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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 中編

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銅像

 真珠粉の試作が完成して作り方をまとめた書類が完成してゆっくりしていると、メグが近づいてきた。


「アレックス、以前言っていた銅像を見に行かない?」

「そういえば見に行ってないな」

「今なら時間があるしどう?」

「確かに。行ってみようか」


 どうやって向かうのかとメグに尋ねると、歩きや馬車を使って向かうと言う。

 銅像近くは混んでいる上に、止まり木などないので歩きになるとメグが教えてくれた。

 トレイシーにどうするか尋ねると、二人で楽しんでくるようにと言って手を振っている。

 どうやら気を利かせてくれたようだ。


 アレックスとメグは準備をして店を出る。

 メグの案内で路地裏から大通りの方向へと歩いていく。

 大通りに出ると、メグが王都内を周回している馬車を利用して、目的地である銅像があある広場まで行くという。

 そのような馬車があるのをアレックスは初めて知った。


「そんな馬車があったんだ」

「大鳥を持ってる人は滅多に使わないかも、私もアネモスが居るから滅多に使わないし」

「大鳥は飛ばないと運動不足になるからな」

「そうね」


 運動不足になると大鳥も太る。

 太れば当然飛ぶのが難しくなり痩せる必要が出てくる。

 普通の大鳥は体重にもよるが人を二人乗せて飛ぶことはできる。しかし二人乗せれば飛行できる速度や距離は大鳥によっては随分と落ちる。

 太れば同様のことが大鳥に起きて、飛行するの大変になってしまう。


 大鳥だけではなく当然騎乗する人間も体重管理は重要だ。

 軽ければ軽いほど大鳥への負担はなくなる。

 荷物を運ぶ事を主にしているギルド員などは小柄な人た多い。戦闘を得意とするギルド員は、ある程度の体重は許容して重くなりすぎないように注意していると聞いた事がる。

 アレックスは背が高い方なので体重が重めだ。なので普段からピュセーマの負担が増えすぎないように注意はしている。


 メグと並んで馬車が通る道で待つ。

 馬車を止めて乗るのだとメグが教えてくれた。

 馬車を待ちながら改めて周囲を確認すると、石畳で舗装された王都の大通りは綺麗だ。歩道と馬車が通る用の道は分かれている。

 大通りだからか背が高めの店が多くあり、窓ガラスが嵌め込まれて店の中が見えるようになっている。

 歩道に露天などもあり、飲み物なども売っている。


「ここら辺は店が多いんだな」

「比較的住宅が多い場所だから庶民向けの店が多いわ。門の近くは倉庫とか多いわね。中心は貴族の別邸とか高級な店が多いの」

「そうなのか。王都に来て九ヶ月近く経ってるのに知らなかった」

「もうそんなに居るのね」


 メグと出会ってから九ヶ月ということでもある。

 付き合い始めてから八ヶ月だ。

 後二ヶ月から三ヶ月もあれば始祖鳥が住んでいる場所の雪は溶け切るはずだ。アレックスが移動した時期は春から初夏の間で、雪がなく寒くない時期を選んだ。

 急いでいたとはいえ、冬の移動は大半だからだ。


 メグと九ヶ月の思い出を語っていると、馬車がやってきた。

 メグが馬車を止めて、お金を払って乗り込む。

 馬車は一頭の馬で引いている。馬車の中は六人ほどが詰めれば乗れるのだろうか。中には乗客がおり、アレックスとメグは乗客に挨拶をして椅子に座る。

 アレックスとメグが座ると、馬車はすぐに走り出した。


 馬車は揺れることは揺れるが、意外と快適だ。

 以前に乗った馬車は酷い揺れでもう乗りたくはないと思っていたが、王都の馬車は違うようだ。

 メグに意外と揺れない事を伝えると、王都は石畳で舗装されているので揺れが少ないのだと教えてくれた。


「それと馬車は魔道具が組み込まれてるって聞いたことがあるわ」

「馬車用の魔道具ってかなり高かった気がするけど、取り付けてあるんだ」

