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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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ワイバーン−2

 王都の上空でアレックスはジョシュに何処に向かうのかと尋ねると、騎士団の訓練場へと向かうと言うので着いていく。

 訓練場には既に十羽ほどの大鳥が集まっており、周辺には騎士や魔道騎士などが忙しく動き回っている。

 そんな中にソフォスとピュセーマが降り立つ。

 ジョシュは少し待っていて欲しいと言って何処かに行ってしまった。手続きでもあるのだろう。

 待っている事にした。


 暫くすると、周囲で忙しく動き回っていた人の動きが変わって来たのが分かった。同時にジョシュも走って戻ってきた。

 ジョシュが近づいてきて、もうすぐ出発すると教えてくれる。

 食料を貰って隊列について聞き終わると、突然大声が響き渡る。


「騎乗!」


 突然の大声に驚きながらもピュセーマに乗る。

 次に離陸という言葉と共にピュセーマに合図を出す。大鳥が一斉に飛び上がった。ジョシュから聞いた通りに隊列を組む。

 ワイバーンがいる地点までは二日から三日かかるというので、警戒は程々に空の旅が始まった。


 二日間の旅で、ジョシュ以外の騎士や魔道騎士とも仲良くなった。アレックスと同年代の人が居ないので、随分と可愛がられている気がする。

 二日目の飛行なので注意をしているが、今のところワイバーンは見当たらない。

 ワイバーンの討伐は三日目まで持ち越しかと思っていると、急にピュセーマがジュージューと警戒する鳴き声を上げた。

 周囲を確認すると上空にワイバーンが一体見える。

 メグに聞いた話だと一体は囮で下からワイバーンが襲いかかってきたと言っていた。そうすると下にもワイバーンが居るはずだ。

 下に視線を向けると森が広がるだけで、今のところワイバーンは見えない。森の中に隠れている可能性が高そうだ。

 どうするべきかと迷っていると、ジョシュから話しかけられる。


「アレックス、以前に飛んだままワイバーンを倒せると言っていたが、本当に出来るのか?」

「一体なら確実に倒せるけど下にワイバーンが居るとしたら難しいかも」

「下のワイバーンは我々が引き付ける。無理に倒さなくて良いので、上のワイバーンを引き付けておいてくれないか」

「分かった」


 アレックスが同意すると同時にピュセーマが力強く鳴いた。

 ピュセーマは随分とやる気のようだ。

 行こうかとアレックスが言うと、ピュセーマの飛び方が変わる。魔法を使って飛び始めたようだ。上に向かって飛んでいるのに速度が下がるどころか上がっていく。

 遠くに見えていたワイバーンがしっかりと視認できる距離まで一気に近づいた。

 近づいたワイバーンが随分と慌てているような動きをしているのが分かる。大雀がこんな速度で飛ぶことは普通ないので、ワイバーンが驚くのも理解はできる。

 理解はできるが、大きな隙だ。


 ピュセーマは速度を落とす事なく更に近づいていく。

 かなりの近距離となったところでピュセーマが火の魔法を放った。火の魔法を追いかけるようにピュセーマは飛び続ける。火の魔法でワイバーンの視界に入らないようにしているようだ。

 ワイバーンが魔法を避けたところで、ピュセーマは鉤爪でワイバーンの翼を掴んだ。


 ワイバーンは上手く羽ばたけなくなったのか高度を落としていく。ピュセーマが羽ばたくのを止めると高度は一気に落ちていく。

 どうやらピュセーマが戦いやすい高度まで落としてしまうつもりのようだ。

 ワイバーンとどう戦うかはピュセーマに任せる事にする。

 ワイバーンが暴れているがピュセーマが押さえ込んでいるので、身動きがうまく取れない状態のようだ。ワイバーンは尚も首を捻って噛みつこうとして来ているが、ピュセーマが魔法で弾き返してしまう。


 ピュセーマがワイバーンの翼を離したのか、ワイバーンとの距離が若干できると、得意とする攻撃魔法を元にしたスキルを使って攻撃している。

 ワイバーンが悲鳴のような鳴き声を上げる。

 かなりの傷を負ったようでワイバーンの飛び方はおぼつかない。


 アレックスも攻撃に参加しようとしたところで、視界の端に別のワイバーンが見えた。

 騎士団が引き付けるのに失敗したか、思ったより高度を落としすぎたのかもしれない。そう思って地上を確認すると、何故か下にワイバーンが二体居る。

 地上に二体で空に二体。

 三体だと思っていたワイバーンは四体になっている。元々五体だったのか、短期間で一体増やしたのだろうか?

