


「王都に行った時にモイラおばさんと叙爵一緒に叙爵したらしいよ。村長も騎士だって言ってたし」

「村長に何か言われた気はする」


 母が伯爵であった事を思い出すのは難しいと判断して、メグに覚えてないほどだから問題ないと伝えた。

 母もアレックスと同じように問題ないと言う。

 メグは良かったと大きく息を吐いている。


 母が爵位を叙爵された事を忘れているとは思ったが、思い出せもしないとは……。

 メグの実家に泊まっていたこともあると伝えると、首を捻っているのでニコルやブラウニーのリリーの話をすると、何か思い出したようだ。


「リリーに髪をすいてもらった」

「リリーが居たのは蘭が咲いているの綺麗な屋敷なんだけど」

「思い出した。確かに泊まっていた」


 母はリリーがきっかけで蘭の館を思い出したようだ。

 メグが館の主である騎士の孫だと教えると、母は頷いている。

 母はメグにリリーは元気かと尋ねて話し始めた。

 母とメグが普通に会話ができ始めたので安心する。


 二人が話しているところを見守っていると、影ができて不思議に思って上を確認するとダニー長老だった。

 首を伸ばしてアレックスの方まで顔を近づけてきたようだ。

 キャサリン殿下と会話をしていたのに何かあったのだろうか?


「ダニー長老どうかしましたか?」

「うむ、アレックスに少し聞きたいことがある」

「何でしょう?」

「キャサリンから、また魔物を操る者が出たと聞いたが本当か?」


 アレックスは頷いてワイバーンが操られていた可能性が高い事を説明する。

 話を聞いたダニー長老が唸っている。

 母が同じように操られた魔物を見つけたので帰るのが遅くなったと言い始めた。


「母さんも見つけたの?」

「ケニーが近づいても逃げもしないし、襲いかかりもしない魔物がいた」

「それは確かに変だ」


 ドラゴンが近づいて反応しない魔物は居ない。

 思った以上に操られた魔物が多いようだ。


 ダニー長老も同様の意見だったのか、ケニーに話が聞きたいと移動を始めた。

 アレックスも一緒にダニー長老の話を聞く事にする。

 近くでダニー長老と話をしていたキャサリン殿下も、ダニー長老とケニーの話を聞きにいくようだ。


 キャサリン殿下が移動中に、操られた魔物は他にも確認できているのだと教えてくれた。

 キャサリン殿下はドラゴンなら問題ないとは思っているようだが、一応伝えると思った以上にダニー長老が反応したようだ。


 確かに成体のドラゴンなら操られることはないだろう。

 逆に言えば成体になる前のドラゴンは操られる危険性が多少ありそうだ。

 ダニー長老もそこを気にしているのかもしれない。

 それに操られる可能性があるのは好んだ状況だとは言えないだろう。


「アレクシア伯爵が倒していると言うことは思っていた以上に数が多そうです」

「ケニーが好きなように飛んでいたから国外もあるかも」

「………」


 ケニーの速度で飛んでいればオルニス王国が大きいとはいえ、当然国内を出てしまうこともあるだろう。

 国境は警備してるとはいえ、ドラゴンを止められるとは思えない。

 ドラゴンは大鳥より高度を上げて飛ぶこともできるので、気づかれてすらいないかもしれない。


 アレックスがドラゴンの飛行速度や、飛行高度を説明すると、キャサリン殿下は聞かなかった事にすると言う。

 戦争に参加した国であればアレクシア伯爵は人気なので、そう問題にはならないはずとキャサリン殿下は呟いている。

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