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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 中編

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キャサリン殿下−5

 不死鳥の生息域を思い出していると、そういえば一部がドラゴンの縄張りと被っている事に気づいた。そして生息域が被っている部分が一番村から行きやすい場所だ。

 交渉するのはドラゴンの縄張りを通る許可なのかもしれない。

 その程度であればアレックスでも交渉は可能だ。

 予想をキャサリン殿下に説明して、ドラゴンへの交渉はアレックスでも可能な事を話した。


「アレックスが交渉できるのですか? そういえばメグに貸した魔道具はドラゴンの鱗だと聞きましたが……」

「あれは友人から貰った鱗なので、多分友人の鱗ですね」

「友人の鱗という事は、友人はドラゴン?」

「はい」


 メグにはドラゴンが友人だと伝えてあるが、キャサリン殿下には話していないのか。

 メグに話していないのか質問をしてみると、ドラゴンが友人だと説明をして信じて貰えると思えなかったと返された。

 ドラゴンが友人なのは信じてもらえないのか。


 ジョシュからもドラゴンが友人なのかと驚かれる。

 確かに故郷でもドラゴンと友人という間柄だったのはアレックスだけではあった。友人は綺麗なものが好きで、アクセサリーなどを注文してくる間柄だったので更に特殊なのかもしれない。

 アレックスが納得しているとジョシュがため息を吐いている。


「という事はアレックスが居れば目的は達成できるのだな。キャサリン分かっていると思うが、伯爵令息に案内をお願いするのだから手続きはしっかりとするんだぞ。私は前回手続きなしで引っ張り出してしまったので問題だったが……」

「「伯爵令息?」」


 誰が伯爵令息なのだろうか?

 疑問に思っているのはアレックスだけではないようだ。キャサリン殿下も不思議そうに首を傾げている。

 ジョシュが目を見開いて驚いている。


「待て、知らないのか? というか何故アレックスまで不思議そうにしている?」

「え? 何が?」

「アレックスの兄弟子のマーティーに伝えるように言ってあった筈だ」

「マーティーに?」


 マーティーと話はしたが、特に何か聞いた覚えはない。

 令息という事は親が伯爵という事なのだろうが、父は珍しい名前であるが貴族だとは言っていなかった気がする。母は戦う事は得意だが、貴族らしい事をできると思えない。

 ジョシュの勘違いではないだろうか?

 マーティーから何も聞いていない事と、ジョシュの勘違いではないかと尋ねると、ジョシュが頭を抱えている。


「アレックス、君の母君は伯爵位を持っている。かなり特殊な例で形だけの名誉騎士に近い形なのだがな」

「母が?」


 キャサリン殿下が急に立ち上がった。


「スプルギティ村で伯爵といえば、もしやモイラ伯爵ですか!?」

「そちらはマーティーの母だ」


 魔法の師匠の名前だ。師匠も伯爵だったのか。

 キャサリン殿下が一瞬固まった後に、目が見開かれた。相当驚いているのが分かる。


「ではアレクシア伯爵の子供!?」

「そうだ」


 母の名前だ。

 本当に伯爵なのか……? 未だに信じられないのだが、キャサリン殿下の口から出たと言うことは本当なのか。


「英雄ではないですか!」


 英雄? そういえば以前にハンクさんから戦争中の話を聞いた時に、母や師匠の名前が出ていたな。

 という事は功績によって母と師匠は伯爵位を叙爵されているのか?

