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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 中編

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真珠織−2

 自宅へと帰ってくると、メグはキンバリーの元に行ってくると言って、アネモスに乗って出掛けて行った。

 メグを見送りながら、そういえば前回ワイバーンが出たことで、途中で話を切り上げたのだと思い出す。キンバリーがもう一度話がしたいと言っているのは、メグ経由で聞いてはいる。しかしキンバリーは忙しいようで会えていない。

 なので未だに第一王女を手伝うかの返事ができていない。

 それに第一王女と会う約束もある。


 そんな事を考えつつも工房へ移動する。

 今日は何を作るか迷う。布が織れる速度がわからないので、糸を先に加工しておく事にした。

 幸いな事に貝殻は大量にある。


 最初に皮膚に触れると軽い怪我をする液体を使うので、水が入り込まない手袋をして怪我をしないように注意する。

 まずは貝殻の表面の汚れを取り除くために、溶媒で貝殻を溶かしてしまう。溶かすのには時間がかかるので、貝殻を溶媒へと漬け込んでいく。

 溶かしている間に糸を加工する。糸に貝殻の表面を吸着させる為に作った液体に糸を沈めていく。

 糸の処理を終えると、丁度いい時間になったので、貝殻を水で洗っていく。

 汚れを落とした貝殻は綺麗な光沢が貝殻の表面に現れる。


 次に糸車に似た魔道具を取り出す。

 元々は糸車だが、少し改造して貝殻を置く場所を作っている。貝殻の上を糸が通るようになっていて、貝殻が削れて糸に模様が吸着する様になっている。

 糸を液体の中から取り出して、糸車へと取り付けていく。

 準備が整ったので、糸車を回し始める。糸を貝殻に擦り付けながら送っていく。

 最後に糸を安定化させるための薬剤を掛ける。


 糸が大量に売れる様なら、この作業も自動化させた方が良いなと思いながら淡々と作業を続ける。

 時々ポーションを買いにくるお客さんの接客をしつつ、糸車を回し続ける。一巻きの糸に貝殻の模様をつけ終わったところで、良い時間になってきた。丁度良いので今日の作業は終わる事にした。


 夕食を作っているとメグが帰ってきた。

 途中からメグも夕食を作るのを手伝ってくれた。完成した夕食を机に持っていって喋りながら食べていると、メグがキンバリーが来る時期について話し始めた。


「まだ忙しいみたいだけど、一週間以内には来たいって言ってたわ」

「好きな日に来てもらって良いけど、本当に忙しそうだね」

「そうみたい。護衛以外にも各種手続きとか、必要な物の準備もしてるみたい」


 騎士の仕事ではないものが混じっている気がするが、それだけ人が足りていないと言う事なのだろうか。キンバリーは以前に鎧の注文にも自らが行っていたな……。やはり相当人が足りていなさそうだ。

