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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 中編

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蘭の館−2

 次の日の朝にはニコルから挨拶のために騎士団から連れてきたと言いにきた。更に今日の夕食を食べながら話をしようとの提案を受けた。

 真珠糸や真珠粉の制作をする必要はあるが、一気に作れる訳ではなく毎日作ることで量を増やすものだ。

 挨拶を優先した方が良いだろう。

 アレックスはニコルからの提案を受けた。


「夕食の前に少し話をしたいから日が沈む前に来て欲しい」

「はい。メグと一緒に向かいます」

「蘭の館で待ってるよ」


 そう言ってニコルは帰って行った。

 ニコルが帰って行った後は、まだ朝なので随分と日没まで時間がある。最近の日課となっている真珠糸や真珠粉の製作を始める。

 錬金術で物作りをしながら、母が伯爵であると分かったのは衝撃だったなと思う。といってもアレックスが何か変わったわけではないので、変わらず父と同じように錬金術をしている。

 それに貴族の子供になったからといって何をすれば良いかもわからない。

 今度ジョシュにでも聞いてみるべきなのだろうか、しかし母の爵位は特殊だと言っていたので普通とは違いそうだ。


 休憩したり昼食を食べる時に、トレイシーとメグが何をしているのか聞くと、二人は化粧品をどう改良するか話し合っているらしい。

 トレイシーの助言がとても役に立っているとメグが言う。

 それは良かったと思いながらも、トレイシーは今日も女性的な化粧をしている。

 アレックスからすると違和感が凄い。

 二人が楽しそうなので言う必要はないかと見守る事にした。


 夕食の時間に近くなってきて、トレイシーには留守番をお願いするつもりなので、食事を用意するか迷っていると、ニコルが再び店にやってきた。


「ニコル、もしかして行くのが遅かったですか?」

「いや、トレイシーも連れて来て欲しいと夫が言うんだよ」

「トレイシーも? 分かりました。トレイシーの夕食をどうするか迷っていたので丁度良かったです」

「それは良かったよ。夕食はもう少し後に始めるよ」


 トレイシーに夕食を一緒に食べに行こうと誘うと、頷いて行くという。

 ニコルからドラゴンの食事は人間と同じで良いのかと尋ねられている。

 ドラゴンは雑食なので人間と同じものを食べれるとトレイシーが説明している。


 ドラゴンは雑食の上に食べる量が意外と少ない。

 以前にトレイシーに聞いた時は、食べようと思えば食べれるが、基本的にはそこまで食べなくても、空気中の魔力を吸っていれば生きていけるらしい。

 オルニス山は空気中の魔力が多く、ダンジョンが出来やすい場所だ。

 なのでドラゴンは好んでオルニス山に住んでいる。


 空気中の魔力が少ない場所では、逆にドラゴンは食べる量を増やす必要があるとも言っていた。

 王都は空気中の魔力量が少ない。

 トレイシーの食事量には気をつける必要があるが、アレックスが気にしなくても自己管理できるだろう。


 ニコルが再び蘭の館に戻ると言う。

 丁度作業を終えたところなので、メグと相談して一緒に蘭の館に向かう事にする。

 ピュセーマとアネモスに留守番をお願いして、四人で店を出る。

 蘭の館に徒歩で向かう。

 トレイシーが興味深そうに周囲を見回しているので、ニコルとメグが路地裏についてトレイシーに説明をしている。アレックスも知らない話があったので、トレイシーと一緒に説明を聞く。


「ここが蘭の館だよ」

「おお、スプルギティ村に比べたら今までの建物はどれも立派だが、この建物は綺麗だな。私好みだ」

「気に入ってくれて嬉しいよ」


 ニコルの案内で以前に食事をご馳走になった時に使った食堂へと通される。

 メグの両親と祖父を連れてくると、ニコルは食堂を出て行った。

 初めての挨拶になるので緊張して待っていると、ニコルが三人を連れて戻ってきた。


「ランドルフ・ド・ハース。メグの祖父です。挨拶が遅くなって申し訳ない」

「ランス。メグの父です。挨拶が遅くなって申し訳ありませんでした」

「メーベル。メグの母です。挨拶が遅れて申し訳ありません」

「アレックスです。皆さんが忙しいのは聞いていたので気にしないで下さい」


 ランドルフさんとランスさんは、親子と言われなければ分からないほど若々しい。二人はメグと髪の色が銀髪に薄い青が入っているのが似ており、家族だと言うことはよく分かる。

