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路地裏の錬金術師 〜魔境のような村から出てきた錬金術師〜  作者: Ruqu Shimosaka
二章 前編

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魔法鞄と鈴蘭のブローチ−2

 回路をコーティングする液体は錬金術で作り出した物を使う必要がある。

 なので次はコーティングのための液体を作る。

 コーティングには色をつける必要はないのだが、確認のために染料を混ぜて色をつけることが多い。

 今回はコボルトのモリー工房から青い塗料となるコバルトの粉末を買ってきた。

 コーティングの為の液体は、混合液、魔物の一部、乾燥すると硬化する樹脂の三つを錬金術を使って混ぜ合わせていく。

 混合液は精製水、クローバーなどの植物、植物油を混ぜた物を混合液と呼ぶ。錬金術でよく使われる物で、ポーションなどにも使われる物だ。

 魔物の一部はダンジョンの魔物を使う。

 回路を書くための液体を作った後に、青いコバルトの染料を入れて色を出した。

 コーティング用の液体が完成したところで、乾燥して固まってしまわないように、特殊な容器へと入れる。


 容器から液体を取り出して、一定量を注射器に詰める。

 注射器から液体を出しながら、レザーカービングで掘られた回路をなぞって行く。

 回路からはみ出しても修正はできるが、はみ出した部分の液体を完全に取るのは大変なので、慎重に作業を進めていく必要がある。

 根気のいる作業を淡々と続ける。

 二日で何とか完成させると、液体を完全に乾燥させる為に一日放置する。


 乾燥させている間に同時進行で小型の魔法鞄の制作に入る。

 小型の物はアレックスが使っている道具入れで、普及している物ではない。だが普段使いする関係でよく壊れる為、決まった回路を作っている。

 大型の魔法鞄と同じように回路を下書きして、レザーカービングで回路を掘り込んでいく。


 次の日は小型の鞄は休みで、一日放置して完全に乾燥した大型の魔法鞄を完成させる。

 最初に鞄を仮組をして、魔石をはめ込んで魔道具としてしっかり動作するかを確認する。

 物を入れたりしてしっかりと動作確認ができたところで、入れた物を全て取り出して、魔石を抜いて動作を止める。

 そこから仮組を解いて、本縫いをしていく。

 大型の鞄なので縫う量が多くて大変だが、慣れた形な事もあって、手早く完成させる。

 鞄の形に縫い上げた後は、普通の染料で鞄全体に色を付け、油を塗って余分な油分を取ったら、仕上げ剤を塗って乾かすだけだ。

 最後に魔石を取り付ければ魔法鞄は完成する。

 全ての作業が終わるまで七日掛かった。


 更に小型の魔法鞄を同じ要領で作業していく。

 最終的に作業は予定通りに二週間ほど掛かった。

 完成した魔法鞄をジョシュの元に持って行く事にする。魔導騎士は忙しいようなので王都にいるか分からないが、魔法省に行って王都に居るかどうか尋ねてみる事にする。

 完成した魔法鞄を持ち、ピュセーマに乗って魔法省に向かう。


 魔法省の建物に入ってから、ジョシュに会うための手段がないことに気づく。どうするかと迷っていると、前回案内をしてくれた受付の人がいることに気付いて、話しかけてみることにした。

 受付の人に事情を説明すると、アレックスの事を覚えていたようで、ジョシュに尋ねてみてくれることになる。感謝しつつ待っていると、ジョシュは魔法省に居たようで今から会えるとの事だった。

