表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 中編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/102

キャサリン殿下−4

 真珠粉を使った化粧品をキャサリン殿下、メグ、パティが楽しそうに話している間に、キンバリーがアレックスに近づいてきた。

 キンバリーが真珠糸の技術の登録がもうすぐ終わる事と、ウルトラポーションも近々登録が終わる事を教えてくれた。

 真珠糸だけでなく、ウルトラポーションまで登録が終わるとは驚きだ。

 随分と急ぎ登録をしたのだろう。


 キンバリーがどちらも登録が終わり次第、生産が始まるように国として動いていると教えてくれた。

 アレックスがキンバリーと話している間に、キャサリン殿下とメグが人によっての違いが見たいと、女性の護衛たちに化粧をしたいと相談している。

 護衛たちが話し合った結果、護衛に支障のないよう交代で化粧をされる事になったようだ。

 化粧をされている女性の護衛たちも嬉しそうにしている。


 キャサリン殿下とメグを見ていると、部屋の外で声がしたような気がする。

 キンバリーと視線を合わせると、同じように声を聞いたのか、護衛についている騎士の一人に目配せをした。すると騎士が部屋を出ていった。

 騎士はすぐに戻ってきて、部屋の中に誰かを伴ってきた。


「アレックス」

「ジョシュ?」


 部屋に入ってきたのはジョシュだった。

 何故ジョシュが部屋に入ってきたのか不思議に思っていると、キャサリン殿下がジョシュに気がついたようで顔を上げた。


「ジョシュ、本当に来たのね」

「アレックスの所だと聞いていたので、重要な事を話していると思ったから来たのだが、話は終わりましたか?」

「重要な事? 今日は挨拶とお礼ですが?」


 キャサリン殿下とジョシュは話が噛み合っていないようで、お互いに不思議そうな顔をしている。

 アレックスとしては二人が何故親しそうに会話をしているのかが不思議だ。

 しかし今は聞けるような雰囲気ではない。

 隣で先ほどまで会話をしていたキンバリーに視線を合わせる。

 キンバリーが小声で、キャサリン殿下とジョシュは婚約者の関係だと教えてくれた。


「え!」


 思わずアレックスは大きな声を出してしまった。

 まずいと思ったが皆に聞こえてしまったようだ。


「すいません。ジョシュとキャサリン殿下が婚約者だと聞いてしまって驚いてしまいました」

「ああ、それか。王太子候補になる前の話だから、今後は白紙に戻る可能性がある」


 ジョシュの話にキャサリン殿下も頷いている。

 二人が婚約者となったのは十年近く前で、家同士が決めた婚約だったようだ。当然十年前にはキャサリン殿下が王太子になると言う話は一切なく、降嫁する予定だったのだとキャサリン殿下が話してくれた。


 王家と伯爵家なら婚約は普通なのだろうか?

 ジョシュが長男ならまだしも、三男なので婚約は珍しい気がする。

 キャサリン殿下がアレックスの疑問を理解したように、ジョシュが最年少で魔導士の資格を取った年に決まったと教えてくれた。

 ジョシュはそんな記録を持っているのか。


 そんなに昔から決まっているのなら、キャサリン殿下の年齢を考えると、既に結婚していてもおかしくはなさそうだ。

 しかしキャサリン殿下が王太子候補となったことで、予定が随分と変わってしまっているのか。

 二人はかなり複雑な関係のようだ。


「私とキャサリンの事より、今はアレックスの事だ」

「私の?」


 ジョシュに呼ばれて何かあっただろうかと疑問に思う。

 何も思い当たらないで居ると、ジョシュがスプルギティ村の住人を探していただろうと、キャサリン殿下に問いかけている。

 故郷の名前が出てきて混乱していると、キャサリン殿下とジョシュが喋り始めた。


「そうですが、それとアレックスが何の関係が?」

「知らないのか?」

「何をです?」

「アレックスはスプルギティ村の出身だ」

「え、うそ!?」


 何故かキャサリン殿下がとても驚いている。

 何故だ?


