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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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魔法鞄と鈴蘭のブローチ−4

メグに貸した魔道具を髪飾りから腕輪に変更。

 握手を求められたのには少々驚いたが、それだけだ。

 改めてブローチを付けて髪の毛の色を変えると、ハンクさんは黒髪は確かに難しそうだと言って頷いている。

 ブローチを外して、使った魔石の魔力を確認しておく。

 同じ人が使い続ける事を想定して作っているので、交代で使った場合に魔力量が問題ないか不安だった。

 魔石の魔力は問題ない量残っているので補充はしなくてよさそうだ。

 ブローチに付けている魔石は小さいのもあって、保有している魔力が少ない。魔法鞄に付けるような大きめの魔石であれば空気中の魔力を吸って回復するのだが、小さい魔石だと魔道具として稼働させると魔力が無くなってしまう。

 魔石は魔力を込めれば無限に使える訳ではなく、魔力を込め続ければいつかは割れてしまう。なので魔力が問題ない量あるのならば補充は基本しない。

 ブローチについている魔石で一日は持つように設計している事をハンクさんに説明する。


「毎日使う場合は魔石に魔力を込めてください」

「承知しました」

「魔力が無くなっても二日ほど休ませれば、魔力が回復すると思います」


 ブローチの手入れの方法を伝えれば受け渡しは完了だ。

 最終的に掛かった経費を考えると、予定通りに作ることができたので、金貨十枚で販売した。

 頭金として金貨一枚を受け取っていたので、残りの金貨九枚をハンクさんから受け取って支払いは完了した。


「良い買い物をしました」

「そう言って貰えると嬉しいです」

「ところで、気になっていたのですが裏の回路が綺麗ですね。裏にしておくのが勿体無いほどだ」

「ああ、私もそう思って、似たようなものが作れないかと今調べているところなんです」

「同じ物で作ってはいけないので?」

「それミスリルの破片を樹脂に混ぜているんです」

「それは高すぎて無理ですね。というか金貨十枚でミスリルを使ったものが買えたのですか」


 ミスリルの量が少ない事を伝えるが、それでもハンクさんから、ミスリルを使った魔道具は中々手に入るものではないと言われる。

 確かに普通はミスリルなどの高価なものは使わないで、魔物の一部を使うことが多い。

 実際ジョシュに渡した魔法鞄はミスリルを加えないで完成させている。

 大型の魔法鞄と違って、小物の場合は使える素材の量が減ってしまうので、魔道具として安定させるには相対的に高価な素材を使うことが多くなってしまう。

 それでも小物は使う量が多くないので、金額としてはそこまで高額にならない事が多い。

 今回もミスリルを使った量は少量なので、そこまでの金額にはなっていない。

 ミスリルの量が少ない事を伝えると、ハンクさんは納得した。


 ハンクさんにも同じような輝きで、ミスリルの代わりになりそうな物が無いかと尋ねて見た。

 ハンクさんはブローチの裏面を見ながら黙り込んだ。少しすると真珠かオパールに近いと言うので、今貝殻を錬金術で加工しているが成功しないと伝える。


「想像以上に難しそうですな」

「はい。真珠だと高いので貝殻でやっているんですが、今のところ上手くいってないんです」

「オパールも高いですから貝殻を使うのが良さそうですね」


 やはり他に方法が思いつかないので、今は貝殻を試していくしかなさそうだ。

 しかし貝を食べ続けるのは飽きたので、今後は貝殻を仕入れることを考えておこう。

 ハンクさんは完成したら是非見せてほしいと言うので、完成した時には見せに行くことを約束した。

 そろそろ店に戻ると言うハンクさんを店の前まで見送る。

 馬車に乗って帰って行ったハンクさんを見送ると、工房に戻って貝殻をどうにか出来ないか再び試し始める。


