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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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第一王女の護衛−5 Side メグ

 ハイポーションに戸惑っていると、騎士たちが他に怪我人はいないかと尋ね始めます。

 ワイバーンが接近したことで大鳥が混乱した時に、軽傷を負った人が居たようで騎士たちが治療を始めました。

 ポーションで治る傷が大半のようです。


 メグが治療を眺めていると、キャサリンとキンバリーに呼ばれました。

 キャサリンが小声で話し始めます。


「メグ、助かりました。ですがあのポーションは何なのです?」

「キャサリン、分からないわ。彼氏のアレックスから貰ったものなのだけど……」

「貰い物なの? それとワイバーンの攻撃が当たらなかったのは何故?」

「どちらも危険だからって持たされたの。ワイバーンの攻撃がされる前に借りた魔道具を使ったけれど、魔道具でどうにかなると思えないわ」

「魔道具を見せて貰える?」


 腕輪を外してキャサリンに手渡す。

 キャサリンはじっくりと腕輪を確認を始めた。

 キンバリーからはポーションが見たいと言われたので最後の一つを渡す。

 腕輪を見ていたキャサリンが宝物庫で似たような物を見た事があると言い始めた。


「宝物庫って宝物庫?」

「はい。お城の宝物庫ですね。宝物庫で国宝だと言われて見せられた物に一部が似ている気がする」

「国宝!?」


 キャサリンは錬金術の知識はあまりないと断った後に、似ている部分が何の素材かは分からなかったようですが、重要な位置に嵌め込まれている素材が国宝と似ていると教えてくれました。

 メグは錬金術に詳しくないので、説明を聞いて顔が引き攣っていく自覚があります。

 何て物をアレックスは貸すの!?

 せめて一言何か言って欲しかったです……。

 そういえばゲラノスでマシュー閣下は腕輪のことを知っていそうでした。ですが腕輪についての話を聞くことが結局出来ませんでした……。

 マシュー閣下に聞いておかなかった事を今更後悔します。


 メグが後悔をしていると、キンバリーがハイポーションを返してきました。

 何か分かったかと尋ねると、普通の瓶と少し違う程度しか分からないと返されました。瓶はモリー工房で作った物なのでアレックスは関係ありません。

 効きが良すぎるハイポーションについては、王都に帰ってからアレックスに尋ねるしかなさそうです。

 国宝に似ていると言われた腕輪に比べれば、ハイポーションは効きが良すぎるだけなので、効果が随分と良かっただけだとメグは考えていましたが、キンバリーは違うようで直接お礼をしたいと言います。

