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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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ハイポーションー2

 エリクサーの話は失敗作であるが故に話が長くなってしまった事をメグに謝る。

 メグから話の長さは気にしないが、事前に説明はしておいて欲しいと改めて怒られた。

 確かにその通りだと反省する。


「アレックス、騎士のキンバリーが会ってお礼をしたいと言っているのだけど、いつなら会えそう?」

「今は仕事を受けていないからいつでも良いけど、メグに渡したハイポーションだし、私へのお礼は別に必要ないよ?」

「キンバリーは騎士だからそうもいかないわ。それにキンバリーの家系は侯爵家だし」

「侯爵なの?」

「キンバリーは侯爵家の血筋なの。流石にお礼をなしというのは無理だと思うわ」


 確かに貴族がお礼なしは無理だろうと納得する。

 相手側の都合で良いとメグに伝えると、明日伝えに行くと言う。


 そういえば、メグの話の中で第一王女もアレックスに会いたいと言っていた事を思い出した。メグに第一王女はどうするつもりなのかと尋ねると、視線を逸らされた。

 視線を合わせないままメグは小さい声で「キンバリーと一緒に考えるわ」と言う。


 メグの様子からどうやら本当に会うことにはなりそうだ。

 しかし田舎から出てきたので礼儀作法などきちんと習っていないので、失礼があるのではないだろうかと不安になってくる。

 メグに礼儀作法はどうすれば良いかと尋ねてみる。第一王女側が会いたいと言っているのだから、よほど失礼な事をしなければ問題ないとメグが言う。

 一応メグに礼儀作法について質問していくと、割と知っている事が多くて逆に驚く。


「アレックスは何でそんなに貴族の礼儀作法を知っているの?」

「父や村人から教わったんだけど、これ貴族の礼儀作法だったんだ」

「何故貴族の礼儀作法を教わっているかは不思議だけれど、今は運が良いわね」


 父は村の外から来た人なので礼儀作法を知っていても不思議ではないが、何故村の皆が礼儀作法を知っていたのかは不思議だ。

 だが今はメグの言う通りで、礼儀作法を教わっていて助かった。

 これで第一王女の前に出ても失敗しなければ問題はなさそうで安心する。


 キンバリーという騎士や第一王女に会う必要があるが、まずはメグが無事に帰って来てくれた事を喜ぶ。

 大変な旅から帰ってきたメグにはゆっくりして貰う為、食事だったりお風呂だったりと準備する。


 次の日メグは元気な様子で、キンバリーがいつ会いに来るかの日程を尋ねに出掛けて行った。

 アレックスは魔力を使い切ってしまった腕輪の整備をして、魔力を回復させるための魔道具に腕輪を乗せておく。

 次はハイポーションの瓶を追加でモリー工房にお願いしに行く。

 瓶を作って貰って帰ってくると、メグも丁度同じ時に帰ってきた。


「メグ、おかえり。どうだった?」

「今は忙しいから一週間後に店に来るって言って」

「え? 店に来るの? 会いに行くんじゃなくて?」

「そうみたい」


 貴族が相手なので、アレックスが会いに行く物だと思っていたが、相手が来るとは……。


 メグは別の場所にまた出かけて行った。

 貴族が来るのならば、部屋の掃除をした方が良さそうだ。

 一応毎日簡単に掃除はしているが、店を開いたばかりとは言え二ヶ月経っているので汚れていないか気になる。

 貴族や表で接客できない来客があった時に、応接室として作った部屋を一応綺麗にしておく。掃除を始めるが、一度も使った事がないのでとても綺麗だ。

 今更だがハンクさんが来た時にこの部屋を使うべきだったかもしれない。

 元々はジョシュが来た時に人目を気にしないで話せるようにと作った部屋なので、すっかり存在を忘れていた。

 今回は忘れずに使えそうだ。


