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始祖鳥

 四人増えるので、騎士団をまとめている隊長と陣形の相談を済ませた。

 キャサリン殿下の準備ができたところで、始祖鳥が住む場所まで移動を開始する。


 トレイシーがドラゴンに戻る場所がないので、大鳥が飛び立ったところでドラゴンに戻る事になった。

 アレックスは村の範囲内から外に出ないように注意する。

 大鳥が順番に空に飛び上がり始めた。


 ある程度の空間が空くと、トレイシーがドラゴンに戻った。

 トレイシーが空に舞い上がると、トレイシーを先頭に陣形を作り始める。

 アレックスもピュセーマに乗って空に飛び上がる。


「ジョシュ、この先はドラゴンでも襲ってくる魔物が多くいる。キャサリン殿下が騎士から離れないよう注意して欲しい」

「分かった」


 事前に説明はしているが、ジョシュに再度注意を促す。

 ゲラノスからの移動に比べても随分と遅い速度で進み始めた。

 エリック殿下は今回の始祖鳥を見にいく一団の中にはいない。見にいくことも考えられたようだが、揉めるのを嫌がってスプルギティ村で残る事にしたようだ。

 モイラおばさんと魔法について話しているだろう。


 先頭を飛ぶトレイシーの近くでアレックスは待機する。

 トレイシーが魔法で魔物を倒しながら進んでいく。

 初めてトレイシーの攻撃魔法を見たからだろうか、アレックスにも凄いと騎士団の団員が声を上げたのが聞こえて来た。


 時々トレイシー以外を襲ってくる魔物の処理をしながらオルニス山を移動していく。

 大人数での移動のため時間がかかりつつも、ドラゴンの縄張りに入ったことで魔物から攻撃をされることは無くなった。

 アレックスがジョシュにドラゴンの縄張りに入った事を伝えに行く。


「ジョシュ、ドラゴンの縄張りに入ったよ」

「攻撃が減ったと思ったがそう言うことか」

「ヘルハウンドみたいに入り込んでいる魔物もいるから完全には油断しないで」

「分かった。しかしワイバーンやグリフォンが当たり前に出るのだな」

「ワイバーンは滅多に襲ってこないんだけど、人数が多かったからかな?」


 グリフォンは頭は良いのだが縄張り意識が強いのか襲ってくる事がある。

 ワイバーンはドラゴンなどの明らかに勝てない相手には基本的に向かってこない。


 集団がはぐれないように速度はそこまで出さず、ドラゴンの縄張りから出ないように、始祖鳥が生息している場所にまで飛んでいく。

 アレックスは地上にヘルハウンドが見えないか注意をしていたが、それらしい動く物は見当たらなかった。

 そう時間もかからず始祖鳥が生息する一帯にまで辿り着く。


「アレックス、そろそろ近づきすぎて始祖鳥が逃げてしまう」

「確かに。降りてトレイシーは人型になった方がいいかも」


 ドラゴンは大鳥に基本好かれるのだが、始祖鳥は大鳥ではない普通の鳥なのでドラゴンを見ると逃げ出す。

 普通の鳥でも大鳥と似たような種類の場合は寄ってくるのだが、始祖鳥の大鳥は見た事がない。

 どこかに生息しているかもしれないが、少なくともオルニス山には生息していなさそうだ。


 良さそうな場所を見つけたトレイシーが地上に降りて人型になる。

 始祖鳥が生息している場所は目の前だ。

 緩やかな登りの先に突き出た崖があり、崖の周辺に始祖鳥は生息している。

 何かあれば始祖鳥は崖から飛び降りて飛んで逃げてしまう。


「ジョシュ、この先が崖になっていて始祖鳥が住んでいる場所だ」

「大鳥と大人数で行っては始祖鳥が逃げてしまうだろう。予定通りに大鳥と小数をこの場に残そうと隊長とキャサリンが言っている」

「確かにここならドラゴンの縄張りではあるから分けても問題はなさそう」


 大鳥がヘルハウンドに襲われないか心配ではるが、大鳥は飛んで逃げられる。

 大鳥の護衛は護衛というより全体を指揮するための人員だ。