 メーベルさんはメグと顔や雰囲気が非常によく似ており、親子なのだとよく分かる。


 アレックスが挨拶について、気にしないと言っても三人はやはりしっかりと謝ってくる。

 ニコルが謝るくらいなら早く挨拶くらい済ましておくんだと怒っている。

 ニコルの言うことは尤もな意見ではあるのだが、三人の顔色の悪さをみるに相当な激務だったのではないかと思える。家に帰れないほどの忙しさなんて普通はそうそう無いだろう。


「アレクシア伯爵のご子息の挨拶だよ!」

「申し訳ないニコル。しかしアレクシア伯爵のご子息だとは言っていなかったじゃないか」

「親戚の可能性があるとは言ったよ!」


 ニコルが怒っている理由が分かった。アレックスの母が問題だったようだ。

 アレックスも母が伯爵だとは知らなかった事なので、気にしないで欲しいとニコルを説得する。


「「アレクシア卿が伯爵である事を知らない?」」


 ニコルとランドルフさんは息のあった疑問を返してきた。

 アレックスは母と魔法の師匠であるモイラおばさんが、爵位をもらっている事をすでに忘れていると説明する。

 メグとトレイシー以外のハース家の人たちは口を開けて驚いている。

 普通は叙爵をされれば忘れることはないのだろう。

 しかし母とモイラおばさんは違う。忘れるのだ。


「流石アレクシア伯爵だね……」


 母の叙爵を忘れるという衝撃によって、ニコルの説教が終わったところで、話題を変えるのにトレイシーの紹介をする事にした。


 トレイシーを紹介すると、人型の状態なので本当にドラゴンなのかは疑問に思ったようだ。

 ランドルフさんが色々と聞いている。

 トレイシーの姿を変えて見せるのが一番早いのだが、姿を変えられる場所がないのと、ドラゴンになったら王都の結界がまた壊れてしまう可能性がある。

 アレックスがトレイシーはドラゴンであると保証する事で終わった。


「本当にドラゴンなのだな。改めて急に食事をどうかと誘って申し訳ない。上司からドラゴンがどうしているか見て来て欲しいと実質上の命令をされてね……。私が見てどうするのだと思ったのだがね?」

「ドラゴンは人里には普通降りないので、心配だったのだろう」


 ランドルフさんが「私が見てもどうしようもない」と言いながら、首を振っている。

 ドラゴンのトレイシーを見に行く代わりに、数ヶ月ぶりの実質的に休暇と言えるものを与えられたので、随分と久しぶりの休日だとランドルフさんが言う。

 ランドルフさんからトレイシーを見に行くのに、アレックスの店にしばらく顔を出させて欲しいとお願いをされた。

 店に顔を出してくれるのは歓迎なのだが、真珠布と真珠粉の制作で忙しい為、相手ができないと説明をする。

 ランドルフさんは気にしないと言う。


「店の一角に居させて貰えるだけで良い。数ヶ月ぶりの休みだからね……」

「分かりました。なんだったら大きなソファーでも持ってきてもらっても良いですよ」

「良いのかい? 助かるよ」


 ランドルフさんの返しにニコルがため息を吐いてる。ランドルフさんの顔色は初対面のアレックスにも疲れ切っているのが分かるほどだ。

 ニコルがため息を吐きながらも反対しないのは、ランドルフさんを心配しているのだと思う。

 本当は蘭の館で休んで欲しいところだが、そうも言ってられないのだろう。

 代わりに店でゆっくりと休んでほしい。

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