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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 後編

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ドラゴン−2

 キャサリン殿下に魔道具が欲しいなら作るとメグに伝えて欲しいと言う。

 メグが王家でも買えるのだろうかと、不穏な事を言う。


「流石に買えるとは思うけど? あれなら売らなくても良いし」

「ものが凄すぎる気もするけれど、献上するならまだ……?」

「なるほど。献上でも良いかも」

「それでも受け取って貰えるかは怪しいと思うけど、一応キャサリンに聞いてみるわ」


 どうしても贈りたいと言うよりは、魔道具の値段が気になっただけなので実はどちらでも良い。

 とんでもない金額を渡されても使い道に困るので、献上するのは良い案だと思ったが、渡されて困るのなら値段を聞くだけで良いかもしれない。

 メグに値段を聞いて欲しいと頼むと、聞いたら使えなさそうだから聞きたくないと言う。


 確かにそれもそうか。

 高いからと使うのに慎重になって、必要な時に使えないとなったら元も子もない。

 魔道具は所詮道具で使う事が本来の目的だ。

 メグの言う通りだ。値段については聞かない事にした。


「私の鱗は生え変わるので、その魔道具に使った程度の量であれば気にせず使うべきだな」

「今回多めに貰ったから鱗の予備はあるからな」

「うむ。好きに使うといい」


 どちらかと言えば、鱗より他の素材の方が少ないほどだ。

 ただ鱗は消耗品でもある。魔力を貯める部分である魔石や鱗は、使用していると砕けてしまう事がある。

 他の部分は簡単に壊れることはないが、魔石だけは付け替える必要が出てくる事があり、トレイシーから多めに鱗を貰っている。


 キャサリン殿下からの伝言はこれだけだとメグが言うので、今日のところは話し合いは終わりにしてまた必要があれば話をする事にした。

 話が終わったメグはソファーに倒れ込むように横になって寝始めた。

 最近メグは遅くまで出かけている事が多かったので、久しぶりにゆっくり休めそうだ。




 次の日、メグが再びキャサリン殿下から伝言を預かってきた。

 伝言の内容は、日程を合わせてアレックスと話がしたいようだ。

 アレックスは特に予定がないので、キャサリン殿下の予定に合わせると伝えて欲しいとメグにお願いした。


 更に次の日、メグがキャサリン殿下の日程を聞いてきてくれた。

 五日後にキャサリン殿下が店に来るとメグが言う。

 また店に来るのかと驚くと、トレイシーがいるので城内に入れるのが難しいのだと言う。

 護衛に関してもトレイシーが居れば襲われる事がないだろうと、最小限で店に来るとの事だった。


「それでも結構な人数を用意するみたい」

「エリック殿下とは事情が違うから仕方ないかもね」

「そうね」


 キャサリン殿下はメグの言った通り五日後に店にやってきた。

 応接室にキャサリン殿下を案内する。

 キャサリン殿下はソファーに座ると大きく息を吐いた。

 キャサリン殿下は化粧で誤魔化しているようだが、随分と疲れているように見える。メグが毎日のように王宮に行っていたのだから、当然キャサリン殿下も忙しかったのだろう。


「色々と立て込んでいましたが、始祖鳥についてようやく話せます」

「キャサリン殿下随分とお疲れのようですが大丈夫ですか?」

「正直疲れています。それでも旅の準備が始まれば少しは楽になります」


 旅の準備をしていた方が忙しくないとはどのような毎日を送っているのだろうか。

 色々と聞いてキャサリン殿下の時間を奪うわけにはいかない。

 今日は始祖鳥を見に行く段取りを中心に話し合っていく事にする。


 話し合うと言ったが実はそこまでアレックスが喋る事はない。

 ゲラノスまでは大鳥で飛んでいく事になるだろうし、故郷のスプルギティ村へ連れていく人員もキャサリン殿下が決めるだろう。