 キャサリン殿下の護衛は数が少し減ってしまうが、地上で戦う場合は空中で戦うより騎士団の戦い方が安定するとのことだ。


 アレックスはトレイシーと一緒に先頭を歩いていく。

 アレックスは慣れているが、オルニス山は整備された場所ではないので普通は歩きにくい。

 キャサリン殿下の歩調に合わせて歩いていく。

 アレックスが全体を確認しながら、ゆっくりとした動きで緩やかな斜面を登る。


「もう少しで見えて来そうだ」

「逃げるならまだしも襲って来ないといいんだけど」

「動きが鈍いのは知っているが、見た目は凶暴だからな」


 始祖鳥には普通鳥にはない嘴に牙がある。

 足に鉤爪があるのは当然だが、始祖鳥には翼にも鉤爪があるのだ。

 飛べない代わりなのだろうか、中々攻撃的な見た目をしている。


 崖が近づいてくると始祖鳥が見え始めた。

 先頭を譲って徐々に近づくように後ろにいた騎士団の団員に言うと、キャサリン殿下が近づいてきた。


「崖は始祖鳥が巣にしている場所の奥にあるので、進みすぎなければ問題ありません」

「はい」

「一応攻撃して来ないかだけ注意して下さい」


 キャサリン殿下は緊張しているのか頷いて騎士団に守られながら進んでいく。

 アレックスとトレイシーにとっては始祖鳥は珍しいものではないので、見るのは譲って周囲を警戒する事にした。

 騎士団に守られたキャサリン殿下は始祖鳥に近いていく。


 始祖鳥が攻撃して来ないかが心配だったが、始祖鳥は攻撃することもなく動き回ったり巣の中でくつろいでいる。

 早く走る鳥もいるが始祖鳥は歩くのが苦手なのか、翼で動きを補助しながら歩いている。

 本当になんでオルニス山で生きていられるのか不思議な鳥だ。


 始祖鳥は五十センチほどで、大鳥に比べたら小さいが食べる場所がない訳ではないだろう。

 アレックスも始祖鳥を捕まえて食べようと思ったことはないが、捕まえようと思えば簡単に捕まえられそうだ。

 もしかしたら酷く不味いのだろうか。


「トレイシーは始祖鳥食べたことある?」

「ないな。何故だ?」

「何でオルニス山で生きていけるのかなって」

「確かに簡単に捕食されそうだな。大きさもあるしな何故だろうな?」


 偶然ドラゴンの縄張りの中に生息していたので生き残ったのだろうか?

 ドラゴンが縄張りの中で活動するのに、簡単な課題として出したほどには動きが鈍い。

 オルニス山で大雀が最初に相棒になったと残っていると言うことは、始祖鳥を捕まえることを成功していると言うことだ。


 キャサリン殿下には、一人でオルニス山に行って、戻った時に失伝したという始祖鳥を何故見にいくかについての報告はしている。

 キャサリン殿下から、トレイシーやアレックスに始祖鳥は捕まえた方が良いのかと尋ねられているが、ダニー長老は昔の話と言っていたし儀式的に残っているだけで、捕まえる必要まではないだろうと返している。


 アレックスが周囲を警戒しながら始祖鳥が何故生きていられるか考えていると、キャサリン殿下が随分と始祖鳥に近いている事に気づいた。

 手を伸ばせば触れそうな距離で始祖鳥を見ている。

 その隣にはメグもいて始祖鳥をじっくりと観察しているようだ。


「始祖鳥とはあんなに近づけたのか」

「トレイシーも知らないのか」

「興味がないからな。しかし、あの鳥警戒心はどうなっている?」

「ドラゴンが近づいたら逃げるんでしょ?」

「流石に逃げる」


 村の皆も始祖鳥は興味がないので、ここに来る事は滅多にない。

 時々通り道として使う程度だ。

 人に出会う事がないので、人の形をしたものに警戒しないのだろうか?


 何にしろ、あれだけ近距離で見れれば課題も成功だろう。

 後はスプルギティ村へ帰るだけだ。

 ヘルハウンドの気配を見つけるのは難しいが、今のところはトレイシーも何も感じていないようだ。

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