「メグは何も言っていないの?」

「あえて言う必要はないと思って。オーガである事はアレックスが言った方がいいと思ったし」

「なるほど」


 キャサリン殿下から本当にオーガなのかと尋ねられたので、髪留めを外して角を見せる。皆が何故か本当にオーガだと驚いている。

 何故そこまで驚かれるのか不思議で仕方がない。

 メグに視線を向けてもアレックス同様に、理解できていなさそうな顔をしているので、ジョシュに顔を向ける。

 ジョシュが王太子になるための手順をどこまで知っているかと聞いてきたので、領主になること位と返す。


「そうか。私も最近知ったので知らなくて当然かもしれないな。王太子になる手順として、始祖鳥を見ると言うものがあるらしい」

「始祖鳥?」

「オルニス山に生息しているだろ?」

「居るけど態々なんで?」

「それは……。何でだろな? 私も最近知ったから理由を知らないのだ」


 キャサリン殿下が説明を引き継いでくれた。

 オルニス王国は大雀を友にした少年が起こしたのが始まりとされているらしく、それを倣って始祖鳥を見に行くのが古い習わしなのだと言う。

 ……大雀を友にしたのに始祖鳥を見に行く?

 何故始祖鳥なのかとキャサリン殿下に尋ねると、古すぎて理由が失伝していて分からないのだと言う。

 なので普段は始祖鳥を見に行くことは重要視されていないが、国が揺れるような大きな問題が起きた場合は見に行くことが多いのだと、キャサリン殿下が教えてくれた。


「今回は始祖鳥を見に行った方が良いだろうと、国王陛下から言われているのです」

「それでスプルギティ村の人を探していたのですか」

「はい。ゲラノスで手紙は残しましたが、まさか王都に住んで居るとは思いませんでした」


 王太子がオルニス山の近くに領地を持つのは、始祖鳥を見に行くための足がかりにする為でもあると、キャサリン殿下が教えてくれた。

 キャサリン殿下の事情は分かった。

 分かったのだが、アレックスとしてもどうしようもない事がある。


「キャサリン殿下、連れて行きたいのは山々なんですが……」

「やはり難しいですか?」

「難しいというか、もうすぐ始祖鳥が生息している辺りまでオルニス山に雪が積もるのです。キャサリン殿下では行くのは無理かと」

「雪?」

「はい」


 山の魔物に関しては手伝って貰えれば問題はないと思う。しかし雪に関してはどうしようもない。

 雪の降ったオルニス山は慣れている村の者でも危険なのに、キャサリン殿下では命に関わる可能性が高い。

 そのような場所に連れて行く訳にはいかない。

 アレックスは雪の積もったオルニス山の危険性を説明をすると、キャサリン殿下は納得した様子だ。


 キャサリン殿下から雪が積もっていない時なら案内をして貰えるのかと尋ねられた。

 アレックスはなるべく安全に始祖鳥を見に行く方法がないか考えていく。

 村の皆に協力をお願いしたり、友人にお願いをすれば、山を登れない事はないだろう。

 事前に準備は必要だが、案内できそうだ。


「案内は可能です」

「ということはドラゴンと交渉できる人が居るのですね」

「ドラゴン?」

「はい。国王陛下から始祖鳥を見るためにはドラゴンとの交渉が必要だと聞いています」


 始祖鳥を見るためにドラゴンとの交渉……?

 始祖鳥とドラゴンは特に何の関係もない。

 分からないので、キャサリン殿下に何故交渉が必要か聞く。国王陛下は始祖鳥を見に行っているが、その時にドラゴンと交渉をしているのだと教えてくれた。

 国王陛下は始祖鳥を見に行った事があるのか。

 という事は何らかの交渉を本当にしているということだ。何のためにドラゴンと交渉をするのかをアレックスは考えていく。

 村の皆からは国王陛下を案内をしたなどの話を聞いた事がない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