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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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第一王女の護衛−4 Side メグ

 気づけば一ヶ月半が過ぎました。

 帰りは行きと違う経路を飛ぶようで、若干日程が変わるようです。

 同じ経路を使わないのは襲撃される事を警戒しているからでしょう。

 そこまで警戒をするのなら護衛を女性だけではなく、騎士団全体を大規模に動かせば良さそうではありますが、騎士団も別の街に陽動で動いたり、国境付近へ動いていると以前にキャサリンが教えてくれました。

 更に今回のゲラノス訪問は敵を炙り出す目的もあって、かなり変則的な動きをしており、危険は承知で護衛は少数なのだと話してくれました。

 なので帰りも気は抜けません。


 皆が相棒の大鳥と領主の館の前に集まると、行きと同様にキンバリーの掛け声で空に飛び上がります。

 マシュー閣下や多くの人に見送られて王都へ向かいます。

 帰りも行きと同様の陣形でキャサリンを守りながら飛行します。


 四日何事もなく移動していると、前方にいたギルド員が動きを変えました。

 大鳥が左右に揺れるような動きをして、ギルド員が合図を送ってきます。

 魔物だとの合図だと分かり、高度を下げるようにとキンバリーが合図をすると、全体が陣形を小さくしながら高度を下げ始めました。

 前方の上空を確認すると何かが飛んでいるのが分かります。

 飛び方や形的にワイバーンのようにも見えますが、まだ距離があるので大鳥では無さそうだと分かる程度しか観測できません。

 キャサリンが不安そうに何が起きたのかと聞いてきます。


「ワイバーンにも見えるけれど、まだ確実に何か分からないわ」

「ワイバーンですか」

「強敵だけどこの人数なら倒せない事はないわ」

「はい」


 キャサリンに言った通りワイバーンを倒せない事はありません。だけど被害なしで倒せる魔物ではないのも理解しています。

 どう考えても大変な戦いになります。

 上空のワイバーンを警戒しながら徐々に高度を下げていると、近くから叫び声が聞こえます。

 何が起きたのかと確認すると、ワイバーンが近くに居るではありませんか!

 上空にいるワイバーンから目線を外していなかったのに何故隣にワイバーンがいるの!?

 二体目のワイバーン!?


