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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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ワイバーン−3 Side ジョシュ

 ジョシュはアレックスに一体のワイバーンを引き付けておいて欲しいと指示を出した後、やはり心配でアレックスを視線で追ってしまう。

 空中でワイバーンを倒せるとは言っていたが、騎乗していると攻撃手段が魔法しかなくなってしまう。アレックスが魔導士になれるほどの魔法を使えるのは分かっているが、装備している物が近距離での戦闘を得意としているように見える。

 どう戦うのだろうと心配になる。


 騎士団が高度を下げる中、ジョシュは事前に決めていた方角を確認しながら、上空を確認する。

 アレックスが乗るピュセーマは凄まじい速度で高度を上げていく。

 魔法を使っているのだろうと予想はできるが、あんな速度で飛ぶ大雀はあまり見た事がない。凄まじい速度のままワイバーンに肉薄していくのが分かる。

 遠くてよく視認できないが、火の魔法を使ったようだ。


「ワイバーンが出たぞ!」


 騎士団の騎士が大声を出した方向を見ると、地上付近に二体のワイバーンが見える。

 数は聞いていた通りのようだ。

 アレックスの方に行かないように騎士たちで、上から抑え込むように地上付近まで押し戻す。

 翼の皮膜に傷を付けて簡単には飛べないようにすると、騎士団は二人を空に残して、大鳥から地上に降りる。大鳥は上空でワイバーンが飛ばないように上から攻撃を指示する。


「まずい! 四体目が出たぞ!」


 四体目が出たとの声にジョシュが慌てて上空を確認すると、ワイバーンが空を飛んでいるのが見える。

 可能性としては話し合っていたが、まさか本当にもう一体いるとは!

 このままではアレックスが二体のワイバーンと戦う事になってしまう。地上に降りてしまった状態から、上空のワイバーンに近づくのはソフォスに乗っても近づくに時間がかかり過ぎる。


 アレックスを確認すると、随分と高度を落としている事に気づいた。

 地上から飛び上がったワイバーンと近すぎる!

 焦るがどうしようもなく、アレックスがもう一体のワイバーンに気づくことを祈るしかない。

 祈るように見ていると、アレックスがピュセーマから飛び降りたように見えた。

 飛び降りた!?


「!?」


 声にならない叫びをジョシュが上げていると、アレックスが空中で静止したのが分かった。次の瞬間魔法陣が出現して、その魔法陣にアレックスが突っ込むと消えた。

 落ちてしまったのかと一瞬思ったが、新しく現れたワイバーンを確認すると、アレックスが剣を振って頭部を殴りつけている所だった。

 アレックスはそのままワイバーンの背中に乗ったのか、しばらくするとワイバーンが暴れ始めた。

 再びアレックスが落下すると、空中で静止して、魔法陣が再び出るとアレックスが魔法陣に突っ込む。今度は注意していたからかどうなったか見えた。

 どうやらアレックスは空を飛んで移動しているようだ。


 飛び回ってワイバーンを攻撃しているアレックスを見てジョシュは混乱する。

 いや、人間は飛べないのだぞアレックス。

 飛べないからこそ大鳥に乗って戦うというのに、アレックスは何故空を飛んでいる?


「ジョシュア! 心配なのは分かるが集中しろ!」


 衝撃的な光景に衝撃を受けていたら、騎士団の仲間に注意をされた。

 心配というよりも驚きの方が勝っているのだが、今は確かに目の前のワイバーンを倒す事に集中すべきだろう。


 空を飛んでなくともワイバーンの巨体は強力な武器となる。足の鉤爪は歩いている状態であればそう脅威ではないが、迂闊に近づけば鋭い牙や尻尾の攻撃で致命傷になりかねない。

