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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 中編

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蘭の館−3

 アレックスが騎士団はいつもそこまで忙しいのか少し気になって尋ねると、普通はここまで忙しいことはないとランドルフさんが言う。

 ランドルフさんは本来はもう少し前に休暇がある予定だったと教えてくれた。

 キャサリン殿下が王都に帰って来た時点で、一旦騎士団も落ち着いて休暇になるはずが、ワイバーンが出たことで予定が狂ってしまい、休暇がいつになっても無い状態になってしまったのだとランドルフさんが語った。

 本来ならある筈だった休暇中にアレックスと会う予定が、休暇が潰れたことで予定が変更されていたのだと教えてくれた。


「それでもやっと落ち着いてきて、もう少しすれば休暇になる予定だったんですが……」

「もしかしてドラゴンが来たからまた忙しく?」

「今回は私はそこまででは無いかな。私は裏方の事務作業が主な仕事だから、今回は表方の警備を担当する騎士や魔導騎士の方が忙しいのでは無いかな。手伝いに駆り出されるなら討伐などを担当する騎士団員だろう」


 ジョシュは王都の外で討伐が多いようだが、王都の結界も壊れたようだし、手伝いでしばらく忙しかもしれない。

 そういえば結界が壊れて何故魔導騎士が呼び出されるのだろうか? 普通なら錬金術師が呼ばれるところだと思うのだが。

 答えてくれるか分からないが、ランドルフさんに王都の結界について尋ねる。

 ランドルフさんは詳しい内容は言えないと前置きした後に、何故魔導騎士が呼び出されているのか教えてくれた。

 王都の結界は複数合わさってできているので、どの結界が壊れたかの調査と壊れた結界の代わりに警備をしているのだとランドルフさんが言う。

 結界を張っている魔道具を直しているのは、王宮に勤めている錬金術師だとも教えてくれた。


 壊れた箇所を調べるのに魔導騎士を呼んだのか。

 調べる必要があると言うことは、どの結界が壊れたか一目で分かるような状態になっていないようだ。

 ジョシュが店を出る前に何故壊れたのか聞いていたのは、どの結界が壊れたか調べるためだったのか。


 ランドルフさんと会話をしていると、部屋の扉が開いて驚く。

 蘭の館にいる人はここに居るので全員のはずだ。

 ……いや、女中のブラウニーが居ると以前にニコルが言っていた。しかし人前には出てこないと言っていた筈だが?