「何処から来たの!?」


 皆もワイバーンに気づいたのかキャサリンを守っている陣形が大きく乱れました。

 慌ててワイバーンとキャサリンの間に入り込みます。

 ワイバーンを近づけないように魔法で攻撃しながら、高度を下げるようにキャサリンに指示を出します。

 メグの魔法ではワイバーンに致命傷を与えることができず、牽制することしか出来ません。

 何とかして地上に降りようとしますが、ワイバーンに邪魔されて中々降りられないでいると、キャサリンのメグを呼ぶ叫び声が聞こえました。


「メグ!」


 何事かと振り返るとワイバーンが尻尾を振りかぶっているところでした。

 どう避けようとも間に合いそうにありません。

 ワイバーンの一番気を付ける武器は牙や足の爪ではなく、尻尾の攻撃だと随分前に教わったなと思い出しながら、その尻尾を見ていますが実感がありません。

 キャサリンのこの後の事や、アネモスもどう考えても攻撃が当たることになると申し訳なくなります。


 走馬灯のようにアレックスとの記憶を思い出します。

 マンティコアから助けられ、一緒に採取をして、付き合う事になったあの日や二人で過ごした日々の記憶が流れ、護衛に出る前に腕輪を渡された事を思い出します。

 もうアレックスに会えない事が悔しい。

 最後の足掻きとして腕輪を使ってみる事にします。

 腕を前に出してアレックスから聞いた使い方を思い出して腕輪の魔力を全て解放しました。

 ワイバーンの尻尾がメグに当たるかと思ったところで、腕輪の機能が発動したのが分かります。

 続けて起きる痛みを覚悟しますが、痛みすらありません。


「え?」


 キャサリンの戸惑った声が聞こえて、何故声が聞こえるのか、何故腕が無事なのか不思議に思っていると、ワイバーンが落ちていくのが視界に入りました。

 しかもワイバーンは真っ二つになっていた気がします。


「え? 私生きているの?」

「ええ。生きています」

「なんで?」

「尻尾がメグに当たったと思ったら、尻尾が消えましたよ?」

「消えた?」


 キャサリンから聞いても理解ができませんが、まだワイバーンが居る事を思い出して、慌てて探すとワイバーンが逃げて行くのが見えます。

 仲間が真っ二つにされれば当然逃げますか……。

 逃げているワイバーンは一体ではなく三体は見えたので、四体もの集団だったようです。

 生きているのが奇跡と言って良いでしょう。

 早くこの場を離れたいですが、一度降りて皆の怪我を確認した方が良さそうです。戦闘後の興奮した状態だと怪我の状態が分からない可能性があります。

 メグが指示をだして地上に降りると、まずはキャサリンの怪我を確認します。


「キャサリン、怪我はありませんか?」

「ええ。私は皆に守られていましたから」

「手足が動くか確認をしてください」

「分かったわ」


 血がついている様子もないですし、手足を動かしても問題なく動いているので怪我はなさそうです。

 キャサリンがワイバーンの攻撃を受けたのはメグの方だと心配してくるので、血がついていないか確認して貰って、手足が動くか確認して行きます。

 血も出ていないようですし、手足もちゃんと動きます。

 アネモスも確認しますが怪我は無さそうです。

 不思議ですが怪我一つありません。

 キャサリンと不思議だと話していると叫び声が聞こえます。

 キャサリンと顔を合わせて怪我人だろうと魔法鞄を手に取って、叫び声が聞こえた場所に向かうとキンバリーが倒れています!


「キンバリー!」


 今更ながらにキンバリーの指示が途中からなかった事に気づきました。

 キンバリーは意識はあるようですが、かろうじて生きていると言った状態で、すぐに治療を開始しなければ助かりそうにありません。

 近くにいた騎士に何故治療をしないのかと尋ねると、ハイポーションでも治すのが無理だと言います。


「そんな」

「今、最後の言葉を聞いているのです」


 キャサリンがキンバリーに縋り付いて泣き始めました。

 メグもキンバリーとは長い付き合いで、死んでしまうと考えたら目の前が真っ暗になって行きます。

 気づかないうちに手から魔法鞄が落ちます。

 落ちた魔法鞄を見て、中にハイポーションが入っている事を思い出します。手持ちにハイポーションがあるのに何もしないのは嫌だと感じました。

 魔法鞄からハイポーションを取り出すとキンバリーに飲ませようとします。


「キンバリー飲んでください」

「む……り……だ……」

「キンバリーお願いです! メグの差し出したポーションを飲んでください!」


 叫び声のようなキャサリンのお願いに、キンバリーは小さく「はい」と返事をします。

 メグがキンバリーにハイポーションを飲ませると劇的な効果を発揮しました。

 傷が治っていく様は見ていて怖いほどで、傷口が瞬く間に消えて無くなっていきます。

 静寂の中キンバリーが寝ていた状態から上半身を起き上がらせました。


「メグ、私に何を飲ませた?」

「ハイポーションです」

「いや、ハイポーションでもあの傷は治せない。それにこんなにすぐ動けない。何を飲ませた?」

「分からないです」


 アレックスは確かにハイポーションと言っていました。

 唖然としていると、もう一人重症の怪我人がいると言われて慌ててハイポーションを出して持っていきます。

 怪我人に飲ませると、キンバリー同様に瞬く間に傷が治って起き上がります。

 キンバリーや怪我人が乗っていた大鳥も重症だと同じようにハイポーションを飲ませると傷が回復しました。

 皆からそのポーションは何かと聞かれますが、ハイポーションだとしか答えられません。

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― 新着の感想 ―
[一言] メラゾーマではないメラだのポーション版だねww
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