 ワイバーンは威嚇するように鳴きながら、翼と一体になっている前足と後ろ足で動き回っている。

 空を飛んでいる時と比べたら鈍い動きをしている。

 それでも簡単に近づけない為、魔法で攻撃して徐々に弱らせていく。

 ワイバーンを一撃で倒すような魔法を使えなくもないが、魔法が外れれば大きな隙になってしまう。

 ワイバーンが地上二体で上空に二体の状態で、騎士団の騎士と魔道騎士が十人では、大きな隙ができてしまうと一気に陣形が崩れかねない。


「くそ! もっと人を連れてくるべきだった」

「城の警備をこれ以上手薄にするわけにはいかないだろ?」

「ジョシュア、そうは言ってもこの人数では大変だぞ」


 騎士団の団員は貴族出身の者が殆どだが、辛い現状に言葉が荒々しくなっている。


 ワイバーンは巨体なだけあって、魔法を直撃させても中々弱っていかない。それでも徐々に傷が増えていき、そろそろ騎士が前に出れるかと考えていると、突然凄まじい音が森の奥から響き渡る。

 何が起きたのかとワイバーンを警戒しながら確認すると、森の奥に土埃が上がっているのが見える。

 何かが移動してできたようには見えない。

 むしろ巨大な物が落ちたかのような土煙だ。

 もしやと思い上空を確認すると、ワイバーンが一体になっている。アレックスはまだ戦っているが、ピュセーマの相手はいない。


 まさかピュセーマだけでワイバーンを倒したのか?

 本当にワイバーンがいないのか確認をしていると、アレックスが大きく剣を振るのが見えた。次の瞬間ワイバーンの片方の翼が切り飛ばされる。ワイバーンは当然飛べなくなって地上に落ちていく。

 アレックスは飛び上がるとピュセーマが回収するのが確認できた。

 ワイバーンが地上に落ちたのか再び凄まじい音が響く。


 ジョシュが対峙しているしているワイバーンは、上空のワイバーンが倒された事を察したのか逃げようと翼を広げた。

 翼に傷が入っているからか簡単には飛び立つ事ができないようだが、無理矢理にでも飛ぼうとしているのが分かる。

 このままでは飛ばれてしまうと慌てる。

 周囲の騎士団の団員も慌てたようで声を荒げた。


「このままではまずいぞ!」

「分かっている!」


 翼に魔法を打ち込んで飛ばないようにする。


 魔法を打ち込んでいると、ワイバーンの上にピュセーマが近づいてくるのが見える。

 ピュセーマとアレックスが魔法で攻撃をし始めた。

 ワイバーンは飛ぶに飛べなくなったようだ。上空を抑え込まれたからか、動きが一気に悪くなる。

 ワイバーンに攻撃を当て続けると徐々に弱ってきて、騎士が近距離での攻撃を仕掛けられるほどに動きが緩慢になってきた。

 強めの魔法を当てると、ワイバーンが倒れ込んだ。騎士が一気に踏み込み、ワイバーンの首を落として素早くその場を離れる。

 首が離れた胴体が暴れている。


 もう一体のワイバーンを確認すると、同様に首を落とされている。

 何とかなったようだと大きく息を吐き出すと、アレックスの乗ったピュセーマが空から降りてきた。


「ジョシュ、怪我人は?」

「全員立っているから大丈夫だと思うが、確認をしよう」


 お互いに怪我がないか確認するようにと指示を出すと、大鳥含めて怪我の有無を確認していく。

 確認の結果、怪我はかすり傷程度でポーションを飲んでおけば回復する程度だったようだ。

 ジョシュも念の為にポーションを飲んでおく。


 アレックスに上から援護してくれた事を感謝して、一体のつもりが二体も相手をさせてしまった事を謝る。

 アレックスが笑いながら二体くらいなら気にしないと返してくれた。

 地上の魔物ならまだしも、飛んでいる魔物は普通そんな事を言えないのだが……。


 アレックスと話していると、空に残った騎士団の団員二人が遅れて戻ってきた。

 二人はワイバーンを操っている人がいないか確認する役だったが、誰も連れてきていない。

 偶然ワイバーンが狩りの仕方を覚えたのかと思ったが、捕まえたが自死をされてしまい、遺体すら残っていないと報告がされた。

 やった事を考えればどうなるかは分かり切っているが、そこまでするか……。

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