 ジョシュ以外の皆が驚いて固まっている様子なので、ジョシュに母の爵位について尋ねてみた。

 ジョシュからの返事は予想通りで、戦争時の功績によって叙爵されているとの事だった。


 ジョシュが親の爵位を知らないのは問題だと、当時の話を教えてくれた。

 母と師匠は戦争時の功績が凄すぎて、伯爵位を渡す事が決まった。しかし母と師匠は貴族としての役割は面倒でしたくないと、受け取りを拒否したらしい。

 拒否できるほどの功績を上げていたので問題はないが。報いないわけには行かないと、当時のオルニス王国は揉めに揉めたのだと言う。

 結果、全ての貴族としての役割は放棄された事で、やっと爵位を受け取って貰えたとジョシュが教えてくれた。


 当時のオルニス王国の国王陛下は頭を抱えただろうな、まさか爵位を要らないって言われると思わなかっただろうし。

 母と師匠から爵位について何も言われていない理由が何となく分かった。

 母は爵位の事をすでに忘れている。


 ジョシュの話が終わったところで、キャサリン殿下がジョシュに声をかけた。


「アレクシア伯爵に子供がいたのですか?」

「はい。王家にアレックスの名前は報告してありますが、知らなかったのですか?」

「そういえば数年前に話題になった気が……。ですが知っていたとしても、アレックスがオーガである事や、スプルギティ村の事を今知ったので気づくのは無理です」

「そういえばそうでした。アレックスという名前はそこまで珍しい名前ではありませんから、オーガである事を最低でも知っていなければ気づくのは無理ですね」


 確かにアレックスという名前は、そこまで珍しい名前ではない。

 名前で思い出したが王都に来てから道を歩いていると、母や師匠と同じ名前を呼ぶ声がよく聞こえていたのだが、母と師匠の名前は人気があるのだなと思っていた。

 名前に人気があるのは、もしかして母と師匠の名前が関係があったりするのだろうか? ジョシュに名前について尋ねると、英雄にあやかって名付けられた人が多いのだと言う。

 しかも母と師匠は劇にもなっていると教えてくれた。


 更に銅像まであるとジョシュが言う。

 マーティーは銅像を見て説明に書かれていた名前を見て、ジョシュに尋ねた事で伯爵の子供である事が発覚したのだと言う。

 アレックスも銅像が気になるので、ジョシュから銅像の位置を聞いて今度見にいく事にした。

 しかし母が銅像になっているのか。

 どのような物なのか想像がつかない。


「マーティーもそうだが、アレックスも親が英雄である事を知らないのだな」

「誰からも聞いてないな」

「マーティーに伝えるように言ってあったのだが忘れたようだな……。キャサリンがアレックスと店で会うと伝え聞いていたので、誤解がないように動いていると思っていた」

「皆が少しずつすれ違っていたのか」


 ジョシュはアレックスが母の爵位を知らないとは思わなかったし、キャサリン殿下が事情を知らないとも思っていなかったようだ。皆が皆、見事に少しずつすれ違っていたようだ。


 しかし母が伯爵であってもアレックスが爵位を持っている訳ではないので、実際のところそこまで気にする必要はないのではないだろうか。

 ジョシュに何か気をつけるべき事があるのかと尋ねると、実際アレックスはそう気にすべき事はないと言う。

 キャサリン殿下側の問題だとジョシュが教えてくれた。


「アレックスに関係があるとすれば爵位を継ぐかどうかだな」

「今のところ興味ないんだけど、特殊って言っていたしそもそも継げるの?」

「継ぐ事はできる。マーティーの時に王家に聞いたところ、モイラ伯爵に可能な限り爵位は保持していて欲しいが、何かしらの事情で継ぐ場合は家名を作る必要があると言っていた。アレックスの母であるアレクシア伯爵も同様だろう」

「なるほど。そういえば家名なんて聞いた事ないな」

「伯爵で家名を持っていないのはアレクシア伯爵とモイラ伯爵だけだ」


 騎士なら戦争中の功績で名誉騎士として家名なしが稀にいるが、伯爵では二人だけだとジョシュが教えてくれた。

 スプルギティ村には家名なしの名誉騎士が複数人いる筈だともジョシュが言う。

 アレックスが教わった礼儀作法が正式な物だったのは、名誉騎士が複数いると言うのが関係してそうだ。

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― 新着の感想 ―
>不死鳥の生息域を思い出していると、そういえば一部がドラゴンの縄張りと被っている事に気づいた。 ひょっとして始祖鳥が不死鳥になってませんか?
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