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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 後編

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ドラゴン−3

 トレイシーの言う通り、ドラゴンに懐く大鳥はいるが、ドラゴンに怒れる大鳥はピュセーマ以外見た事がない。

 ピュセーマとトレイシーの付き合いが長いのも関係していそうだが、普通はピュセーマほど強気に行く事ができない。

 大半の大鳥はドラゴンの縄張りなら安全だと羽を休める程度だ。


「アレックス、それならピュセーマを連れてきて欲しいのだけど」

「元々一緒に行くつもりだったから構わないよ」

「キャサリンにも言っておくわ」


 トレイシーだけ送り出しては何かあった時に対処できないだろう。

 何も起きないとは思うが、アレックスも一緒に向かう予定だった。

 それにトレイシーを目的地まで乗せて飛んでも確実に問題がないのは、ピュセーマくらいだろう。

 アレックスが行かないとしてもピュセーマは行く事になりそうだ。

 メグにもトレイシーを乗せられる大鳥が、ピュセーマくらいしか居ないと話すと納得される。




 二日はすぐに経った。

 やはりアレックスも一緒に来て欲しいとのことで、ピュセーマにトレイシーとアレックスの二人が乗って向かう事になった。

 ジョシュが先導すると迎えにきてくれた。


「アレックス、それでは移動しよう」

「分かった」

「速度は出さないので安心してほしい」

「助かるよ」


 ピュセーマに二人乗るので重くなると謝ると短く返事をした。

 事前に分かっていたので、極力荷物は減らしておいた。

 ピュセーマは力強く飛び始める。

 トレイシーの重さは不思議だが人型になっている時は体型程度の重さしかない。ドラゴンの時と同じ体重であれば確実にピュセーマの背中には乗れない。


 ピュセーマは魔法を強めに使っているのか、普段とそう変わらない速度で飛んでいく。

 意外と目的地となる騎士団の演習場は近かったようで、ジョシュが乗ったソフォスが降りていく。

 ピュセーマもソフォスに続いて地上に降りる。


 地上にはすでに多くの大鳥が集まっていた。

 ピュセーマからアレックスとトレイシーが降りると、エリック殿下が近づいてきた。


「二人とも今日はありがとう」

「いえ、エリック殿下も来られたんですか」

「私の大鳥も慣れさせる必要があるからね。キャサリンは中央で準備をしている。行こうか」

「はい」


 今日はピュセーマにも仕事をしてもらう必要があるので、一緒について来てもらう。

 エリック殿下の案内でキャサリン殿下の近くまでやってきた。


 キャサリン殿下からもお礼を言われた後、ドラゴンへ戻る時の結界がどう壊れるか確認をしたいので、ドラゴンに戻る時に合図を出したいと言う。

 トレイシーはその程度だったら構わないと、好きな時に合図を出してくれれば良いと返している。

 騎士団の準備が整ったところでトレイシーがドラゴンに戻る事になった。


 騎士団が忙しそうに動き回っている間に、ピュセーマが大鳥に指示を出しやすいように位置を変える。

 大鳥の配置を変え終わると、騎士団も準備が終わったようで動きが減った。

 騎士団とキャサリン殿下やエリック殿下が話をしている。

 キャサリン殿下がこちらを向いて話しかけてきた。


「準備が完了したようです」

「それじゃトレイシーお願いできる?」

「うむ」


 アレックスはトレイシーから距離を取るように皆に言う。

 トレイシーがドラゴンの姿になると十メートル近い大きさになる。

 余裕を持って離れるように注意をしてから、トレイシーに合図を出す。


 合図を出した次の瞬間にはトレイシーはドラゴンの姿となった。

 トレイシーは全体が真っ白だ。

 大きな胴体に、手足と翼が付いている。翼や体の一部には大鳥のような羽毛がある。翼だけ見ると大鳥を大きくしたようにも見える。

 顔はやはり大鳥とは違い、口から見える牙は大きい。