 店全体の掃除を終えたところで、メグが帰って来てニコルさんが夕食でもどうかと呼んでいると言う。

 蘭の館でニコルさんと夕食を食べて一日が終わった。

 やはりメグの両親は不在で会える事はなかった。やはりワイバーンの件で騎士団は随分と忙しく、家に帰ってくることすら不可能だとニコルさんから教わった。

 第一王女が王都に帰ってきたら解放されるのかと思っていたが、どうやらどうではなさそうだ。騎士は本当に大変そうだ……。


 あっという間に一週間が経った。

 メグがキンバリーを迎えに行くと出て行ったので、アレックスは店で待っている。

 今日は来客があると言うことで、店を臨時休業とした。

 メグがキンバリーという騎士であろう女性を連れて帰って来た。見た目的にはおそらく同年代で、髪の毛は緑がかった銀髪なのだろうか、あまり見たことのない色合いをしている。

 メグに紹介されて自己紹介をする。


「アレックスです」

「キンバリー・ド・テイラーだ。キンバリーと呼んでくれて構わない」

「えっと……」


 この流れはジョシュでも同じ事をしたなと思い出す。何となく同じ事になりそうだと、メグに確認をすると問題ないと言うので、キンバリーと呼ぶ事になった。

 応接室へと案内して、お茶や茶菓子を出す。


 お茶を用意していて今更ながらに気づいたが、キンバリーはハンク防具店で防具の注文をしていた人だ。

 ハンクさんがたじたじになるほどの注文をしていたが、理由が全て分かった状態だと、無茶をしてでも注文しなければいけない状態だったのだろうと納得する。

 そういえばメグの旅の話の中で防具は数が増えていたようだし、ハンクさんがあんなにやつれていた理由も納得だ。ハンクさんも事情を知っていたようだし、注文を断れる訳がないだろう。


 お茶を出し終えると、キンバリーが頭を下げてお礼を言ってきた。


「ハイポーションのおかげで今も生きている。感謝しても仕切れない」

「あれはメグに持たせたものですから、気にしないでください」

「メグにハイポーションを持たせた事も含めて、その判断がなければ私は今ここに居なかった」


 確かにキンバリーの言う通りなのかもしれないが、ここまで感謝される事になるとは思っていなかったので戸惑う。

 キンバリーはハイポーションの代金だと言って、大量の金貨を魔法鞄から取り出した。

 積み上げられた金貨に焦る。

 以前作ったワイバーンの鎧と同じくらいの金貨が積み上がっており、ハイポーションは高いと言っても消耗品なので流石に多すぎる。そもそもメグに持たせたのでお金を取ろうと作ったものではない。

 キンバリーに代金は要らないことを伝えるが、メグから受け取った方がいいと嗜められる。

 侯爵家や王家から代金は出ている可能性が高いので、受け取らなければ失礼になるとメグが教えてくれた。

 アレックスはキンバリーに確認すると、意味深げに笑っただけで答えてはくれなかったが、メグの考えが正しそうな事は分かった。

 貴族や王家の面子を潰すわけにはいかないと、金貨を受け取る事にする。

 大量にある金貨をアレックスの魔法鞄へと仕舞っていく。


「それと何か困った事があれば力になるので言ってほしい」

「困った事ですか? のんびりと活動しているので困るほどのことは無いと思います」

「そうか。貴族関係でも力になりやすいと覚えておいてくれれば良い」

「はい」


 何か受け取るわけでも無いようだし、ジョシュ以外にも頼る先ができたと思えば良さそうだ。気楽に考えていると、メグから第一王女に会う事になるのだから、のんびりは難しいと思うと注意をされた。

 そんな話もあったな……。

 実際どうなっているのかと二人に尋ねると、キンバリーが申し訳なさそうに頭を下げて、第一王女についての話をしてくれた。

 聞いた限りはやはり第一王女と会う事になるのは決定のようで、今後アレックスの力を借りたいようだ。力を貸せるほどの実力があるか怪しいと思っているのだが、メグの友人だというし可能な限りは手伝いたくはある。

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