表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/102

帰宅

 アレックスは王都に帰ってくると、ワイバーンを騎士団から指定された場所に魔法鞄から取り出す。

 ワイバーンがどう操られていたか調べるために、なるべく解体しないで持ち帰りたいと騎士団の団員たちが話していた。アレックスの魔法鞄であれば解体しないで持ち帰る事が可能だと申し出た。

 話し合った結果、アレックスの魔法鞄に入れる事になった。

 四体のワイバーンを出し終わると、ジョシュがお礼を言ってきた。


「アレックス、助かった。ワイバーン討伐の報酬は後日私が持っていく」

「分かった」


 報酬について話を聞いていなかった事に気づいた。

 討伐の依頼が渡りに船だったこともあって、細かい事を確認する前に出発してしまったようだ。

 王家からの依頼だからしっかりと報酬は払われるだろう。


 騎士団の団員は忙しそうなので、アレックスは家に帰る事にする。

 ジョシュに声を掛けると、ジョシュ以外の団員たちからも助かったや、また頼むなどと声をかけられた。

 合計で五日ほどの旅だったが、皆年上だったからか随分と親切にして貰った。

 アレックスは頭を下げてお礼を言う。


 ピュセーマに乗って家へと戻る。

 ワイバーンを倒してからピュセーマは機嫌が良いが、今日は帰れるからか更に機嫌が良さそうだ。

 家の前に降りるとピュセーマから鞍を取り外してやり、今日はもう出かける気はないのでゆっくりするようにと声を掛ける。


「チュンチュン!」


 ピュセーマは元気よく鳴くと、三階の部屋へと飛んでいった。

 同じようにアレックスも家に入ろうと玄関を開ける。

 家の中に入るとメグが抱きついてきた。


「アレックス!」

「ただいま、メグ」


 メグは抱きついたままおかえりと言った後に、怪我はないかと聞いてきた。怪我ひとつない事を伝えると、メグは良かったと呟いた。

 どうやら随分と心配をかけてしまったようだ。

 しばらく抱き合い、少しするとメグが離れた。


 店は空いていたので、メグは店番をしていてくれたようだ。メグに店を臨時休業にして、話をしようと誘うと、頷いてくれた。

 ワイバーンを討伐した時の話をすると、メグは驚きながらも話を聞いてくれる。


「四体もワイバーンが出て二体も倒したの?」

「ピュセーマが一体で、私が一体だよ」

「空中でワイバーンを倒すなんて初めて聞いたわ。しかも一人で」

「メグだって倒したじゃないか」

「あれはアレックスから借りた魔道具の力だから」

「私の場合も魔道具だよ」


 ズボンに付けている魔道具を取り外してメグに見せる。

 魔道具の見た目は皮の地に金属の板を付けてある。あまり見ない形の魔道具で、アレックスが作り出した物だ。

 組み込まれている魔道具としての機能は結界なので、実はそう珍しい物ではない。

 珍しいのは結界の向きが違うことだ。

 普通は使用者を守るように結界を張るのに対して、逆に使用者に対して結界を張るように調整している。しかも結界は使用者に追従しないで、空間に固定される。すると魔道具を使えば結界の上に乗ることが可能になる。