 キンバリーの元に行っても良いのだが、どちらにせよまとまった時間が取れないのだと以前に聞いた。

 それならばメグ経由で第一王女についての返事をしても良いとは伝えてあるが、第一王女についてまだ話したい事があると、正式な返事はまだしていない状態だ。

 本当に忙しそうだ。

 アレックスは立て込んでいる予定もないので、キンバリーには予定が空き次第、好きな時に来てくれれば良いとは伝えてある。

 メグと話しているとまた第一王女やキンバリーを手伝いに行くと言うので、改めて好きな時に来てくれれば良いと伝えた。


 結局キンバリーが訪ねてくると連絡があったのは、裁縫店に行った日から数えて五日後で、七日後に訪ねるとの事だった。

 今日はその七日目で、キンバリーを待っている。

 七日の間に全ての糸を完成させて、裁縫店のパティに持って行っている。

 持って行った時に布がすでに完成していたので一部を受け取った。

 受け取った時に糸を変えればもっと綺麗になると言われたが、適当に選んだ糸でも綺麗な布に仕上がっている。

 布を広げて何に使えるかと考えていると、キンバリーがやってきた。

 挨拶をした後、キンバリーが謝ってきた。


「こちらからお願いをしているのに随分と時間がかかってしまった」

「気にしないでください。忙しいのは聞いていますから」

「そう言ってもらえると助かる」


 お茶を出した後、早速話が始まった。


「改めて尋ねさせてもらうが、第一王女に力を貸して貰えるだろうか?」

「私でよければ手伝います」

「感謝する」


 キンバリーが頭を下げて感謝してきた。

 書類のような物がある訳ではないので、口約束になるが王族と貴族相手になるのだから簡単に破棄できるような物ではない。

 しかし力を貸すと言っても何をすれば良いのだろう。錬金術師なのでやはり何か物を作る事を手伝う事になるのだろうか?

 キンバリーに改めて尋ねてみる。


「最初は錬金術師として力を借りるつもりでしたが、随分と戦える様ですから戦闘でも力を借りられると助かります」

「戦闘ですか? 私はある程度は教わっていますが強くありませんよ?」


 強くないと言うと、キンバリーの顔が怪訝な表情となる。

 メグがキンバリーに「アレックスは本当にそう思っている」と伝えると、更になんとも言い難い表情となった。

 キンバリーからワイバーンを討伐した時の話は聞いていると言われる。

 キンバリーは騎士なので討伐の話を知っていても不思議ではない。しかしワイバーンは倒したがそれがどうかしたのだろうか?


 首を捻っているとメグから普通は一人でワイバーンを倒せないと言われた。

 そういえば似た様なことをジョシュにも以前言われた気がする。

 ワイバーンは飛んでいるのが面倒だが、倒せない魔物ではないと思っているので、どうしても認識が変わらない。

 また忘れてしまいそうだが、王都ではワイバーンを倒せれば戦えるというのを覚えておく。


 どうしても戦闘というものには苦手意識があるので、魔物によっては手伝えるが、錬金術師としての依頼の方が嬉しいとは伝えておく。

 キンバリーも頷いてくれた。

 一応事前にどの様なものが欲しいかと尋ねておく。


「私の傷を治したハイポーションは絶対に欲しい」

「分かりました」

「後は随時頼んでいく事になる。ああ、そうだ。依頼は国からとなるので、錬金術師としての活動期間が差し引かれる」


 そういえばすっかり忘れていたが、国の依頼を全然受けていない事に言われて気がついた。

 元々の予定では国の依頼を受ける予定だったのだが、随分と違う生活を送っている。更に第一王女の手伝いをする事になったし、活動期間を終えたとしてもすぐには故郷に戻れそうになさそうだ。

 メグとの事もあるし、将来的には故郷の村に戻るかどうかも考えないといけないだろう。


 将来のことはメグと話す事にして、まずは作ったハイポーションをキンバリーの前に差し出す。

 怪訝な表情でハイポーションを手に取ったキンバリーは、すぐにハイポーションだと気づいたようで目を見開いている。


「これはあのハイポーションなのか?」

「はい。メグに渡した物の予備です」

「まだ予備があったのか。しかしメグのハイポーションは大半を使ってしまったが良いのか?」


 メグにまたハイポーションを使うほどの事があったのかと尋ねる。

 何故かメグが苦笑して違うと言う。


「キンバリー勘違いしているわ」

「勘違い?」

「私が持っているハイポーションは新しく作ったものよ」

「本当か?」


 疑っている様子のキンバリーに、メグが魔法鞄からハイポーションを複数取り出した。

 キンバリーが順番にハイポーションをじっくりと確認している。

 全てのハイポーションを確認したキンバリーが「ハイポーションではある様だが、以前と同じ物なのか?」と尋ねてきた。アレックスは同じ物だと言って頷いた。

 メグから聞いているかもしれないが、ハイポーションに混ぜている失敗作のエリクサーの説明をした。

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