 そういえばキンバリーはハイポーションで命が助かったのでした。

 腕輪が衝撃的すぎて忘れていました。


「今度アレックスを紹介するわ」

「お願いします」

「メグ、私もお礼をしたいのだけど」


 キャサリンまでお礼をしたいと言い始めて困ってしまいます。

 以前のキャサリンであれば外出を事前に準備すれば可能でしたが、今は会いに行くことすら難しい立場になってしまいました。

 メグはキンバリーと顔を合わせてどうするかと視線で会話します。

 流石に無理だと断ろうとすると、キャサリンが先に話しかけて来ます。


「メグ、姉妹のように育ったキンバリーは大事な存在なの。それに……」

「それに?」

「色々と手伝ってもらいたいの」


 どうやらアレックスは目をつけられてしまったようです。

 有能すぎると言うのも問題なのかもしれません。

 しかもアレックスは戦えます。どの程度強いのかは分かりませんが、魔導士の資格をとっている事や、ピュセーマが鬼雀である事を含めると誰かの影響下にいないのが奇跡です。

 ジョシュア様と友人だとは言っていましたが問題はないでしょう。

 帰ったらアレックスに話す必要がありそうです。


「それと私もメグの恋人に会って見たいの」

「キャサリン?」

「いいでしょ?」


 キャサリンは目を輝かして聞いてきました。

 アレックスに会いたいと言うのが本来の目的かもしれません。キャサリンは昔から利益と興味を上手に合わせて、どちらも得るのが得意です。

 キンバリーに視線を向けると目を逸らされます。

 どうやらキンバリーも同じ考えのようです。

 アレックスと会う事は問題ないと思いますが、色々と準備が必要なので時間が必要な事をキャサリンに確認すると、素直に頷きました。

 アレックスの方はメグが話すとして、王宮側はキンバリーに任せるしかないでしょう。

 視線を向けるとキンバリーが頷いています。


 治療をする間とはいえ、思わず長時間同じ場所に留まってしまった事に気づきました。

 キンバリーにどうするかと尋ねると、随分と悩んでからワイバーンが戻ってくる様子はないと、倒したワイバーンを確認しに行くと言います。

 飛ぶ前にアネモスをもう一度しっかりと確認しますが、怪我はないようです。

 キャサリンを守る陣形を取りながら再び空に飛び上がります。空に上がるとワイバーンが落ちた場所は分かりやすく、再び地上へと降りていきます。


 地上で見るとワイバーンは凄い状態になっています。

 空から落ちたので衝撃が凄かったのも有りそうですが散り散りになっています。

 ある程度回収したら急ぎこの場を離れる事になりました。

 今まで以上に緊張しながら次の街に飛び始めます。


 極度の緊張の中、何とか街にたどり着きます。

 領主の館に降り立つと、崩れ落ちるようにアネモスから降ります。

 騎士の一人が領主と思われる人物と話をすると、慌ただしく周囲が動き始めました。

 重傷を負ったキンバリーともう一人はすぐに館の中に連れて行かれます。

 キャサリンから最低でも一泊余分に泊まることが説明され、ゆっくりと休むようにと命令をしました。


「メグは申し訳ないけれど少し付き合って」

「分かったわ」


 キンバリーが抜けた穴を騎士とメグが埋めることで、キャサリンの護衛を務め切ります。


 結局貴族の館には二日多めに泊まりました。

 泊まっている間に重傷だった二人の検査と、周囲の偵察を領地を治めている貴族が行ってくれました。

 更に帰りの護衛を手伝うとキャサリンに提案してくれたようです。

 検査の結果何の問題もなかったキンバリーとキャサリンがどうするか相談しています。


「キンバリーどう思いますか?」

「キャサリン殿下、護衛を頼みましょう。ワイバーンの襲撃をまとめた報告を受けて不安が残ります」

「不安ですか?」

「ワイバーンは集団行動はしますが、一体が囮になるような狩の仕方は普通しないのです」

「そういえば上を注意していたら、急に下から襲いかかってきましたね」


 確かに二人の言う通りです。

 ワイバーンは飛ぶ上に頭が良いので厄介な魔物ですが、強いが故に一方的な狩をします。なので周りくどい攻撃の仕方は普通しません。

 どうやってそのような狩を学習したかが問題になります。

 偶然編み出したのなら良いですが、もし人が教えたのだとしたら非常に危険な存在です。

 人が魔物を操ることは可能です。

 とても難しい技術で失敗した場合に大変な事になるので、オルニス王国では基本禁止されています。


 オルニス王国の国民であれば普通は手を出そうと思う技術では有りません。百年前の戦争が魔物を操る技術が原因で起きた戦争だからです。

 魔物を操る術の簡易化を成功したと思った国が魔物を増やし、戦争をし始めた段階で魔物の暴走が始まりました。

 操る術の簡易化が実際は失敗していたのです。

 魔物を増やしていた国は消え、大量の魔物だけが残ってオルニス王国や周辺の国が力を合わせて魔物を討伐しました。

 魔物と戦った国は今でも魔物を操る術を嫌っています。

 ですが技術は消えた国から逃げ延びた人が残しました。


「まだ可能性ですが、多少オルニス王国を狙う国が絞れそうですね」

「はい」


 キャサリンとキンバリーがメグと同じ考えならば、戦争に参加しなかった国が怪しいと思い始めたようです。

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