 結局ハンクさんにブローチを売ってから、一ヶ月近く貝殻を錬金術でどうにか出来ないか試していたが、ミスリルのような輝きにはならなかった。

 何故か螺鈿の輝きを持つ糸はできたが、糸を細かくして樹脂の中に入れても似たような輝きにはならなかった。

 糸を作ろうと思ったのはミスリルが糸だったので、貝殻と糸を合わせれば似たようなものができないかと作った。

 結果的に糸は失敗だが、綺麗なので別の何かに使えば良いだろう。


「布でも織れば綺麗そうだけど、今やりたい事ではないな」


 独り言を言いながら貝殻を弄る。

 貝を毎日食べなければいけない問題は、毎日買いに行った鮮魚店に顔を覚えられて、貝を毎日買う理由を尋ねられたときに貝殻が欲しいと伝えると、以降貝殻を無料で貰えるようになった。

 貝殻の問題は解決したが、正直貝殻で試せる方法が無くなってきた。

 次はどうするか迷っていると、店の鈴が鳴った音がする。

 「いらっしゃいませ」と声を出しながら店に入ると、そこに居たのはメグだった。


「メグ、おかえり」

「ただいま」

「無事で良かったよ」

「うん。腕輪とポーションのおかげで助かったわ」

「あの腕輪を使ったの?」


 腕輪は本当に保険として持って行って貰ったもので使うとは思っていなかった。

 腕輪を返してもらうと確かに魔石に込められた魔力がほとんど空っぽになっている。

 この魔力量だと、帰って来る間に魔力が回復したのだろう。

 この魔道具は保有する魔力量がとんでもない量なので、自然に回復させるには年単位の時間が必要になる。人が魔石に魔力を補充しても人の魔力が空になってしまう。

 この魔道具の為に空気中の魔力を集める専用の魔道具を作ってあり、専用の魔道具に一ヶ月ほど設置しておけば再び使えるようになる。

 メグに貸した魔道具はとても高い物なので、自室で魔力を補充させよう。


「アレックス、その魔道具って何で出来ているの?」

「秘密にして欲しいんだけど、これ魔石としてドラゴンの鱗を使っているんだ」

「ドラゴン?」

「そう」

「………」


 メグが固まってしまった。

 ドラゴンである事を伝えてしまったら絶対に持っていって貰えないと思った。

 だからと言って隠して貸した事はアレックスも後ろめたさはある。

 正直使う事なく帰って来ると思っていたので、空っぽになるほどの使い方をした理由を聞きたいが、その前に謝って説明する必要がありそうだ。

 メグが固まった状態から元に戻ると、何も言わないで貸すんじゃないと怒られる。

 当然の反応なので、メグに謝って心配だったと伝える。


「だとしても、その腕輪は国宝級の魔道具ですよ?」

「ドラゴンの魔道具は王都でも見ないの?」

「見ないというか、王家か高位の貴族しか持ってないと思います。少なくとも私はドラゴンの魔道具を見たことはありません」

「そうなのか」


 高い物だと言う自覚はあったが、そこまでの物だったとは思わなかった。

 ひとしきり謝った後に、メグからドラゴンの鱗を使う意味を聞かれたので、ドラゴンは鱗に魔力が貯まるのだと教えて、ドラゴンについて説明する。

 ドラゴンは広義的な意味では魔物ではあるが、人間と敵対するような関係ではない。人間の言葉も理解しているので、手順を踏めば友好的な関係を築ける。

 オルニス山にはドラゴンが住み着いており、その中の一頭とアレックスは仲良くなって、ドラゴンの鱗を貰えるような関係になったのだとメグに話す。


「ドラゴンと仲良く……」

「そう。アクセサリーを作って欲しいと頼まれて、作り続けていたら気に入られた」

「ドラゴンは光り物が好きって伝説は聞いたことはあるけれど、本当だったの?」

「他のドラゴンはそこまででもなかった気がする」


 アレックスのアクセサリー作りはドラゴンの注文によって腕が磨かれている。

 ドラゴンについて話し終わったところで、メグから次は事前に言うようにと怒られる。素直に謝って話す事を約束した。

 メグが納得したところで、護衛はどうだったかと、何故腕輪を使うことになったのか尋ねると、メグは依頼に出ていった最初の日から話し始めた。

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