 受付の人が二階のジョシュが使用している執務室へと案内してくれるようだ。感謝を伝えて案内に従って二階へと上がる。

 ジョシュの執務室に着くと中にはいる。

 アレックスが中に入ると、ジョシュが椅子から立ち上がって出迎えてくれた。


「アレックス、魔法鞄を態々持って来てくれたのか?」

「注文から時間が掛かってしまいましたから」

「いや、二ヶ月ほどしか掛かっていないから、既製品でなければ早い方だぞ?」

「そうなんですか?」

「魔道具の注文は半年から一年待ちになる事が多いな」


 素材の問題だったり、注文がいくつも入っていれば製作できる期間は伸びて行くが、アレックスは今までそこまで注文を待って貰った事がない。

 定められている活動期間があるので、王都には錬金術師が余るほどいると思っていたが、それ以上に魔道具の販売される数が多いのかもしれない。


 部屋に案内してくれた受付の人が部屋を出ようとしたので、改めてお礼をする。ジョシュも同じようにお礼を言っている。

 ジョシュからソファーに座るように言われたので座ると、ジョシュが飲み物を出してくれたので一口飲む。

 早速作った魔法鞄を机の上に置いて物を確認してもらう事にする。

 大型の魔法鞄は一般的な回路を使っているので、性能は普通の物より強化されているが使い方は基本的に同じだ。

 アレックスの物と違って持ち上げる必要があるが、鞄の開き口以上の物が入るようになっている。もちろん大量の物が入るようになってもいて、強化されているので通常の倍以上物が入るようになった。

 小型の魔法鞄に関しては、アレックスが設計した回路なので少し特殊な性能になっている。

 道具入れとして設計したので、鞄の中が仕切られていて、どの仕切りの中に物が入っているか覚えれば取り出しやすい設計になっている。

 ジョシュに魔法鞄の説明をしていくと気に入ってくれたようだ。


「大型の魔法鞄の容量は凄まじいな」

「ダンジョンの魔物から取った革だから性能がかなり良いね。回路を掘っただけでは勿体無いから回路のコーティングまでしっかりしておいた」

「それで回路が青いのか」

「コバルトで色を付けたから青になってる」

「なるほど。それと小型の魔法鞄も使いやすそうだ」


 ジョシュは魔法鞄を気に入ってくれたようだ。

 魔法鞄の手入れの方法を伝えた後は、小型の魔法鞄の使い方を実践して教える。

 ジョシュはすぐにコツを掴んで魔法鞄を使いこなし始めた。


 魔法鞄の話が終わったところで帰ろうと思ったが、そういえば今日魔法省に来た時にジョシュに会うのに困った事を思い出す。

 今後会うにはどうすれば良いかと尋ねると、魔導士の資格を出せば話は通るようだ。だが受付に断られる可能性もなくはないと、ジョシュが紙に何か書いて渡してくる。

 紙を見るとジョシュの名前とアレックスの身分を保証する事が書かれており、更にジョシュに話を通すようにと書かれていた。


「それがあれば話は通るだろう」

「ありがとう。助かるよ」

「任務で居ない場合もあるから不在だったら諦めてくれ」

「分かった」


 ジョシュから貰った紙を魔法鞄の中にしまう。

 ハンクさんから注文されている魔道具もあるので、今度こそ家に帰る事にする。帰る事を伝えると、ジョシュから魔法鞄についてお礼を言われる。

 魔法省を出るとピュセーマに乗って空に飛び立つ。


 家に戻ってくると次の作業に早速取り掛かる。

 アクセサリーなどの小物を魔道具にする場合も、魔法鞄と同じように回路を書き込むのだが、当然物が小さくなるため複雑な回路を組むのが難しい。その上回路を組むことで見た目が損なわないようにしないといけない。

 アレックスが自作しているアクセサリーは、回路を組む場所を事前に準備しているので、市販されているアクセサリーを持ち込まれるよりは作業が簡単だ。

 今回はハンクさんが買った鈴蘭を模ったブローチには、土台になっている表から見えない場所に回路を作るための平らな部分が用意されている。

 まずはブローチの中に収まるように回路を作って行く。

 当然回路によっては書き込む隙間がない場合がある。魔法鞄などを一定以上小型化できないのは回路が大きすぎるからだ。

 今回の髪の色を変える魔道具はそこまで大きい回路ではないので、小さなブローチにも書き込む事ができる。

 ブローチに収まる回路ができたところで、回路をブローチに書き込んで彫金をする事で金属を掘っていく。

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