 メグに使ってみるようにと勧めると、魔道具を使って空中に立っている。


「不思議な感じがする。これは大鳥から落ちてしまった時に使えないの?」

「使えると言えば使えるんだけど、結界と同じで一定以上の衝撃で壊れてしまうし、衝撃が抑えられる訳ではないから、結界を張る瞬間を見極めないと大変な事になる」

「普通に命綱をつけた方が良さそうね」

「そちらの方が安全だね」


 アレックスのように物を飛ばす魔法と連携できれば地上に降りることも可能だが、魔道具だけで空から地上に降りようと思ったらかなり大変だろう。

 魔道具は訓練をすれば使えはしなくないが、メグが言った通り、命綱を付けて大鳥から振り落とされないようにした方が安全だ。

 稀に命綱なしの方が格好が良いと言う人がいるらしいが、アレックスとしては何が格好が良いのか分からない。


 メグが魔道具を使って空中を動き回った後、魔道具をアレックスに返してくれた。

 楽しいなら一つ作ろうかと提案すると、メグは迷っている。

 迷うほどなら、作って贈る事にした。

 それにメグならアレックスとは違った使い方を思いつくかもしれない。


 話が終わった後に、メグが旅から帰ってきたばかりだからと、お風呂の準備をしてくれた。

 アレックスはありがたくお風呂に入る。


 アレックスは起きると伸びをする。

 昨日はメグが一日色々と世話をしてくれたお陰で、随分と疲れが取れた気がする。

 ピュセーマは休めただろうかと、一緒に起きたメグと見に行く事にした。

 三階の部屋に入ると、ピュセーマとアネモスが仲良く寄り添っている。ピュセーマに休めたか尋ねると、元気に返事をしたのでしっかりと休めたようだ。

 健康状態を確認していくと、ピュセーマが埃っぽい事に気づいた。

 旅をした後だから仕方ないが、これは洗ってやった方が良さそうだ。水浴びさせるかと考えていると、ピュセーマが銭湯を気に入っていた事を思い出した。

 せっかくなのでメグも誘って行きたいが、アネモスは銭湯が好きかどうかが分からない。

 メグに尋ねてみる事にする。


「メグ、アネモスって銭湯は好き?」

「好きだけれど。何で?」

「ピュセーマを連れて行こうと思って、せっかくだから一緒に行かないか?」

「良いわね。アネモスとピュセーマが行きたいって言うなら行きましょう」


 ピュセーマとアネモスに銭湯はどうかと尋ねるために、二羽が寄り添っている方に顔を向けると、二羽からの視線を感じる。

 何となく二羽が目を輝かしているようにも見える。


「銭湯行く?」

「「チュン!」」


 元気よく二羽は返事をした。

 巣の中から立ち上がって今すぐにでも行こうとしているのが分かる。

 まだ準備ができていないと、準備をしてから玄関で呼ぶので出てきて欲しいと伝えると、急かされるように突かれる。

 すぐに準備するからと伝えて、メグと慌てて部屋から出る。


 部屋を出ると一息付く。

 メグと顔を見合わせて笑い合う。

 二人で、あそこまで急かされるとは思わなかったと話し合った。


 ジョシュと会って以降もピュセーマを連れて銭湯には行っていたが、今回のような反応は初めてだ。よほど行きたかったのだろう。

 メグと準備をして店から出る。

 二羽を呼ぶとすぐに部屋から降りてきた。

 鞍を取り付けて乗ると、二羽はすぐさま空に飛び上がる。指示を出すこともなく、目的地の銭湯へと一直線に飛んで行く。


 銭湯に着くと受付でお金を払い、二羽に待っているようにお願いして、アレックスとメグは別々の更衣室で着替える。

 ピュセーマが銭湯を気に入ったので、水着は銭湯専用に買い直した。

 更衣室を出て少し待っていると、メグが水着姿で現れた。

 女性的な柔らかさと、戦うために鍛えられた体に水着が似合っている。


「メグ、似合ってるよ」

「そう?」

「うん。とても」

「ありがとう」


 メグは照れているのか少し顔を赤らめている。

 更に水着姿のメグを褒めているとピュセーマとアネモスに突かれる。普段であれば会話が終わるのを待ってくれるが、よほど二羽はお風呂に早く入りたいようだ。

 急かされるように突かれるので、お風呂に入る前に二羽をまずしっかり洗っていく。

 洗い終わったら早速温泉へと入る。


 二羽が仲良く並んで浸かっている横で、アレックスもメグと一緒にお風呂に浸かる。

 大鳥は体が大きいからか大半が長風呂となる。付き合っていたらのぼせてしまう。

 アレックスとメグはある程度体が温まったところでお風呂から上がる。

 二羽が満足するまで、浴槽の横に設置されている休憩所でメグとのんびり話しながら時間を潰した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