 何にしろ今居るのは四体だ。

 アレックスは空にいる二体を相手する必要がある。ピュセーマに乗りながら二体を同時に相手するのは難しいので、別々にワイバーンを相手する事にした。


「ピュセーマ、一体は任せて良いか?」

「チュン!」

「終わったら迎えに来てくれると嬉しい」

「チュン!」


 ピュセーマなら相手がワイバーンでも、邪魔されなければ倒すことが出来るだろう。


 命綱としてピュセーマの鞍と繋がっていた紐を外すと、アレックスは鞍から飛び降りる。

 当然空の上で飛び降りれば体は落下していく。

 アレックスはズボンに付けた魔道具を使用して空中に足場を作る。見えない足場に着地すると同時に、新たに現れたワイバーンに向けて魔法陣を多重に十枚展開する。

 魔法陣は物を飛ばす為の魔法で、飛び込んだ物の速度が上がるように作られている。

 ワイバーンの位置を確認して、身体能力を上げるスキルを使って全力で魔法陣に飛び込む。

 魔法陣を通る毎に速度が上がっていく。

 アレックスは空を飛ぶようにワイバーンに向けて突き進む。


 流石のワイバーンも羽のない人が飛んでくるのは初めての経験なのか、口を開けて固まっている。

 丁度いいと剣で頭をかちあげる。

 そのまま剣を支点にしてワイバーンの背中に降り立つ。背中から頭を確認するが、頭部に大きく傷は入ったが、ワイバーンの大きさが大きさなので、致命傷にはなっていないようだ。

 痛みからかワイバーンが暴れ始めたので、剣をワイバーンに突き刺して振り落とされないように体を固定する。

 アレックスが背中にいる事にワイバーンが気づいたのか、噛みつこうとしてくる。アレックスは魔法で攻撃しつつワイバーンから飛び降りて、先ほどと同じように魔道具で足場を作って魔法陣を出して飛び込む。

 ワイバーンも何も考えていない訳ではないようで、魔法陣から逃げようとする。

 それならば軌道を曲げるだけだと魔法陣の角度を調整する。


 巨体のワイバーンを一人で倒すのは大変で、何回も背中に乗って攻撃を繰り返した。

 ワイバーンは流石に疲れて来たのか動きが緩慢になった所で、地上を確認して翼の片方を根元から叩き切る。

 片方の翼で飛べるはずもなく、ワイバーンは落ちていく。

 アレックスは落ちていくワイバーンの背中で物を飛ばす魔法陣を展開して、魔法陣の中に飛び込んで空に射出される。


 アレックスは空を勢いよく飛んでいく。

 速度が落ちて自由落下となる瞬間にピュセーマが現れて、下から掬い上げるように鞍の上に乗せてくれた。


「ピュセーマ、ありがとう」

「チュンチュンチュン!」

「ピュセーマも倒せたかい?」

「チュン!」


 ピュセーマが当然と言うように返事をしたので、確認するまでもなく死んでいるのだろう。

 アレックスが落としたワイバーンも、片方の翼しかない状態でそこそこの高度から墜落すれば、ワイバーンといえども即死するだろう。

 騎士団が相手をしているワイバーンを確認すると、逃げ出そうとしているのが見えた。

 逃すわけにはいかないと、ピュセーマに指示を出して上空からワイバーンを抑え込む。ワイバーンの動きが一気に悪くなり、騎士団によってワイバーンは討伐された。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 アレックス凄すぎ。 このアレックスが全然相手になら無い、お母さん凄すぎ。
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