 トレイシーがドラゴンになった瞬間から大鳥が騒ぎ出した。

 予想通りではあったので、ピュセーマに統率をお願いするとすぐに騒ぎは治った。

 やはりピュセーマに任せて正解だったようだ。


 大鳥は予想通り騒いだのだが、人間は誰からも反応がない。

 どうしたのかと思ってキャサリン殿下とエリック殿下を確認すると、口を開けて驚いた表情で固まっている。

 メグやジョシュも同じような表情をしている。




ーーー


 メグはトレイシーがドラゴンに戻った瞬間からその姿に釘付けになりました。

 トレイシーとは四ヶ月近く一緒の家で過ごしましたが、ドラゴンの姿を見た事がありませんでした。

 騎士団から報告を受けたキャサリンから、どのような姿なのかは聞いてはいましたが、聞くのと見るのでは違います。


 宝石のような赤い瞳に、透き通るような白さの鱗や羽毛。

 ドラゴンなので当然怖さはありますが、それ以上に綺麗だと思える姿に目が離せなくなります。

 トレイシーを見ていると、アレックスが心配そうに見ているのが視界に入りました。


「アレックス。トレイシーは綺麗ね」

「ドラゴンにも色々と種類がいるらしいんだけど、トレイシーたちは真っ白で綺麗なんだ」

「うん。透き通るような白さで綺麗」


 トレイシーのように羽毛があるドラゴンは珍しいと、アレックスが教えてくれました。

 アレックスと話していると、キャサリンも一緒になってトレイシーが綺麗だと言い始めました。


 トレイシーが顔を近づけてきて、ありがとうと言いました。

 トレイシーが喋れるのは当然分かっていましたが、ドラゴンの姿で声を出せるとは思っていなく驚いてしまいました。

 キャサリンもメグ同様に驚いており、同じようにドラゴンの姿で喋れるとは思っていなかったのかも知れません。


 近づいて来たトレイシーの姿を見ると、顔の一部にアクセサリーのような物があるのに気づきました。

 とても似合っていて素敵ですが、トレイシーの大きさからすると、アクセサリーも相当大きなものになるはずで、そのようなものは普通存在しているとは思えません。


「トレイシー、そのアクセサリー素敵ね」

「これか、アレックスたちに作って貰ったのだ」

「トレイシーのアクセサリーは作るの大変だったよ。父とマーティーにも手伝って貰ったけど、大きさが大きさだったからね」


 トレイシーが翼の一部にも着けているとアクセサリーを見せてくれます。

 アレックスがトレイシーは綺麗な物が好きだと言っていた意味がよく分かります。

 人型の時も多くのアクセサリーをつけていましたが、ドラゴンの姿でも複数のアクセサリーを装備しているのは相当好きなのでしょう。


 しかしアクセサリーも綺麗ですが、トレイシー自身も綺麗です。

 トレイシーに触ってみても良いかと尋ねると、触らせてくれる以外にも背中に乗ってみるかと誘われました。

 乗っても良いのかと戸惑っていると、アレックスが子供の頃によく乗せて貰ったと言います。

 それならばと乗せてもらう事にします。


 二人同時に乗っても余裕があるとアレックスが言うので、メグ、キャサリン、キンバリーでトレイシーの背中に乗ってみる事にしました。

 アレックスが言うにはトレイシーは十メートル近い大きさで、大鳥の約三倍ほどの大きさがあるようです。

 トレイシーの背中に乗ると、大鳥と大きさが随分と違う事が実感できます。


「トレイシーの背中に乗ると、大鳥より高い位置に来るのね」

「本当ですね」


 トレイシーの鱗や羽毛はとても綺麗に整えられており、トレイシーの性格がよく出ているように思えます。

 トレイシーに綺麗だと褒めると機嫌が良さそうに返事をしてくれました。

 トレイシーの背中に乗ってみたいというエリック殿下や、他の人たちと交代していきます。


 キャサリンがトレイシーにお礼を言った後、数回同じ事をして大鳥を慣れさせたいと相談しています。


「その方が良さそうだ」

「お手数かけますがよろしくお願いたします」

路地裏の錬金術師をお読み頂きありがとうございます。

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