「王都を周回している馬車は走り続けているから、装備してあるってお祖父様が言っていた気がする」


 揺れが少なくなれば、部品が壊れる事も多少は減りそうだ。

 最終的には魔道具を取り付けても元が取れる計算なのかもしれない。


 馬車に乗ってメグと話しながら揺られていると、大きな広場にたどり着いた。

 メグがここで降りるという。

 メグが御者に降りる事を伝えると、馬車は止まった。

 メグが降りたので、アレックスはメグに続いて馬車を降りる。


 広場となっている場所は広く噴水まである。更には広場の中には多くの露店があり、人で賑わっている。

 随分と活気のある場所に母とモイラおばさんの銅像はあるようだ。

 どこに銅像があるのかとメグに尋ねると噴水を指差した。


「噴水?」

「そう。近づけば分かるわ」

「分かった」


 人を避けながら噴水に近づいていくと、噴水の中心になっているのが銅像だという事に気づいた。

 何かがあるとは思っていたが銅像だったとは。

 当然銅像は母とモイラおばさんの姿を模った物なのだろう。近づいていくとはっきりと目視できるようになってきた。


 銅像のためか大きめに作ってあるようだが、二人ともそのままの姿だ。

 母は小柄で華奢のようにも見える姿で、身長と同じほどの武器を持っている。

 モイラおばさんは大柄で、筋肉で盛り上がった体をしている。手には杖を持っているが、あまり魔法を使うような見た目には見えない。

 母とモイラおばさんはどちらも本物同様に角が大きい。


「アレックス、どう?」

「そっくりだね」

「そうなんだ。お祖父様とお祖母様もそう言ってたけど本当なんだ」


 噴水の前には大量の花や食べ物が並べられている。

 何のために置いてあるのかと不思議に思って見ていると、メグがそれは二人への贈り物だという。

 かなりの量の花が置かれており、花は枯れている様子もないので毎日違う花が添えられているように思える。

 そこまで人気があるのかと驚く。


 メグが花を贈るのは貴族や亜人が多いと言う。更に昔はもっと多かったとランドルフさんが言っていたと教えてくれた。

 母やモイラおばさんは王都にはいない、この花や食べ物はどうするのだろうか?

 メグに尋ねると、花や食べ物は1日の終わりに周囲の人に配られるのだと教えてくれた。

 利用されないよりはその方が二人も喜びそうだ。


「アレックス、二人がどれだけ人気があるのか分かった?」

「分かったよ。百年経ってもこの贈り物の多さは凄い」

「亜人だとまだ当時を知ってる人も居るから、騎士とかでも贈り物を届けてる人が多いって聞いた」

「そういえば母を知っている人に会ったな。尊敬というか、ちょっと美化しすぎていた気がしたけど」


 メグは話に聞いただけなので、実際に会ってみたいと言う。

 キャサリン殿下が、アレックスの故郷であるスプルギティ村に行く時には、メグも同行するだろう。

 その時に都合よく母が帰ってくるかは分からないが、居れば紹介はしたいと思っている。


 母は会えない可能性があるが、モイラおばさんは村に居る可能性が高いので会えるだろう。

 ここまで有名ならばモイラおばさんを紹介しても喜んで貰えそうだ。

 メグにモイラおばさんを紹介するというと、会って見たいと目を輝かしている。


「よく話になるんだけど、大きい方がモイラ伯爵なのよね?」

「そうだよ。オーガにも色々種類があるらしいんだけど、故郷は普通の人と変わらない大きさの人が多いんだ。モイラおばさんは先祖返りで巨人種の血が強いみたい」

「それでアレクシア伯爵と背が全然違うのね」


 母はメグより背が小さいく百六十センチほどしかないと伝えると、メグがとても驚いている。

 銅像なので実際の大きさが分からなかったようだ。

 母やモイラおばさんの話をしていると、周囲の人がこちらを気にし始めたのが分かった。

 囲まれてしまうかもしれないと、慌ててアレックスとメグは移動した。

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