 ニコルが驚いた声を出した後に、ブラウニーの名前であろう名前を呼んだ。


「リリー? 人前に出て良いのかい?」

「はい。アレクシア伯爵のご子息だと聞いて会ってみたくなったのです」

「リリーがそんな事を言うなんて珍しいね」


 リリーと呼ばれたブラウニーにアレックスは見つめられているのが分かる。

 ブラウニーの身長は一メートルほどだろうか。幼女にすら見えるがメグの面倒を見ていたと言っていたし、アレックス以上の年齢の筈だ。


「アレクシア伯爵のお髪とそっくりです」

「母の髪ですか?」

「ええ。手入れをさせてもらった事があるのです」


 想像以上にリリーと呼ばれたブラウニーは年齢が高いようだ。

 アレックスが驚いていると、何故かニコルまで驚いている。

 何故ニコルまで驚いているのかと尋ねると、ブラウニーと母に交流があった事を知らなかったと言う。


 ブラウニーが母と会った時の話をしてくれた。

 母に会ったのは屋敷に滞在している時で、人見知りのブラウニーは母やモイラおばさんから見つからないようにしていたが、母に気づいたら回り込まれていたのだと言う。

 見つかったブラウニーは慌てながら何とか母に挨拶をして、人前に出るのが苦手な事を説明したらしい。

 母は子供が見つからないように遊んでいるのだと思っていたらしく、遊びに付き合ったつもりだったとブラウニーに謝ったそうだ。

 誤解が解けた後は時々会話をするようになったのだとブラウニーが語った。


「アレクシア伯爵の雰囲気は私にはとても心地よかったのです」

「母は確かに戦っている時以外はのんびりとしていますからね」

「ご子息様、ご挨拶が遅れましたリリーと申します。リリーとお呼びください」

「アレックスです。リリー、お会いできて光栄です」


 リリーから母に雰囲気が似ていると言われる。

 故郷ではそのような事は言われたことがなかったので驚くが、戦っていない時の母なら多少は似ているのかもしれない。


 リリーによって夕食が机の上に並べられていく。

 運ぶのを手伝おうと思ったが、リリーの動作は綺麗で早そうには見えないのに、夕食があっという間に机の上に並べられた。

 ニコルとランドルフさんがアレックスにリリーも一緒にどうかと言う。アレックスは是非リリーも一緒にと返した。

 リリーは迷っていたようだが、一緒に夕食を食べる事になった。


「では、メグとアレックスの出会いに乾杯」


 ランドルフさんの言葉に合わせてお酒の注がれたグラスを持ち上げる。

 リリーが用意した夕食は前回ご馳走になった時も美味しかったが、今回の料理も美味しい。

 食事をしながらメグが皆に相談したいことがあると言う。

 ランドルフさんがメグに聞き返した。


「ニコルから相談したいことがあるとは聞いていたがどうした?」

「キャサリンの騎士になるか迷っていたのだけど、アレックスが伯爵令息な事も分かったからどうすればいいか分からなくて」

「確かにそれは悩むな」


 アレックスは伯爵の子供だからと気にする必要がないと思うのだが、皆はどうやら違うようだ。

 アレックスとトレイシー以外は随分と悩んでいる。

 何故そこまで悩んでいるのかランドルフさんに尋ねる。母であるアレクシア伯爵が有名すぎて、アレックスと付き合っているメグをキャサリン殿下の騎士にすると、どのような評判が流れるか分からないとランドルフさんが言う。

 評判が良くなるなら良いが、逆効果になってしまう場合もあって、騎士になるのは慎重にならざる得ないとランドルフさんが考えを教えてくれた。


 キャサリン殿下が王太子に指名される前なら問題はなかったかもしれないが、今の状況で評判が悪くなるのは確かに良くない。

 皆が悩んでいる理由がよく分かった。

 メグが騎士にするかどうかの話を皆で相談するが、答えは結局出ることはなかった。


「メグ、一度キャサリン殿下と相談した方がいい」

「はい」

「私からもどうするべきか騎士団や王家に聞いてみる」


 ランドルフさんは答えを保留にしたようだ。

 アレックスとしてはメグがどのような選択をしても応援したいと思っている。

 メグに好きに動いて欲しいと伝えていると、ランドルフさんからアレックスに王家から連絡は来ているかと話しかけられた。


「王家からですか? 特に連絡は来ていません」

「騎士団に所属している私は、アレクシア伯爵の息子であるアレックスが王都にいるのを知らなかった。王家もアレックスが王都に居ることを知らなかった可能性がある」

「ジョシュは私の事を知っていたようですが?」

「ジョシュとはジョシュア卿だな。確かにそのようだが、騎士団の私は知らなかった。ジョシュア卿が報告を忘れると思えない。となるとどこかで連絡が途切れている可能性がある」


 ランドルフさんから王都に来た時期を尋ねられた。

 アレックスが王都に来た時期を答えると、キャサリン殿下へ領地を叙爵した時期に重なるとランドルフさんが言う。

 丁度騎士団が忙しかった時期で、報告が上まで上がらなかった可能性があるようだ。


 王家から連絡とはどのような事を尋ねられるのか想像ができない。ランドルフさんに尋ねてみる。

 母であるアレクシア伯爵がどうしているか尋ねられるくらいだろうと、ランドルフさんが言う。

 母について尋ねられる程度なら問題はないだろう。

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