 あまりに多い人数だと村に入りきらないが、魔道具の天幕などがあれば寝る事はできるだろう。


 予想通りキャサリン殿下との話し合いは、事前にある程度決まっていたのだろう。

 アレックスが提案に肯定して話が進んでいく。


「アレックス、後は何か問題になりそうな事はありますか?」

「そうですね……」


 騎士団が決めた事なのだろう。

 大体問題はないと思う。

 そう言えば前回キャサリン殿下と話した時に、大鳥が大騒ぎした事があった。

 トレイシーを見ながらキャサリン殿下に話す。


「キャサリン殿下はトレイシーがドラゴンの時の姿を見ていましたか?」

「見ていませんね」

「大鳥が騒いだのを思い出しまして」

「先に慣れさせる必要がありますか」


 最悪トレイシーは人型で大鳥の乗れば良いが、トレイシーも自身で飛んだ方が楽だろう。

 それに大鳥は勘が鋭い、トレイシーが人型であろうと気付かれる場合がある。


 そうなってくるとトレイシーのドラゴンの姿を出せる場所を探す必要がある。

 王都の中は結界が壊れてしまう可能性があるので、王都の外で変化する必要があるだろう。

 キャサリン殿下にトレイシーがドラゴンに戻る場合について話すと、同意された。

 キンバリーや騎士団が、王都に影響がない位置で変化できる場所を探しておく事になった。


「王都から見える範囲で姿を変えれば大騒ぎになります」

「前回も凄かったみたいですね」

「騒動を収めるのはかなり大変だったようです。収めるはずの兵士が混乱していたようですし」


 トレイシーが申し訳ないと、次があったら王都に入る前に人型になってくると言う。

 結界が毎回壊れるのは困ると、キャサリン殿下が申し訳なさそうにトレイシーに人型で来るようにお願いしている。

 ドラゴンは人間とは違う生き物だ。キャサリン殿下であろうとお願いするしかないようだ。


 トレイシーにドラゴンの姿を見せる事は問題ないかと尋ねると、大鳥が一緒に飛べないのは困るだろうと同意してくれた。

 最悪トレイシーだけ先に帰ると言う方法もあるが、トレイシーが居た方が安全な旅になるのは間違いない。


 大鳥を慣れさせる必要があるので、あまりゆっくりしているとまた、オルニス山に雪が積もってしまう。

 急ぎトレイシーがドラゴンに変われる場所を探す事になった。


「ではまた連絡をします」

「分かりました」

「トレイシーもよろしくお願いします」

「うん」


 今回はキャサリン殿下もゆっくりとはせず、そのまま帰っていくようだ。

 キャサリン殿下は最後に真珠布と真珠粉についてお礼を言った。

 忙しくはなったが、キャサリン殿下の影響力を増す事ができて、王太子になっても貴族から反対される事はなさそうだと言う。


 アレックスは帰っていくキャサリン殿下を見送った。




 キャサリン殿下から連絡が来たのはかなり早く、次の日には場所や日時を指定された。

 場所は王都から近い騎士団の演習場となるようだ。

 演習場にする理由は結界がどうしたら壊れるか確認したいのだと言う。

 トレイシーも実験に付き合うのは問題がないと言うので、そのままの場所でドラゴンになる事が決まった。

 日程については二日後というとても早い予定となっていた。


 メグが聞いたところによると、大鳥が慣れるまで時間がかかる場合があり、なるべく早く慣れさせるために一番早い日時を選んだとの事だ。

 メグがトレイシーに何度もドラゴンになってもらうかも知れないと、お願いをしている。

 トレイシーは軽い感じで同意している。


「だけど、そう回数をこなさなくても、ピュセーマが率いてくれればすぐに慣れるとは思うよ」

「ピュセーマが?」

「うん。ピュセーマは優秀だからね。スプルギティ村の大雀でも一番か二番の位置にいたから統率力がすごいよ。そもそもドラゴンに怒れる大雀なんてほぼ居ないし」

「そういえば最初に会った時、ピュセーマが怒っていましたね」


 メグと会話をしていたトレイシーが、怒られちゃったよと軽く笑っている。

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